富田隆弥の【CHART CLUB】 「煮詰まる相場、放れに従う」
◆日経平均株価は6月に入って2万9000円を挟んで狭い値幅で推移し膠着が続く。日足は75日移動平均線(10日時点2万9147円)を抜けずに足踏みするが、一方でクリアした25日移動平均線(同2万8621円)が下値支持線になっている。チャートは再び2万9000円前後で三角保ち合いを煮詰めており、ここからの「放れ足」が当面の焦点になる。
◆上放れて75日移動平均線と6月7日の高値2万9241円を抜くなら、5月13日の安値2万7385円からの上昇第2波で「3万0650円~3万1000円」を目指すだろう。逆に、下放れて25日移動平均線を割り込むなら、5月13日の安値や200日移動平均線の迫る2万7000円前後が意識されることになる。
◆カギを握るNYダウは5月10日の過去最高値3万5091ドルを目前に足踏み続くが、S&P500指数が6月10日に5月7日の高値4238ポイントを抜いており、NYダウの最高値更新にも期待は高まる。そして、米国株が堅調に推移するなら、日経平均株価も三角保ち合いからの上放れが想定される。
◆マーケットは10日発表の米国5月消費者物価指数(CPI)に注目していた。結果は前月比+0.6%と市場予想(+0.5%)を上回り、インフレ懸念が再燃してもおかしくはなかった。だが、NYダウは上昇し、10年債利回りは低下で反応している。事前にインフレが警戒されていただけに、発表を終えてヘッジの買い戻し(ショートカバー)が優勢となっているようだ。
◆とはいえ、ワクチン接種の浸透で米国は景気が回復、物価上昇や雇用回復が鮮明となっている。こうなると、来週15-16日に開催されるFOMC(連邦公開市場委員会)にマーケットは再び注目することになる。「テーパリング(金融緩和縮小)」についてどう表現してくるかを焦点に、株式市場は再び様子見気分を強めてもおかしくない。
◆ただし、材料はどうあれ、日本株のポイントは日経平均株価の放れ足であり、「放れに従う」ことが重要となる。三角保ち合いからの上放れに期待しているが、期待に反して下放れるならスタンスを少し慎重に傾けることも想定しておく。
(6月10日 記、毎週土曜日に更新)
株探ニュース