新法成立で再脚光、「プラスチック再資源化」関連株は新上昇ステージ突入 <株探トップ特集>

特集
2021年6月23日 19時30分

―プラスチック廃棄削減は世界規模の課題、リサイクルのニーズは更に拡大へ―

先週に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)での突然のタカ派方向シフトで市場心理が不安定となり、米株式市場の影響を受けるかたちで21日には日経平均株価の下げ幅が一時1100円を超える場面があった。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は22日の議会証言で利上げを急がない姿勢を示したが、米金融政策の先行きに対する不透明感は根強く、この日の日経平均株価は小幅ながら反落した。物色対象は絞りにくいが、こうした局面では長期的なテーマを見直してみるのも一手で、今回は世界的な問題となっているプラスチックごみの再資源化 に改めて注目してみた。

●プラ資源循環促進法が成立

プラスチックの廃棄削減を求める「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律案(プラ資源循環促進法)」が、4日の参院本会議で可決、成立した。海洋プラスチックごみ問題や気候変動問題、諸外国の廃棄物輸入規制強化などを背景に、プラスチック資源循環の重要性が高まるなか、同法はプラスチック使用製品の設計から廃棄物処理に至るあらゆる主体の取り組みを促進するもの。具体的には、プラスチックを使う製品についてリサイクルすることを前提にした「環境配慮設計」に関する指針を策定し、製造業者などに対して指針に沿った製品設計を求めるほか、家庭などから排出されるプラスチック製品を市町村が分別収集・再商品化する仕組みを導入することなどが挙げられる。また、商品販売やサービスの提供に付随して消費者に無償で提供されるプラスチック使用製品の削減を求めており、コンビニや飲食店で配布されるプラスチック製スプーンやフォークが想定されている。

●セブン&アイは環境省と連携

こうしたなか、セブン&アイ・ホールディングス <3382> 傘下のセブン-イレブン・ジャパンは環境省と連携し、6月16日から7月15日にかけて同省が入居している中央合同庁舎5号館内のセブン-イレブン店舗など都内6店舗で、プラスチック製カトラリー(スプーンやフォーク、ナイフなどの総称)を辞退した利用者にnanacoポイントを付与する実証実験を開始。また、セブン&アイは21日に国内最大級のPET(ポリエチレンテレフタレート)ボトルリサイクル樹脂製造を手掛ける協栄J&T環境(三重県津市)に資本参加すると発表した。

企業のプラスチックごみ問題に対する意識は高く、花王 <4452> と日用品大手のユニリーバ・ジャパン(東京都目黒区)が共同でシャンプーや洗剤などのボトルのリサイクルプロジェクトをスタートさせたほか、ENEOSホールディングス <5020> は4月に世界的なプラスチック廃棄物問題解決に取り組む国際的アライアンス「アライアンス・トゥ・エンド・プラスチック・ウェイスト(AEPW)」に参加したと発表。東京建物 <8804> やブリヂストン <5108> などは3月から5月末にかけて、東京スクエアガーデン(東京都中央区)で廃プラスチックの再資源化に関する実証実験を行った。

●リバーHDと住友化が提携検討

再資源化に向けた取り組みは以前から行われてきたが、ここにきて更に活発化しており、三菱ケミカルホールディングス <4188> 傘下の三菱ケミカルは16日、英ミュラ・テクノロジーと廃プラスチックから化学製品や燃料油の原料を製造する技術のライセンス契約を締結したと発表。この技術は、高温高圧の超臨界水の中でプラスチックを分解し、リサイクル生成油へと再生するもので、今までは焼却や埋め立て処理をしていたプラスチックをリサイクルすることにより、製造から処分に至るサイクル全体の二酸化炭素(CO2)排出量と化石燃料の消費を大幅に削減することができるという。

リバーホールディングス <5690> [東証2]と住友化学 <4005> は9日、業務提携に向けた検討を開始したことを明らかにした。これはリバーHDが持つ廃棄物リサイクルのノウハウと、住友化が培ってきたプラスチックの製造技術を融合することにより、回収されたプラスチック廃棄物を製品として再生させるマテリアルリサイクルを目指すもので、共同検討項目は主に使用済み自動車に由来するプラスチックを高度に選別する技術の開発や、リサイクルプラスチック製品の環境負荷評価、プラスチック廃棄物リサイクル品の社会実装化への取り組みなど。なお、業務提携に向けた判断は今後1年以内に行うとしている。

大倉工業 <4221> は11日、7月1日付で「プラスチック資源循環推進プロジェクト」を発足させ、廃棄プラスチックの回収から樹脂化、製品化までのシステム構築及び新たな事業、ビジネス展開を検討すると発表した。同社は環境負荷低減の取り組みを最重要課題のひとつと捉え、他社との協業も視野に入れながら自社の技術を活用していく構えだ。

また、三井化学 <4183> はBASFジャパン(東京都中央区)と国内でのケミカルリサイクルの推進に向けた協業検討を開始したほか、旭化成 <3407> は日本アイ・ビー・エム(東京都中央区)と資源循環社会の実現に向けたデジタルプラットフォームの構築を目指したプロジェクトをスタート。双日 <2768> は3月に、日本環境設計(東京都千代田区)とPETのケミカルリサイクル事業を国内外で共同推進することで合意している。

これ以外では、1日当たり最大300トンの廃プラスチック処理能力を誇る施設を持つサニックス <4651> 、丸の内エリアで6月1日から行われているプラスチック資源循環モデルの実証事業に参加しているエンビプロ・ホールディングス <5698> 、プラスチックリサイクル事業を手掛けるイボキン <5699> [JQ]にも商機がありそうだ。

●ユーグレナ、カネカにも注目

素材では100%植物由来の生分解性ポリマーで、海水中で生分解する認証「OK Biodegradable MARINE」を取得している「Green Planet」を展開しているカネカ <4118> のビジネス機会が更に広がりそうだ。直近ではJALUX <2729> のショッピングバッグに採用されたほか、ファミリーマート(東京都港区)のスプーンに採用。「Green Planet」のカトラリー用途での採用は国内初で、首都圏約40店舗で順次導入される予定だ。

また、ユーグレナ <2931> も見逃せない。同社とセイコーエプソン <6724> 、NEC <6701> が幹事企業となり、微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)の貯蔵多糖であるパラミロンを使ったバイオマスプラスチックのひとつである「パラレジン」の技術開発、普及推進を目的とする「パラレジンジャパンコンソーシアム」を3月に設立した。同コンソーシアムには日東電工 <6988> や日本紙パルプ商事 <8032> なども参加しており、2030年に年間20万トン規模のバイオマスプラスチックを供給することを目指すとしている。

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