藤代宏一氏【日経平均の往来相場と米金融政策の行方】 <相場観特集>

特集
2021年6月7日 18時30分

―どうなる米国のテーパリング開始とインフレ懸念―

東京市場では、日経平均株価が2万9000円前後での一進一退を続けている。21年3月期に続き今期も業績の伸びが予想されているが、株価の上値は重い。その一方、NYダウ最高値更新を目前とするなど、上昇基調を強めている。市場の関心は、米連邦準備理事会(FRB)のテーパリング(量的緩和縮小)など金融政策とインフレ懸念に集中している。米金融政策を含め今後の日米株式市場をどうみればいいのか。第一生命経済研究所の藤代宏一主任エコノミストに聞いた。

●「22年から米国は量的緩和縮小を開始、東京市場は一進一退」

藤代宏一氏(第一生命経済研究所 経済調査部 主任エコノミスト)

金融市場では、2022年からFRBが、テーパリングを開始するという見方がコンセンサスとなり、相場には織り込まれている。具体的には、22年の第1四半期(1-3月)から年内に4回の米国債などの買い入れ額の減少を行い、テーパリングを終了させるというものだ。

今月15~16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)が注目されるが、パウエルFRB議長は記者会見などで従来からの姿勢を大きく変えない可能性がある。むしろ重要なのは、その後発表される議事要旨で、そこでテーパリングの議論がなされたことを明らかにしていくことが予想される。更に、夏のジャクソンホール会議に向けて、FRB高官がテーパリングに前向きな発言をして地ならしを進める展開もあり得る。

焦点は、米国の利上げが24年までないのか、それとも23年半ば頃に1回目の利上げがあるかだ。この点に関しても、4日に発表された米5月雇用統計は、雇用は緩やかに回復する一方で金融引き締めには距離があるという点で好ましい内容だった。ただ、米国のインフレ懸念は一時的でいったん落ち着いたように見えるが、足もとの賃金の上がり方をみると、もう一回、インフレを警戒する場面があるかもしれない。

NYダウを含め米国株式市場は、上昇基調にある。足もとでアマゾン・ドット・コム<AMZN>やアルファベット<GOOG>(グーグル)などGAFAの業績が伸びており、割高感は解消されている。金利上昇懸念が後退し、今後も企業業績の拡大が見込めるなか、米株式市場は一段の上昇が見込める。特に、グロース株中心の展開が期待できるだろう。

一方、日経平均株価は2万9000円を前後する動きが続き、上値を3万円とする一進一退相場が継続するとみている。新型コロナワクチン接種拡大の期待はすでに織り込まれている。業績の伸びが見込めるか、どうかが日米株式相場の値動きの差となりそうだ。

(聞き手・岡里英幸)

<プロフィール>(ふじしろ・こういち)

第一生命経済研究所経済調査部・主任エコノミスト。担当は金融市場全般。2005年4月、第一生命保険入社。08年、みずほ証券出向。10年4月第一生命経済研究所出向、同年7月内閣府経済財政分析担当へ2年間出向。12年7月副主任エコノミストを経て、15年4月より現職。

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