“緊急事態”再び、「アクリル板・CO2センサー」関連スクランブル発進へ <株探トップ特集>
―飲食店などで設置の動き広がる、自治体による補助金制度も普及の後押しに―
新型コロナウイルスの感染者数増加に歯止めがかからない状況が続いている。感染が急拡大している大阪府は20日に、緊急事態宣言の発令を政府に要請することを決めた。政府は大阪に加えて東京都、兵庫県を対象に宣言を発令する方針にあることが伝わっているが、今後更に京都府など近隣の府県に対象範囲が広がる可能性もある。「まん延防止等重点措置」の対象地域も拡大の一途で、20日からは新たに神奈川、埼玉、千葉、愛知の4県で適用が始まった。こうしたなか、対象地域の飲食店は再び時短営業を行うことになるが、加えてこれまで講じてきた感染防止対策を改めて徹底させる動きが出ている。自治体は感染対策にかかる費用に補助金を出すなど、こうした動きを後押しする方針で、これを受けてアクリル板やCO2センサーといった感染対策製品の需要が高まっている。
●設置率はアクリル板6割、CO2センサーは半分
大阪府が5日から実施している大阪市内の飲食店に対する見回り調査(18日時点、調査店舗数7302店)によると、消毒液の設置や定期的な換気の実施はともに9割以上、マスク会食も9割近い店舗で行われていたという。一方、アクリル板の設置は全体の6割強、CO2センサーについては半分程度にとどまった。府は感染対策の更なる徹底を図るべく、飲食店などに対し時短営業や利用者へのマスク会食周知などとともに、アクリル板とCO2センサーの設置を求めている。また、そうした取り組みを支援するため、10万円を上限に補助金を出す方針も示されている。
他の自治体でもこうした補助制度が設けられており、東京都では中小企業などに向けた感染症対策助成事業を行っている。同事業に関しては13日に助成内容の拡充が公表されており、店舗にコロナ対策リーダーを配置している飲食店であれば、アクリル板やCO2センサー、消毒液の購入費の5分の4が助成されるという。ここにきて、大阪府を中心に新型コロナの感染「第4波」が鮮明となり、緊急事態宣言の再発令もいよいよ現実のものとなってきた。従来の感染対策を一段と強化する動きは今後も強まっていくとみられ、関連銘柄も注目を集めることになりそうだ。
●大阪府がアクリル板などの設置に補助と伝わり関連株に物色
大阪府がアクリル板などの設置に補助金を出す方針が伝わった8日の場中、株価を急動意させ脚光を浴びたのが印刷会社のウイルコホールディングス <7831> [東証2]だ。同社は、子会社が運営する通販サイトで各種感染対策製品を取り扱っており、16日には新たにCO2センサーの販売も開始した。足もと業績は、第1四半期(20年11月-21年1月)の営業利益が8000万円(前年同期1億5600万円の赤字)と黒字で着地。21年10月期業績予想は、5期ぶりの営業黒字を見込んでいる。
ウイルコHDを皮切りに、マーケットでは関連銘柄を物色する流れが波及した。トナーカートリッジの再生販売を主力とするケイティケイ <3035> [JQ]もその一つで、ここ注目度が上昇している。同社は主力事業のほかに、幅広い顧客基盤を生かして 衛生商品やIT機器の販売を展開している。同社が取り扱う衛生商品は、消毒液や飛沫防止パネル、顔認証機能付き体温計、空気清浄機など豊富な品揃えで、こうした製品について会社側では「ニーズは高まっている」(経営企画部)と話す。同社は3月29日に21年8月期業績予想の上方修正を発表、営業利益を2億6900万円から3億3000万円(前期比4.1%増)に増額し、過去最高益を更新する見通しとなった。リサイクルトナーの出荷が堅調なことに加え、感染対策製品やテレワーク向けITソリューション製品などの販売が拡大した。
