金は長期金利の落ち着きで堅調、経済活動再開の行方も確認 <コモディティ特集>

特集
2021年5月12日 13時30分

の現物相場は、予想以下の米経済指標などを背景に米国債の利回りが低下したことやドル安が支援要因となって急伸し、2月11日以来の高値1844.90ドルをつけた。

4月の米ISM製造業景気指数は60.7(前月64.7)と原材料の供給不足などを受けて予想外に低下した。また、4月の米雇用統計で非農業部門雇用者数は前月比26万6000人増と事前予想の97万8000人増を大幅に下回った。労働力不足が背景にあり、失業手当の支給が終了する9月まで緩やかな雇用拡大ペースが続くとの見方もある。第1四半期の米国内総生産(GDP)速報値が前期比6.4%増加し、2003年第3四半期以降で2番目の高成長となり、景気回復期待が強いが、米経済指標が事前予想を下回り、経済の回復が遅れるとの懸念が金の支援要因になった。

金ETF(上場投信)に投資資金が戻っており、引き続き買われるようなら堅調に推移するとみられる。また、テクニカル面では中長期の節目となる200日移動平均線(11日1849.47ドル)を突破できるかどうかが焦点である。

ただ、欧米で新型コロナウイルスのワクチン接種が進み、経済活動再開が見込まれている。ニューヨーク市は、7月1日にニューヨーク市の経済活動を「全面再開」することを計画している。また、ジョンソン英首相は10日、イングランドで感染拡大抑制策の緩和を次の段階に進める方針を発表した。欧州諸国も制限措置を徐々に解除する見通しであり、経済活動が再開され、景気回復期待が高まれば、金は再び売り圧力が強まるとみられる。

一方、インドやブラジルでは爆発的な感染拡大が続き、先行き懸念が残っている。世界第2位の人口を抱えるインドには各国から緊急援助が行われており、感染拡大が落ち着くかどうかも確認したい。

●インフレ懸念や米FRBのテーパリング協議の行方も焦点

米連邦準備理事会(FRB)のテーパリング(量的緩和の縮小)の協議の行方も当面の焦点である。4月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、市場で年内のテーパリングが示唆される可能性があるとの見方が出ていたが、量的緩和の縮小を協議する段階ではないとの見方が示された。パウエル米FRB議長はインフレについて供給不足による一時的なものとしている。

ただ、米ダラス地区連銀のカプラン総裁は、雇用が力強く伸びるとの見方から、量的緩和の縮小を巡る協議を開始したいとの見方を示した。目先は4月の米消費者物価指数(CPI)の発表がある。事前予想は前月比0.2%上昇、前年同月比3.6%上昇。インフレが示されても予想以下の米雇用統計から低金利継続が見込まれている。インフレ懸念から金ETFが買われるかどうかが焦点である。また、14日には4月の米小売売上高の発表があり、個人消費の行方も確認したい。

●金ETFに投資資金が戻る

世界最大の金ETFであるSPDRゴールドの現物保有高は10日に1025.15トン(4月末1017.04トン)となった。昨年9月の1278.82トンをピークとして投資資金の流出が続いたが、米経済指標が予想以下となるなか、1800ドルの節目を突破したことで投資資金が戻った。

一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは5月4日時点で17万0741枚(前週17万0619枚)と小幅に拡大した。2019年6月以来の低水準となった3月30日の16万7528枚買い越しから翌週の4月6日に18万9509枚買い越しに急速に拡大したが、買いは続かなかった。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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