明日の株式相場に向けて=バブル初動の「海運株ビッグウェーブ」

市況
2021年6月22日 17時02分

きょう(22日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比873円高の2万8884円と急反発となった。一夜にして、180度向きが変わる相場はこれまで何度も繰り返されてはきたことだが、それにしても、である。材料的に明らかにポジティブインパクトがあれば話は別だが、そうでなくとも市場のセンチメントを支配しているのはAIであるため、理由は後からつければ良いということになる。AI売買の影響は今日のような相場に如実に映し出される。売買代金上位の銘柄で流動性に難がないものを対象に絨毯爆撃的に買い注文が這わされ、川の水かさが増すように全体相場を浮揚させる。売買代金上位100傑を見ると真っ赤な状態ですべてが値上がりしている。また、日経平均採用の225銘柄も全部がプラス圏で着地し、東証1部全体でみても2100銘柄超、96%の銘柄が上昇する文字通りの全面高となった。

今週は連銀総裁の講演の場が多く設けられているが、今のところFOMCの意思を汲んでなのかどうか、皆がテーパリングや利上げ前倒しの可能性に言及するケースが相次いでいる。しかし、当の米国株市場では、いちいち付き合ってはいられないとばかりにNYダウが反騰に転じた。これらの高官発言は、8月のジャクソンホールのパウエルFRB議長の講演に向けた地ならし。言い方を変えればアドバルーンを立て続けにあげてマーケットの反応をみようということ。既にFRB、そして世界は金融緩和の蛇口を少しずつ閉める方向で動き出したことを決定づけている。もっとも、よく言われるように金融政策は景気実勢の動向と表裏一体であるから、株式市場においても金融相場の次に来る業績相場への乗り換えを進める段階との認識を持つべき局面といえる。

きょうの東京市場では、海運株が凄まじい上昇ウェーブを形成している。業種別の上昇率で10%を超えるというのは稀有なケース。2007年の海運バブル相場を想起させるような買われ方である。当時、バルチック海運指数は1万1000を超えた。今はまだ3000を上回った矢先の段階にある。ちなみに、きょうの海運株一斉高の流れは商船三井<9104>の業績予想増額が火付け役だが、その業績上乗せの原動力となったのはコンテナ船需要が想定外の活況で運賃も高騰していること。表向きは世界的なライフスタイルの巣ごもり化に伴う家電製品や家具の荷動きが活発化していること、もう一つはコロナ禍での労働力確保がままならず、これが運賃の上昇圧力をもたらしているということだ。きょうの引け後には川崎汽船<9107>の最終利益の大幅上方修正も発表された。

しかし、新型コロナウイルスによる経済・社会環境の変化だけではない。危機は政策を生むというが、財政と金融両面からの支援マネーが、気が付けば思いもよらぬ場所で巨大な波紋を形成している。いわゆるコロナマネーの仕業による部分が大きい。ペット価格の高騰やローレックスやアンティーク中古車市場が急騰しているのも局地バブルの断片図。ビットコインのようにここ急速に価格水準を切り下げているものもあるが、それに代わる形で間欠泉のように他の場所で噴き上げるものが必ず出てくる。

海運バブルの天井は高い。きょうは日本郵船<9101>が500円を超える上昇で5600円台まで買われ、商船三井も一時600円近い上昇で5390円まで駆け上がり年初来高値を更新した。しかし、07年の上場来高値は修正後の株価で引き直して、郵船が1万2760円で、商船三井の最高値は2万400円だ。きょうは、前週取り上げたNSユナイテッド海運<9110>や飯野海運<9119>が急伸、明治海運<9115>に至ってはストップ高となった。ここから、狙うのであれば例えば業績急回復で相対的に出遅れている乾汽船<9308>が面白い投資対象といえる。更に港湾運送を手掛ける大運<9363>も改めて注目となろう。

海運株以外ではレーザービーム&次世代パワー半導体関連のワイエイシイホールディングス<6298>、高付加価値抗菌フィルムで需要を開拓するKIMOTO<7908>、フェローテック傘下でセンサーやエレメントの新境地が期待される大泉製作所<6618>などに注目。

あすのスケジュールでは、日銀金融政策決定会合の議事要旨(4月26~27日開催分)、4月の景気動向指数改定値など。また、IPOが3社予定され東証2部にドリームベッド<7791>、東証マザーズ市場にアイ・パートナーズフィナンシャル<7345>、アイドマ・ホールディングス<7373>、が新規上場する。海外では、6月のユーロ圏PMI速報値、6月の米製造業PMI、5月の米新築住宅販売件数など。(銀)

出所:MINKABU PRESS

最終更新日:2021年06月22日 17時12分

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