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ボラはあるけど、高リターン追求の集中投資で「飛ばない」技

特集
2021年4月2日 10時00分

すご腕投資家に聞く「銘柄選び」の技 ともさんの場合~最終回

登場する銘柄

三菱地所<8802>

文・イラスト/福島由恵(ライター)、編集・構成/真弓重孝(株探編集部)

ともさん(ハンドルネーム・30代・男性)のプロフィール:
ともさん2004年から株式投資を本格スタートさせ、以降、資産半減などの大規模なドローダウンを経ながらも、その都度その損失をはるかに上回る復活劇を展開し、現在は5億円まで運用資産を膨らませたすご腕。億り人は13年に達成している。学生の頃から投資の知識を積み重ね、「趣味と実益を兼ねる」という発想で投資のスキルアップにつながる就職先に勤務し徐々に投資の腕を磨いた後、14年に専業投資家に転身する。投資スタイルは不動産関連、REIT(不動産投資信託)中心の投資から、最近は成長株投資にシフトしつつある。オプション取引の「プットの買い」、日経平均株価の売り戦略を交えて、資金管理に気を付けながら自身が納得した有望銘柄に集中投資するやり方でマイペースに資産拡大を目指す。仮想通貨への投資も交えて攻めている。

第1回目「痛たぁ~、コロナ暴落で資産半減、そこから3倍返しの5億円を勝ち取ったワケ」を読む

第2回目「キラキラBASE<4477>」も興味なし、3倍返しの基本は『お祭りスルー』」を読む

第3回目「ボロ不動産&REITの逆張りで、大ヤラレ後に億り人、昨年暴落時も見逃さず」を読む

第4回目「再び3月に痛たぁ~!なんと爆騰で注目のビットコインをだまし取られることに」を読む

「新たなチャレンジをするために取材を引き受けます」

今回登場のともさん(ハンドルネーム)は、そのゆったりとした話しぶりや仕草から、第一印象では「バリバリのすご腕」オーラをまったく感じなかった。

そんな"ゆるキャラ"に見えながら、取材を進めると1000万円を5億円までに資産を膨らます大物であることが判明する。見た目ではわからない「すご腕ぶり」の原動力はどこにあるのか。

取材を振り返って至った結論は、「自分の知らない世界、未知の分野に対する好奇心がとても旺盛。それが、これまでの成功の土台となっている」ということ。

我々ホモ・サピエンスは、雑食で見知らぬ物でも口にする勇気を持ち、また大海原に手作りの船で乗り出す冒険心に溢れていたからこそ、今の繁栄を手にしてきた。

ただ冒険は、常に危険と隣り合わせだ。前回紹介したように、ともさんがビットコインを騙し取られたのも、冒険に出た代償といえる。

だが致命傷に至るような傷を負わなければ、挑戦したご褒美を手にする権利は失われない。最終回の今回は、好奇心・探究心を最終的にリターンにする「ともさん流・資金管理の技」を中心に見ていこう。

トレード成功を支えた3つの心掛け

多くの投資家が憧れる「億り人」を達成し実績を出すには、投資に関する知識や、銘柄分析、相場を読む力を向上させるなど、実務的なスキルアップは欠かせない。

だがこれと同時に、メンタルの持ちようやリスク管理の考え方など、実務的なトレードを支える土台の部分をしっかり育て、健やかに維持していくことも軽視できない要素となる。

そうした観点から、ともさんの成功を支える土台の特徴的なものとして、

1. いかなる時も熱くならない、ガツガツしない

2. 自分自身をよく知り、自分の能力に適した行動を取る

3. 日常の出来事から「学ぶ気持ち」を忘れない

―― の主たる3つの要素がうまくワークしたと見ている。

レバなしのガツガツしない姿勢が成功のカギ

1の「熱くならない」「ガツガツしない」という項目は、トレードにおける具体的行動として、まず「レバレッジをかけない」という部分で機能している。

これまでの記事で紹介したように、ともさんは今に至る投資歴の中で、3度大ヤラレを体験した人だ。そのうち2回は資産を半減させるほどのこっぴどいものだったが、市場から退場するという最悪の事態は免れた。それは、常にレバレッジなしの安全運転の状態で向かっていたからだ。

「相場が燃える(ヤラレる)時はどの銘柄でも燃える。常に2~3割ヤラレるのは、覚悟しながらついていってます」と、話すともさん。いつでも「○○ショック」と名付けられるほどの大幅調整がやってくることを覚悟の上、身の丈以上にポジションを膨らませることはしない。

多くても10銘柄、そして時には主力2~3銘柄のみに絞り、保有資金の3分の1程度を投入することもあるという集中投資型となれば、一見、リスキーな投資をしているようにも見える。

だが、その根底の部分では、きちんとセーフティネットを張ることを忘れない。レバレッジをかけさえしなければ、相場の中で「死亡」することは、ほぼない。ここだけは死守するという考え方だ。

例えば、日経平均株価が3万円から1万5000円に落ちるような50%の大暴落が来た場合、2倍のレバレッジを掛けている人ならば、損失のダメージは100%に。

つまりは、「ここで退場」となってしまう。だが、レバレッジさえかけていなければ、損失額は50%に膨らみはしても、一方で次に戦う種銭は残る。この違いはとてつもなく大きい。

生き残って投資の種銭を残した状態ならば、いつでもリベンジして、ヤラレる前以上に資産を膨らませることができる。そう信じて、実際にその都度実現してきたともさんだ。

「飛びさえしなければ」いつでも挽回できる

さすがに、投資を始めた頃は不動産株への投資などでレバを効かせたイケイケ投資を続けたこともあった。だが、たとえ大ヤラレしても相場に残ることの大切さを痛感する。

以降は、集中投資という、相場の教科書的にはリスキーとされる投資をしながらも、レバなしの安全運転を続けることに。これによって、その後に大ヤラレしても、しのぐことができた。

2回目の記事では、特に不動産株やREIT(不動産投資信託)は、その会社の保有資産の価値が投資家からも観測しやすい点に注目し、割安のバーゲンセール状態まで売り込まれたところを狙って投資した成功例を紹介した。

だが、この成功例のウラを返せば、いくら価値あるいい物件を持っているとわかっている銘柄でさえも、相場全体が冷え込んだ時は容赦なくたたき売られる現実を見せつけられたことにもなる。

特にともさんは、リーマンショックや東日本大震災の後の相場下落時には、三菱地所<8802>の株価の下落っぷりを眺め、その怖さをひしひしと感じていたという。

三菱地所と言えば、都心の高級地に土地や建物を持ち、不動産銘柄では優等生的な存在だ。そんな銘柄がリーマンショックで1000円以下まで投げ売られるのを見て、「こんなにいい銘柄でもここまでヤラレるのか」と、需給が壊れた時に株式相場がオーバーランする現実、そしてその怖さや理不尽さを、全身を通して刻み込まれる感覚だった。

以降、よほどのことがない限りは、レバレッジをかけた取引は控えるよう堅く心掛けるようになった。

■三菱地所<8802>の月足チャート(2007年12月~16年1月)

【タイトル】

注:出来高・売買代金の棒グラフの色は当該株価が前期間の株価に比べプラスの時は「赤」、マイナスは「青」、同値は「グレー」

※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。

次ページ ともさん流、レバなし状態の応用とは?

 

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