明日の株式相場に向けて=半導体周辺の株価3ケタ銘柄に照準
週明け5日の東京株式市場は、日経平均株価が235円高の3万89円と3日続伸、3月18日以来となる3万円大台を回復した。きょうの日経平均の高値は寄り後早々につけた3万195円だったが、この時点で前週後半から3営業日でほぼ1000円水準を切り上げたことになる。東証1部の騰落レシオは大引け段階で128%となった。前週末より騰落レシオは若干下がったが過熱領域には違いない。日経平均は“彼岸底”から目の覚めるような切り返しをみせ、直近5日・25日移動平均線のゴールデンクロスも示現したが、3月以降は短期間でゴールデンクロスとデッドクロスを繰り返すなど、やや乱気流に揉まれている感もある。
米国では景気回復がいよいよ本格化してきた気配がある。注目された3月の米雇用統計は非農業部門の雇用者数が前月比91万6000人増と事前コンセンサスの67万5000人増を24万人も上回った。ワクチンの普及加速でアフターコロナの景色が見えてきた。アルケゴス・キャピタル絡みの損失も一時懸念されたが、これも吸収してまたもや空売りが肥やしになってしまった印象を受ける。それを示唆するのが米VIX指数で、前週1日時点で17ポイント台前半まで低下、20年2月下旬以来の低水準となるなど足もとは楽観ムードが強い。しかし、こういう時に意外と上昇相場の足場が崩れやすいというのも過去に何度か経験してきた。
昨年は結果的に「セル・イン・メイ」ではなく「バイ・イン・メイ」だったが、今年はどうか。日経平均でいえば3万円台乗せでいったんはヤレヤレの売りも出やすいところ。株価のポジション的にはゴールデンウィーク前に持ち高を軽くしておきたいというニーズが潜在していることは確かで、今回は格言が生きる可能性もある。外部環境面から弱気に見る必要はないが、やや慎重に構えておきたい。
個別では、きょうは値がさ株がインデックス的に買われたが、ここから全体相場の上値が重くなることを前提に、引き続き出遅れている中低位株を軸に考えたい。きょうは「こども庁」関連株が乱舞したが、深追いはしにくい。拾いやすいのはやはり裾野の広い半導体周辺となる。例えばバルブメーカー首位で半導体関連でありながら、脱炭素のカギを握る水素関連としての側面も持つキッツ<6498>。600円台後半のもみ合いは、0.8倍台のPBRを考慮しても買いに分がありそうだ。また、イソライト工業<5358>も同じく600円台後半に位置しており強気に対処してみたい。イソライトはセラミックファイバー大手で、半導体用工業炉向けに高水準の需要獲得が見込まれるほか、自動車向けでも実績が高く、22年3月期はトップライン、利益ともにV字回復が濃厚。前期最終2割減益(推定)ながらそれでもPERは10倍台だ。
更に株価500円台半ばの旭ダイヤモンド工業<6140>にも着目。ダイヤモンド工具のトップメーカーで、さまざまな産業からの需要があり景気敏感株としての側面を持つ。今後は半導体向けが期待されるほか、車載用の電子部品の復活も収益回復を後押しする可能性がある。化学株では樹脂加工大手のタキロンシーアイ<4215>が目先調整一巡から出直りムードにある。半導体生産ライン向け工業用プレートを手掛けており、タキロンCIもまた同関連の出遅れ銘柄として見直される素地がある。
ファブレス半導体の草分けで特定用途向け製品を販売するザインエレクトロニクス<6769>は700円台後半だが、古巣の1000円大台乗せを目標とする展開が予想される。自社ブランドのLSI開発を武器に、人工知能(AI)や電気自動車(EV)といった次世代市場での存在感が強みだ。このほか独立系半導体商社でFPGA関連のPALTEK<7587>の500円台前半も魅力がある。FPGAとは、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイの頭文字をとったもので、搭載した集積回路の設定を後から自由に変えることができる点を特長としており、これを取り扱う同社は同関連のキーカンパニーとしてIoT全盛時代に頭角を現しそうだ。
あすのスケジュールでは、2月の毎月勤労統計、2月の家計調査など。また、ジャスダック市場にセルム<7367>が新規上場する。海外では3月の中国非製造業PMI(財新)、2月のユーロ圏失業率のほか、IMF世界経済見通しに注目度が高い。(銀)