また、オフィス家具中堅のくろがね工作所 <7997> [東証2]は昨年7月からアクリル製の「飛沫感染防止対策スクリーン」、12月からはパーティションタイプの空気清浄機の販売を始めた。金属加工メーカーの日創プロニティ <3440> [東証2]は、高さの調節が可能な「クリアパーテーション」を手掛けている。小型株以外では、主な銘柄としてコクヨ <7984> 、オカムラ <7994> 、イトーキ <7972> をはじめ、オリバー <7959> やナカバヤシ <7987> 、アキレス <5142> のほか、透明ビニールカーテンを手掛けるウェーブロックホールディングス <7940> などをマークしておきたい。
●素材では藤倉化成に注目
アクリル板の需要拡大は当然ながら素材メーカーにも追い風となり、三菱ケミカルホールディングス <4188> やAGC <5201> 、日本触媒 <4114> 、東亞合成 <4045> などが関連銘柄として挙げられる。そのなか、 アクリル樹脂派生製品が主力の藤倉化成 <4620> に注目したい。同社は2月、21年3月期業績予想の上方修正を発表し、営業利益を1億2000万円から12億円(前の期比31.4%減)へ大幅増額した。あわせて発表した第3四半期累計(20年4-12月)決算は、売上高353億8200万円(前年同期比14.3%減)、営業利益7億8000万円(同51.7%減)だった。パソコンや車載向け電子材料が伸びたほか、アクリル板やフェイスガード向けアクリル樹脂の原材料・加工品の需要が堅調に推移したことが業績に寄与する。
●CO2センサーで新コスモス、オーウエルなど
新コスモス電機 <6824> [JQ]は家庭用ガス警報器や火災警報器を手掛けており、独自のガス探知技術に強みを持つ。同社は昨年11月、ソフトバンク <9434> 子会社のエンコアードジャパンが提供する計測器を活用した3密ソリューション「三密おしらせシステム 換気予報」の販売を開始した。その場のCO2濃度やスマートフォン利用者数を測定し、換気状況や混雑状況をスマホなどに表示することができるという。14日には、同製品の販売台数が1000台を突破したことを発表している。同社では、新たな目標として今期中に合計約3000台の販売を目指す構えで、飲食店を中心に学校、オフィス、病院、介護施設などに幅広く訴求していくという。
産業用塗料販売の大手であるオーウエル <7670> [東証2]は、グループ会社のユニ電子がCO2センサーの提供を行っている。同製品は、測定したCO2濃度を数値や色で可視化し、専用のスマホアプリから確認することができるというもの。同社の21年3月期業績予想は、投資有価証券売却益を計上する見込みとなったことを考慮し、2月に最終利益のみを4000万円から3億円(前の期比42.4%減)へ上方修正した。売上高は545億円(同15.5%減)、営業損益は8000万円の赤字(前の期7億3600万円の黒字)の見通しが据え置かれている。
システム開発会社のアステリア <3853> は昨年7月に、「密」状態の見える化を実現するIoTソリューション「CO2濃度 可視化・通知統合システム」が愛媛県の病院に採用されたと発表した。同ソリューションは、同社のAI搭載IoTシステム「Gravio(グラヴィオ)」とCO2センサーを活用したもの。同社は3密回避に向けたサービスを複数手掛けており、グラヴィオを用いた「AIカメラによる3密回避システム」やブロックチェーン技術を活用した「3密回避Webアプリ」などがある。
そのほか、NECネッツエスアイ <1973> は13日、CO2センサー内蔵のIoTデバイスを用いた3密検知ソリューションの提供開始を発表した。ノリタケカンパニーリミテド <5331> は、子会社のノリタケ伊勢電子がCO2センサーとデジタルサイネージを組み合わせたシステムを販売している。また、3密状況の可視化ソリューションを手掛けるオプテックスグループ <6914> 、CO2・温湿度センサーを利用した密集空間の診断サービスを提供するアイネット <9600> 、「密ですシステム構築用センサーパッケージ」を取り扱うぷらっとホーム <6836> [東証2]のほか、自社ECサイトでCO2センサーなど感染対策製品の販売を行うトランザクション <7818> などが注目されそうだ。
株探ニュース