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8連勝で負け知らず、レスキュー隊所属の兼業さんのコツは? -下

特集
2021年6月25日 10時00分

第19-2回 強い投資家はどんな人~日本株投資家3900人調査で解明!(ケーススタディ編)

登場する銘柄

片倉工業 <3001>、 クリナップ <7955>、RIZAPグループ<2928>(旧・健康コーポレーション)

取材/真弓重孝・富田祥平、編集・構成/真弓重孝(株探編集部)

satoさん(ハンドルネーム・30代・男性・兼業投資家)
【タイトル】 日本株運用資産 約5700万円
累積投資元本 1145万円
累積リターン 4415万円
投資スタイル バリュー×カタリスト×分散投資
主な保有期間 中期(1カ月以上~1年未満)
保有銘柄数 11~20銘柄
投資開始年 2013年
他の投資対象 純金積み立て・iDeCo
自身の性格分析 とことん追求
好きな言葉 継続は力なり
satoさんとは:陸上競技を大学まで本格的に行い、現在は消防士として活躍する兼業投資家。
愛車の売却をきっかけに2013年から投資を開始し、入金をしつつ種銭を増やしながら
投資歴約8年で資産を約4倍以上まで拡大させる。
競技者時代からの習慣で投資開始から自分の思考や銘柄の考察をまとめた「投資ノート」を
作成しており、その数は23冊にも上る。
休日も10時間は『会社四季報』(東洋経済新報社)を熟読するなど、
コツコツと努力を継続するスタイルが特徴。

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投資開始から8連勝のsatoさん(ハンドルネーム)の技を、2回に分けて紹介する本シリーズ。前回は、satoさんのスタイルの根幹が「バリュー×カタリスト×分散」であることと、その中でカタリストに焦点を当てた銘柄選びの着眼点を紹介した。

3つの要素をおさらいすると以下の通りになる。

1.「バリュー」…PBR(株価純資産倍率)1倍未満を原則として、時には修正PBRやネットネット株(正味の現金資産が時価総額を上回っている企業)の基準も適用する。
2.「カタリスト」…万年割安株を避けるために、株価が上昇する材料(カタリスト)の有無を精査。現在は「業績の特需やV字回復の可能性」「株主構成の変化」がポートフォリオのなかでもメイン。
3.ファンダメンタル面で深掘り、できれば目標株価を設定
4.「分散」…ポートフォリオ内のカタリストや、バリューの判定基準の分散を意識している。また、利確や取得タイミングの分散も行う。

今回は、バリューの判定基準でPBR1倍未満以外に、「修正PBR」と「ネットネット株」という2つの基準でも銘柄選びをしている例を見ていこう。

まずは「修正PBR」に着目した例で、前回登場した片倉工業<3001>が該当する。

1000億円近い土地の含み益で、修正PBRは1倍未満

satoさんが同社株を購入したのは20年1月28日。satoさんが購入する頃は1200~1400円のレンジ相場に狭まっていた中で、1200円近辺で取得した。

しかし直後にコロナ暴落が襲い、株価は762円まで下落することになった。それでもパニック売りをすることはなかった。

理由の1つは、前回に紹介した「アクティビストの大株主参入」というカタリストが崩れてはいないこと。そしてもう1つは、今回のテーマであるバリュー面での魅力を維持していたからだ。

その魅力とは同社が1000億円近い土地の含み益があることだ。こうした換金性のある資産を加味すると、同社の実質的な自己資本は1700億円となり、そこから算出した当時の修正PBRは0.25倍だった。

具体的な計算方法は以下の通り。19年12月期第3四半期時点で同社の連結自己資本は802億円。これに不動産含み益の915億円を加算した修正自己資本は1700億円ほど。

そこから算出したBPS(1株あたりの純資産)と購入時の株価1235円から、修正PBRは0.25倍という計算になる。

■片倉工業の修正PBRを算出するまで(2019年当時)

修正自己資本
1717億円
= 自己資本
802億円
+ 不動産含み益
915億円

修正BPS
4876円
= 修正自己資本
1717億円
÷ 発行済株式数
3521万株

修正PBR = 株価 ÷ 修正BPS
0.25倍 1235円 4876円

コロナ大暴落の際は、株価は底値762円まで下落していた。その時点での修正PBRは0.15倍になる。こうした数値を把握していたことが、パニック売りを回避できた理由だ。

もちろん、新型コロナの長期化により同社が保有する不動産の含み益が下落してしまうことも考えられる。

ただ、たとえ不動産の含み益が半分になったとしても修正自己資本は1300億円を超える規模。これに対して暴落時の時価総額は268億円。下値は限定的になった中で、資産バリュー性はより強まったと保有を継続したのだ。

