明日の株式相場に向けて=舞い踊る中小型材料株
きょう(17日)の東京株式市場は、日経平均株価が6円安の2万9914円と7日ぶりに小反落。FOMCと日銀の金融政策決定会合を目前にして、狭いゾーンでの往来を繰り返し、結局ほぼ前日比横ばい圏で着地した。売買代金も2兆5000億円台と最近にしては少な目で、この日米のビッグイベントに敬意を表するがごとく様子見ムードの地合いであったかに見える。しかし、それは指数連動型の大型株に限っての解釈であり、中小型株の物色意欲は以前にも増して旺盛であった。値上がり銘柄数は1400を超え、値下がり銘柄数の2倍以上となった。また、マザーズ指数などをみても、ひと頃の崩れ足から完全に立ち直り25日移動平均線とのマイナスカイ離を綺麗に埋めている。
日米の中銀会合に波乱要素なしという見方が強い。実際は蓋を開けてみなければ分からないが、箱の中から出てくるのは日米合わせて2羽の白いハトであることをマーケットは見切っている。そして、仮に予想が外れて、株価が波乱展開となったとしてもそこを拾いたいと考えている投資家が多い。「むしろ、新年度入りを前に最後の買い場とばかり、プチ波乱を望んでいる買い方は多い」(ネット証券ストラテジスト)という。まさに、メディアを交えて狐とタヌキの化かし合いというところか。
前週後半から始まった海運ビッグウェーブ相場も大手海運から2番手、3番手のポジションに位置する銘柄に資金が下りてきている感触。タンカーやばら積み船の明治海運<9115>や港湾運送の大運<9363>などが雄叫びを上げる相場となったが、これが倉庫株にも波及し、きょうは杉村倉庫<9307>がストップ高に買われた。ホットマネーが海から陸へと上がってきた趣きだが、更に走り出すとすれば陸運株周辺にも及ぶ可能性がある。
今は、海運株の延長線上にある倉庫株が動意含みだ。何といっても純資産からみた株価は超割安圏に放置されている。1倍を大きく下回る低PBR銘柄の宝庫である。見方によっては企業として“代謝が機能していない”という厳しい評価も下されるところだが、ある意味過熱気味に買われたグロース株のクールダウン現象が起きている今の地合いでは、買いやすさがあるのも事実だ。例えばPBR0.5倍ということであれば、株価は2倍に買われてやっと会社の解散価値と同等ということになる。安田倉庫<9324>はPBR0.4倍、株式需給面も買い残が枯れ切った状態で良好、直近信用倍率は0.25倍だ。このほか、トランスシティ<9360>、東陽倉庫<9306>もPBRは0.6倍台で、黒字の有配企業である以上、株価が見直される“資格”を十分に持ち合わせている。
直近紹介した銘柄ではインプレス<9479>が強い動き。株価は依然として200円台で、電子コミック人気はスマホ全盛時代が続くなか新型コロナへの恐怖が取り除かれても廃れることはない。また、同じ低位株の範疇では非全農系の飼料会社日和産業<2055>は目立たないが、着実な歩みで新値街道を進んでおり引き続き注目しておきたい。同社株も有配企業にしてPBRは0.3倍台で水準訂正途上であることをうかがわせる。
これ以外では関通<9326>が2500円ラインを軸としたもみ合いが煮詰まっておりマークしておきたい。在宅で物品を購入する巣ごもり消費需要は、コスト面や手軽さを考慮すればアフターコロナでも消滅することはない。同社はeコマース中心に物流作業の代行・支援ビジネスを展開しており、伸び率は鈍化しても成長トレンドが続くとみられる。楽天<4755>が日本郵政<6178>との資本・業務提携でサプライズを与えたが、関通は既にこの楽天と資本・業務提携している。
少々気が早いがアフターコロナで活気づくスポットはどこかと考えた場合、それは3密回避の鉄則に反する場所。真っ先に浮かぶのは映画館だ。それを踏まえたうえで映像制作大手のIMAGICA GROUP<6879>のチャートを見ると、コロナ収束後のバラ色の景色を先取りするかのような値運びをみせており、ここからどういうトレンドを描くのか興味をそそられる。
あすのスケジュールでは、日銀の金融政策決定会合が19日までの日程で開催されるほか、2月の首都圏・近畿圏のマンション販売が発表される。また、東証マザーズ市場にi‐plug<4177>が新規上場する。海外では1月のユーロ圏貿易収支、3月の米フィラデルフィア連銀製造業景況指数、2月の米景気先行指数などが発表される。(銀)
最終更新日:2021年03月17日 21時22分