米政府が巨額出資へ、AI時代で躍動の「量子コンピューター」関連株 <株探トップ特集>
―日本政府も国家戦略分野として注力、中小型関連株に投資妙味が高まる―
「量子コンピューター」に対する人気が再燃している。米政府は5月に関連企業に大型出資する方針を明らかにした。日本では高市早苗政権が掲げる戦略17分野に「量子」を含めるなど、量子コンピューターは国家戦略分野としての色彩を一段と濃くしている。桁違いのパフォーマンスを上げ計算に伴う消費電力の削減も見込めるだけに、AI時代で普及への期待値は高まるばかりだ。日米で国策を追い風とする量子コンピューター関連株に焦点を当てる。
●35年に最大2兆7000億ドルの経済価値創出も
コンピューターの世界ではこれまで「0か1」という2進法に基づき、演算能力の高度化が進められてきた。量子力学の「0と1」が共存する量子もつれの状態を利用するなど、従来と異なる原理を活用する量子コンピューターは、計算処理能力の飛躍的な向上や計算に伴う消費電力の大幅削減を実現することが期待され、急速な市場成長が見込まれている。マッキンゼー&カンパニーは4月に量子コンピューティングに関するレポートを公表。量子コンピューティング企業の収益は2028年に世界全体で44億ドル(25年は10億ドル以上)に成長する可能性があるとし、35年には量子コンピューティングが最大2兆7000億ドルの経済価値を創出することもあり得るとの見解を示した。
技術覇権を手にして国際的な影響力を拡大すべく、国家間での量子コンピューターの開発競争も激化している。米商務省は5月21日、国家安全保障の観点などから20億ドル超の資金を投じ量子コンピューター関連企業の技術開発の加速を支援する意向表明書(LOI)に署名。うち、量子分野における国内の製造基盤を整備するためIBM<IBM>に10億ドルの資金を投じる方針を示し、同社株は急騰した。6月に入るとIBMは今後5年間で量子コンピューティングに100億ドル以上を投じる計画を発表。29年までに、計算上で発生する「量子エラー」を訂正する機能を備えた大規模な耐障害性量子コンピューターを提供することを目指している。
ほかにも、米商務省から3億7500万ドルの資金提供を受けることになった半導体受託製造の米グローバルファウンドリーズ<GFS>は、量子コンピューターの構成品などの生産体制の整備を進める計画。クォンティニューム<QNT>も1億ドルの資金を手に入れ、量子状態の維持しやすさで利点を持つイオントラップ方式の量子コンピューターの研究開発を加速。電荷を持たない中性原子をレーザーで配列・制御する中性原子方式量子コンピューターを開発するインフレクション<INFQ>も1億ドルの資金提供先となった。
国内においてもさまざまな方式の量子コンピューターの研究が進められている。早期実用化の大本命と位置付けられている方式には、極冷温下で電気抵抗がゼロとなる超伝導状態を作り出し、量子ビットをマイクロ波により制御する超伝導方式がある。富士通 <6702> [東証P]は理化学研究所と共同で256量子ビットの超伝導量子コンピューターを開発。更なる高性能化を進める方針で、27年3月期に1024量子ビット、31年3月期に1万超量子ビット・250論理ビットの実現を目指している。日立製作所 <6501> [東証P]やNEC <6701> [東証P]、NTT <9432> [東証P]などもそれぞれ、量子コンピューターの実用化に向けた開発活動を活発化させている。もちろん、量子コンピューターの技術発展の原動力となっているのは大手企業だけではない。特に量子コンピューター関連に位置付けられる中小型株のなかには、個人投資家好みの値動きの軽さを併せ持つ銘柄が多い。
●急速成長のポテンシャルを秘めた中小型株をチェック
テラスカイ <3915> [東証P]は6月1~3日に、量子コンピューターのアルゴリズム・ソフトウェアの研究開発を手掛ける子会社Quemixの研究成果を相次いで発表。Quemixはトヨタ自動車 <7203> [東証P]や日産自動車 <7201> [東証P]、ホンダ <7267> [東証P]の研究開発部門である本田技術研究所など日本を代表する企業と共同研究を手掛けている。1日に開示した三井金属 <5706> [東証P]との研究で材料開発を大幅に効率化する新技術「QAVG」を生み出すなど、量子コンピューティング技術を課題解決に生かすノウハウを着実に蓄積している。
セック <3741> [東証P]は量子コンピューターを実機レベルで動作させるためのミドル・低レイヤー技術を有する数少ないソフトウェア会社。大阪大学を中心とする共同研究チームに参加し、世界最大規模となる量子コンピューターの基本ソフトウェア「OQTOPUS」(オクトパス)を開発。4月に東京ビッグサイトであった展示会に出展した。量子機械学習(量子AI)の研究も進めており、ノイズのある量子コンピューター上で量子機械学習を実行するため、ハードウェア特性を考慮した量子回路チューニングを行う手法の検討などに取り組んでいる。
インテリジェント ウェイブ <4847> [東証P]はさまざまな量子コンピューターの実機上で正しく動くアルゴリズムの開発に使える量子シミュレーター「Qaptiva800」を展開。量子特有のノイズの有無や発生条件を細かく設定することが可能で、耐障害性量子コンピューターなどの研究に対応できる。昨年には新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のコンピューティング技術に関する懸賞金活用型プログラムにおいて、自ら計算環境を用意することが困難な参加者の研究活動を支えるための開発環境をIBMやクォンティニューム、東芝、フィックスターズ <3687> [東証P]傘下のFixstars Amplifyと協力して構築すると発表。インテリWはQaptiva800を提供した。
浜松ホトニクス <6965> [東証P]は量子コンピューター用のファイバーレーザーのほか、空間光位相変調器や高感度カメラを展開。光を使用する中性原子方式やイオントラップ方式、光子を量子ビットとして利用する光量子方式で幅広く採用されている。量子コンピューター関連の売上高は今期に約40億円を見込み、31年9月期には70億円を目指している。6月3日、最先端光検出・イメージング技術を開発・製造する子会社のNKT Photonicsとともに、中性原子方式の研究開発をリードするスタートアップ企業Yaqumo(東京都千代田区)と量子コンピューターの産業化に向けた先端光学システムに関する覚書(MoU)を締結。中性原子方式向けの先端光学システムの共同研究・産業化を各社の強みを生かして推進する。
エヌエフホールディングス <6864> [東証S]は得意の微小信号処理技術を生かし、量子コンピューターの研究開発に必要な計測システムを提供している。阪大量子情報・量子生命研究センターや富士通などの共同研究グループが主要部品・パーツやソフトウェアを全て日本製とする「純国産」超伝導量子コンピューターを開発した際は、エヌエフHDグループの低雑音直流電源が採用された。同製品は雑音を極限まで抑制し、温度や時間の変化に対しても高い安定性を持つという厳しい要求に応える電源となっており、国産量子コンピューターの初号機から4号機までの全てに搭載されている。
このほか、関連銘柄としては、量子コンピューティングの活用支援サービスを提供するFスターズや、科学・工学向けの高性能コンピューター関連でソリューションを展開するHPCシステムズ <6597> [東証G]をはじめ、量子コンピューター向け紫外レーザー光源を販売するオキサイド <6521> [東証G]、研究開発に用いられる空間光変調器などを取り扱うsantec Holdings <6777> [東証S]、量子暗号通信向けデバイスの開発を進める多摩川ホールディングス <6838> [東証S]、内閣府戦略的イノベーション創造プログラムにおける量子課題の研究テーマへの参画実績を持つシグマ光機 <7713> [東証S]などもチェックしたい。
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