明日の株式相場に向けて=「半導体中小型」と「アフターコロナ劇場」
週明け7日の東京株式市場は、日経平均株価が反発に転じた。注目された5月の米雇用統計は非農業部門の雇用者数の増加が前月比55万9000人と大幅な改善をみせたものの、67万人あまりの増加を見込んでいた市場コンセンサスは下回った。この結果、6月15~16日の日程で行われるFOMCでテーパリングの議論は持ち越されるとの思惑が優勢となり、米債券市場で米10年債利回りが急低下、1.55%台まで水準を切り下げた。当然、米株市場にはプラスに作用し、とりわけハイテクセクターを中心としたグロース株には追い風が強まった。
こうなると、前週末にひと押し入れていた日経平均もきょうはリスクオンを満喫できそうな雰囲気はあったのだが、なかなか思い通りにはいかない。勢いがあったのは300円高に買われた寄り後数分間のみで、その後は2万9000円近辺の売り圧力を払拭できずに伸び悩むという、お決まりのコースをたどることになった。
市場では「米雇用統計はあくまで前門の虎に過ぎない」(ネット証券マーケットアナリスト)という。いうまでもなく、後門の狼は10日に予定される5月の米消費者物価指数(CPI)ということになるわけだが、これについては、「市場コンセンサスは4.7%の上昇であり、仮にこれを上回って例えば5%台に乗せてくるようだと長期金利が跳ね上がり、株式市場でもハイテク系グロース株を中心とした売り圧力が再燃する」(同)と指摘する。まして、今週は東京市場では週末にオプションSQ算出を控えており、うかつに手を出しにくいというのが、マーケット関係者の認識のようだ。
もっとも、テーパリング論議が独り歩きを始めてからは、不透明感を拭い去るということが基本的にできなくなっている。相場が強ければ、こうしたスケジュール的な重石に関係なく上値追いを始める。5月28日にマドを開けて600円高の急伸をみせたあとの踊り場形成も、そろそろ次のステップが近いとみておきたい。
個別では半導体関連の中小型株が強い。グローバル・ニッチトップとして驚愕の上昇波動を形成したレーザーテック<6920>はさすがに上昇一服となったが、同社株が株式市場にもたらしたマネーフローは、同関連の出遅れ株へのリターンリバーサルに発展している。半導体関連では、シグマ光機<7713>を引き続き注目。時価総額130億円あまりに過ぎず、現時点でポスト・レーザーテック候補というのは憚(はばか)られるものの、少なくとも評価不足であることは確か。半導体向けレーザー関連製品を扱っており、1800円割れの押し目形成場面は絶好の買い場提供となった可能性がある。
また、1000円トビ台の信越ポリマー<7970>は半導体ウエハー容器のほかタッチスイッチなど車載分野も手掛けており、目を配っておきたい。半導体商社では丸文<7537>の押し目狙い。米テキサスインスツルメンツ製品を取り扱い、商社とはいえ8倍台のPERと0.4倍台のPBRは依然として水準訂正余地十分とみられる。
半導体以外では、アフターコロナ関連に日の目を見る銘柄が相次いでいる。以前にも触れたが、ワクチン接種が急速に進んだ米国では旅行やクルーズ、レストラン(外食)などに予約が殺到している状況にある。映画館運営会社の株価が1日で倍化するなど行き過ぎの部分は否めないが、理屈よりもその現実に目を向けなければならない。日本もここにきてワクチンの大規模接種が軌道に乗ってきたことで、米国株市場で繰り広げられた「アフターコロナ劇場」の物色の流れが意識され始めている。
5月下旬に取り上げたIBJ<6071>はアフターコロナの一角として花を咲かせたが、これ以外では全国12空港で施設を運営する空港施設<8864>が強い動きを続けている。また、カラオケや飲食店を展開するウチヤマホールディングス<6059>なども注目しておきたい。緊急事態宣言解除を織り込みに行くのであれば、経路探索サービスで独自ノウハウを持つ駅探<3646>に意外性がある。
あすのスケジュールでは4月の毎月勤労統計(速報値)、1~3月のGDP改定値、4月の国際収支、5月の景気ウォッチャー調査など。海外では1~3月のユーロ圏GDP(確報値)、6月のZEW独景気予測指数、4月の米貿易収支など。(銀)