次にネットネット株で注目した例を見ていこう。

ネットネット株のクリナップではリフォームの特需もポイント

■クリナップの注目ポイント

バリュー ネットネット株の基準に適合
カタリスト コロナ禍によるリフォームの特需
satoさんがネットネット株として注目した銘柄の1つが、住設機器大手のクリナップ<7955>だ。

ネットネット株の話の前に、まず同社を注目したカタリストを紹介すると、コロナ禍のリフォーム特需を期待して21年2月5日に購入した。

目にとまったきっかけは、20年11月6日に発表した21年3月期第2四半期の決算内容だ。7~9月期が黒字転換し、変化の兆しが現れたと判断した。

そして翌21年2月4日の第3四半期決算では10~2月期の営業利益が前年同期比2.4倍と大幅に増益。

この数字は過去5年で最高であり、特需の強さを確認した。

■『株探』プレミアムで確認できるクリナップの四半期決算の成長性推移

【タイトル】

そこでsatoさんは2008年のリーマン・ショック、2011年の震災時やコロナショックにおける底値のPBRと比較。21年2月時点の株価をみると、業績の強さに対し過去の水準にくらべて上昇しておらず、割安だと考え取得を決意した。取得単価は505円で、8500株を取得した。

■クリナップの月足チャート(2005年2~2021年6月)

【タイトル】

タッチレスの手洗い需要が高まると想定

クリナップに着目したコロナ禍の特需として、リフォームはすぐにはイメージしづらいかもしれない。ただ、巣ごもりで台所に立つ回数が増えたことでキッチンのリフォームも増えていくのではないかとsatoさんは想定した。

また、コロナ対策として手洗いが増えたことで、直接蛇口に手を触れずに手洗いが可能な自動水栓へとリフォームするニーズが生まれるのでは、と考えた。

高級システムキッチンや、洗面化粧台にも強みをもつクリナップには、コロナ禍でのリフォーム特需が訪れるのではないかと注目するようになる。

satoさんは、同社の目標株価を目先1000円と予想している。これは2016年12月に付けた高値の1002円を念頭にした。この時期に発表された17年3月期第3四半期の売上高と営業利益と、足元の業績の水準を比較してメドを立てた。

足元ではリフォームの特需期待、また次に説明するように資産額が時価総額を上回っているため、順調に決算を通過している間は同社株の保有を継続する予定だ。

手持ちの現金資産が時価総額より大きいネットネットに魅了

では、ここから本題のクリナップのネットネット株である点について触れていく。ご存じのように、ネットネット株とは著名な米国人投資家、ベンジャミン・グレアムが提唱したものだ。

企業の持つ流動資産から「負債総額」を引いて「正味の流動資産」に0.66倍を掛けた額が「時価総額」より小さい銘柄を指す

satoさんの場合はグレアムの式を完全には活用せず、流動資産から棚卸し資産や原材料など換金性の低い資産を除いた有価証券や現金同等物などに、固定資産に計上されている投資有価証券を加えている。

また、貸倒引当金があった場合は流動資産から差し引く。クリナップでは貸倒引当金を差し引いてある。

■クリナップのネットネット株を示す式

換金性資産 = 現預金 + 売掛金等 + 電子記録債権 + 有価証券 + 投資有価証券
553億円 216億円 144億円 129億円 10億円 54億円

正味現金資産
217億円
= 換金性資産
553億円
- 総負債
335億円

正味現金資産
217億円
> 当時の時価総額
187億円
ネットネット株
前回の記事で紹介した電響社<8144>もこのネットネット株にあてはまる。詳細は省くが、電響社の正味現金資産は118億円で、注目時の時価総額71億円を上回っていた。

satoさんがこのようにネットネット株に注目するようになったのは、著名な個人投資家のかぶ1000さん(ハンドルネーム)の投資手法を目にするようになったことがきっかけ。ネットネット株かどうかの判定も、かぶ1000さんの手法の影響が大きい。

satoさんは以前から、自分が足りない部分の技術をもつ人をみつけ、必要なスキルを吸収して成長するということを繰り返してきた。satoさんの手法の特徴であるカタリスト投資も、ある著名な投資家のスタイルを吸収したものである。

次のページでは、satoさんのカタリスト投資を始めるきっかけのエピソードや、いままでの成長プロセスをみていこう。

※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。

次ページ satoさんが2段階も成長できたきっかけ

 

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