米国株式市場見通し:景気循環株が相場の上昇を牽引
経済活動の再開に連れて景気循環株が引き続き相場の上昇をけん引しそうだ。金融のゴールドマンサックスが国内の従業員を6月から事務所に復帰させる計画との報道や、主要な州で、パンデミック対処で設定された規制のほぼすべてが今月中に解消される計画であることは、労働市場や景気の回復にさらに拍車をかけそうだ。アトランタ連銀は4-6月期国内総生産(GDP)で13.4%成長を予想している。航空会社、鉄道、運輸会社の一部で構成されているダウ運輸株20種平均が高値を更新する限り、ダウ平均株価も上値追いが期待できそうだ。
経済指標の改善や物価上昇が予想される中、FRBは4月のFOMCで大規模緩和の据え置きを決定。ワクチンの広範な普及や大規模な支援策が奏功したため経済やインフレの判断を引き上げたものの、依然不透明性が高く、目標としている最大雇用や2%での持続的な物価安定の達成には「程遠い」と慎重だ。FRBは金融緩和策縮小の意向を示さず、当面大規模緩和を維持すると見られ、今後も株式相場の支援材料となりそうだ。また、5月は年間の高値を更新する傾向にある。このため、同時に利益確定の売りも予想される。FRBは金融安定報告を発表し、アルケゴス問題で露呈したノンバンクのリスクを警告。過去の基準に基づけば、一部の資産価格は高水準にあるとも指摘している。潜在的な資産価格の著しい下落の可能性も警告しており、超低金利下における過剰な投機の動きに注意を促した。しかし、長期投資への影響は限定的となりそうだ。
経済指標では、3月JOLT求人件数(11日)、4月消費者物価指数(CPI)(12日)、4月生産者物価指数(PPI)、新規失業保険申請件数(13日)、4月小売売上高、4月輸入物価指数、4月鉱工業生産、設備稼働率、3月企業在庫、5月ミシガン大学消費者信頼感指数(14日)、などが予定されている。パンデミックの影響が根強く供給と需要の混乱からインフレは短期的に上昇が予想されている。特に、FRBがインフレ指標として注視している変動の激しい食品や燃料を除いたコアのCPIは前年比で2%を上回る見通し。また、経済の7割を消費が占めるため小売売上高にも注目だ。3月分は経済対策の一環の国民への直接資金供給が奏功し大きく伸びたが、4月は伸びが鈍化する見込み。
企業決算では、ホテルチェーンのマリオット、肉食品メーカー、タイソンフーズ、バイオのノババックス、化粧品メーカーのコティ、歯科矯正サービスを供給するスマイルダイレクト(10日)、ソフトウェア開発のパランティア、スポーツ中継やニュースなどをライブ配信するフボTV、オンライン保険会社のレモネード(11日)、旅行予約サイトを運営するエアビーアンドビー、エンターティンメントのウォルトディズニー、暗号資産売買のプラットフォームを運営するコインベース、料理宅配サービスを手掛けるドアダッシュ(13日)、などが予定されている。
コインベースやドアダッシュなど上場間もない企業の決算に注目だ。また、エンターティンメント、ホテル、旅行関連は、経済活動の再開で、業績回復が見込める。見通しにも注目したい。経済回復に伴い需要が増加する一方、パンデミックにより半導体不足、部品や素材の調達がままならず、多くの企業が見通しを引き下げる傾向にある。スマイルダイレクトは、最近のハッキングが業績に響く可能性を警告した。
(Horiko Capital Management LLC)
《FA》