国内株式市場見通し:辛抱強く耐える時間がつづく

市況
2021年5月22日 14時22分

■28000円を挟んだ一進一退

前週の日経平均は乱高下しながらも週間で反発。週初は、「インフレ懸念一服・長期金利低下」の継続を受けた前の週末の米ハイテク株などを追い風に200円超上昇してスタート。ただ、新型コロナウイルスの感染封じ込めに成功していた台湾などでも感染が再拡大していることで、海外投資家によるアジア株売りの動きが強まり、寄り付き直後から失速すると、結局、終値で28000円割れ。翌18日は、下げ一巡感に伴う売り方の買い戻しを主体に想定外の大幅反発となり、一時は28500円に迫る場面も。19日は、予想を下回った米4月住宅着工件数や、イエレン財務長官の法人税引き上げへの言及を背景とした米株安の流れが波及。再び28000円を割り込むなど大きく下げて始まった。ただ、28000円割れの水準では押し目買いも入り、一時は28200円台にまで戻すなど振れ幅の激しい展開に。20日は、暗号資産(仮想通貨)ビットコイン価格の急落を警戒してNYダウが一時600ドル近く下落したことや、4月開催分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録で、将来的な量的緩和縮小に関する討議の開始が示唆されたことを受け、日経平均は再び28000円割れでスタート。しかし、28000円割れでは引き続き押し目買いが強く、この日も即座に切り返して同水準を回復。21日は、仮想通貨相場が反発したほか、上昇傾向が警戒されていた米10年物ブレークイーブンインフレ率(BEI・期待インフレ率の指標)や米長期金利が低下したことで、値がさグロース(成長)株を中心に買われた。また、国内でのワクチン普及に関する報道も支援要因となり、日経平均は膠着感を強めながらも、安値は28193.03円と、底堅さを示した。

■警戒感一時後退も買い材料見当たらず

今週の日経平均は引き続き一進一退か。相場急落の要因となったインフレ懸念は小休止し、米長期金利の再上昇も一服してきた。中国が鉄鉱石・鉄鋼価格の上昇抑制に向けた措置を発表したことや、米エネルギー情報局(EIA)の週間統計で原油在庫が3月半ば以来の急増となったことなどが背景だ。加えて、これまでの急伸の反動もあり、ロンドン金属取引所(LME)で取引される鉱物資源の先物価格は揃って一服してきている。また、一部の政策担当者が量的緩和縮小に向けた将来的な討議を視野に入れていることが分かった、4月開催分のFOMC議事録の公表直後にやや上昇していた米10年物国債利回りも、1.6%台前半に低下して安定してきた。10日に2.54%まで上昇した米10年物BEIも20日には2.41%台まで低下し落ち着いてきた。「インフレは一時的」とし、頑なに金融緩和の継続を強調する米連邦準備制度理事会(FRB)に市場はこれまで懐疑的だったが、柔軟な姿勢をポジティブに捉えているようだ。市場は、5月以降だけで、「インフレ懸念」、「ビットコイン急落」など多くの波乱要因を経験してきた。前週末の米国時間には、仮想通貨相場が改めて大きく下落したほか、過去最高を記録した5月の米マークイット総合PMI(購買担当者景況指数)なども背景にインフレ懸念への警戒感はまだくすぶる。しかし、週末の米長期金利と期待インフレ率に動揺は見られていない。今後も注意は必要だが、相当程度のショックを織り込んできた分、短期的には、相場は落ち着いた動きを取り戻すことが期待されよう。実際、振れ幅の激しかった日経平均も、28000円割れでの押し目買いが度々確認されており、28000円台で落ち着こうとする動きが見られている。一方、28500円近辺では戻り待ちの売り圧力も依然大きい。積極的に買い上がる材料も見当たらないなか、当面は辛抱強く戻り待ちの売りをこなす必要がありそうだ。一方、投資主体別売買動向によると、日経平均が3日間で2000円を超す急落をみせた5月第2週(5/10~14)に、海外投資家は現物・先物の合算で1兆円弱、日本株を売り越し、そのうち6割程が将来的な買い戻しを伴う先物だった。ワクチン普及の遅れの解消など日本株を敬遠する要因が解消されてくれば、買い戻しが進む可能性もある。政府によると、国内でのワクチン接種率(2回済み)は、19日時点で、医療従事者が46%となった一方、高齢者では0.3%にとどまっているという。一層の接種率の進展に期待するばかりだ。そのほか、26日に予定されている米半導体大手エヌビディアの決算に注目。既に発表済みの関連企業の決算では想定を上回るものが多いが、注目度が高い同社の決算と株価反応は、足元で冴えない動きが続いている半導体関連銘柄の行く末を占う上でも重要だ。

■東証1部では主役不在、新興市場の戻りに期待

波乱要因は足元で一服したものの、警戒感は残る。積極的に買い上がる材料も見当たらず、これまで東証1部で牽引役となっていた半導体関連株も足元は調整気味。主役不在のなか、東証1部の主力株は膠着感の強い動きが続きそうだ。一方、前週末にかけて、マザーズ指数及び日経JASDAQ平均は共に4日続伸。ローソク足は全て上下のヒゲが短い陽線で、上値と下値も切り上がっており、底打ち感が鮮明になっている。出直り感の強い新興市場へ幕間つなぎの物色が向かいやすそうだ。

■米エヌビディア決算、米4月耐久財受注など

今週は25日に米3月FHFA住宅価格指数、米5月消費者信頼感指数、米4月新築住宅販売、26日に企業サービス価格指数、米エヌビディア決算、27日に米1-3月期GDP改定値、米4月耐久財受注、28日に4月失業率・4月有効求人倍率、米4月個人所得・個人消費支出などが予定されている。

《FA》

提供:フィスコ

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