MSCI入れ替えで資金流出リスク、5月末にかけて警戒を要するか?<東条麻衣子の株式注意情報>
3月11日掲載の本コラムでは、日経平均株価がナスダックと相似した波形で推移していること、またナスダックは2月以降、騰落レシオ(5日)が売られすぎ水準(70割れ)に達すると反発を見せていることを指摘した。すでに2カ月余りが経過したが、現在もこの2つが注目ポイントであることに変わりはない。
■ナスダックと騰落レシオ(5日)
上述のようにナスダックは、騰落レシオが70を切ると反発する傾向がみられる。前回のコラム執筆以降の騰落レシオとナスダックの動きをご紹介しよう(前回コラムも参照のこと)。
3月29日 60.851 その後、4月16日まで上昇基調
4月20日 68.141 その後、4月29日まで上昇基調
5月12日 63.042
5月13日 67.902 4月29日から下落基調にあったが一旦下げ止まり
このデータからは、70を切る売られすぎ水準に達すると買いが入ることが確認できる。ただし、チャートをみる限り、ナスダックにはNYダウやS&P500ほどの強さは感じられない。
■日本の独自要因
このナスダックと相似した波形にあるのが日経平均株価であり、やはりその推移からは力強さがうかがえない。新型コロナウイルスのワクチン接種が本格的に開始されたとはいえ、米国や欧州に比べて接種率が低いこと、18日に発表された1-3月期のGDPが実質年率5.1%減と3四半期ぶりのマイナス成長に落ち込んだこと、さらに緊急事態宣言の発令と対象地域の拡大が影響し4-6月期も楽観はできないなど、海外投資家が日本株を積極的に買う環境とはほど遠い。
また、5月27日の引けに行われるMSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)の銘柄入れ替えでは、日本市場から6000億円規模の資金が流出するとの観測もなされている。
この資金流出の観測を伝える報道に接して、筆者の脳裏によみがえったのが、2018年のMSCI浮動株ルール変更に伴う資金流出観測とマーケットの反応だ。当時、浮動株ルールの変更により指数連動型のパッシブ系運用資金から約5800億円規模の売り需要が出るとされていた。この時の需給発生日は5月31日だったが、日経平均株価は資金流出も警戒されて5月23日を起点に月末まで下げ続けた。
今回も、日本株を買いづらい複数の要因が重なる中で、6000億円規模ともされる資金流出という需給要因が加わることになり、月末にかけては注意を要するのではないか。
■材料難
日米ともに決算発表シーズンを通過し、材料難の時期を迎える。日本企業には今期見通しを控えめに予想している慎重なところも多く、次の四半期決算の発表時には今回予想を上回る良好な業績を開示する企業が増える可能性がある。ただし、現時点では株式市場の下振れ懸念は払拭し切れないため、中長期で狙うにしても買いは数度に分けて少しずつ買う。あるいは短期であれば、ナスダックが売られすぎの水準に達したら、連動して反発が期待される日本株に打診買いを入れてみるなど、慎重な対処が有効なのではないだろうか。
※本コラム執筆時点(5月19日)のナスダック騰落レシオ(5日)は105.830。
◆東条麻衣子
株式注意情報.jpを主宰。投資家に対し、株式投資に関する注意すべき情報や懸念材料を発信します。
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