窪田朋一郎氏【日経平均3万円回復はいつ? 夏相場の展望を読む】(1) <相場観特集>
―米長期金利の動き乏しいなか、円安・ドル高環境は続くか―
週明け28日の東京市場では日経平均が朝方は高く始まったもののすぐに値を消す展開となった。2万9000円台近辺では依然として上値が重い。日経平均は4月中旬に3万円大台を割り込んでから、なかなか復帰できない状況が続いているが、果たして夏相場の展望は。また、ここ米長期金利の動向とは裏腹に円安方向に振れている為替動向も気になるところ。今後の株式市場の見通しについて松井証券の窪田朋一郎氏に、為替市場の見通しについて上田ハーローの山内俊哉氏にそれぞれ意見を聞いた。
●「8月末までレンジ相場続く、中小型株優位に」
窪田朋一郎氏(松井証券 シニアマーケットアナリスト)
週明けの株式市場は気迷いムードが続くなか、日経平均は狭いレンジで方向感なくもみ合う展開を強いられた。今週は日米の経済指標が相次いで開示され、週末2日には6月の米雇用統計発表が控えていることもあって、一方向に持ち高を傾けにくい相場環境となっている。目先的には、新型コロナワクチン普及による経済活動正常化への期待が強まる一方、新型コロナ変異種のデルタ株の広がりが気がかりな材料だ。
また、FRBによるテーパリングがどういったタイミングで実施されるのかはマーケットの最大の関心事となっている。次の一手を示すイベントとして、8月26~28日の日程で行われるジャクソンホール金融経済シンポジウムがカギを握っている可能性は高く、ここでのパウエルFRB議長の講演内容を確認するまでは全体相場の方向性は出にくいのではないかと考えている。現在、米国の消費事情はアフターコロナの色彩が極めて強く、ホテルやレストランは予約でいっぱい、ミュージカルチケットなどの価格もプレミアム化しているような状況だ。昨年のリベンジでサマーバケーションを楽しみたいというニーズが発現するなか、株式市場は市場参加者が減少し夏枯れの様相を呈しそうだ。外国人投資家不在(ヘッジファンドも含む)となれば、東京市場も閑散相場を免れないのではないか。
日経平均の推移はここから8月末までの約2ヵ月間のタームでみて、下値2万7500円から上値3万円のレンジ相場を想定している。しばらくは、主力大型株が本格的に上値を追える環境にはないとみている。物色対象としては、新興市場など個人投資家資金のウエートの高いマーケットで、中小型株中心の材料株相場が繰り広げられる公算が大きい。また、物色の方向性としては、米長期金利が現在のように落ち着いた動きが続くものと仮定した場合、ネット関連株などグロース系の銘柄に妙味が再燃する可能性がある。代表的なものではエムスリー <2413> 、サイバーエージェント <4751> といった個人投資家にも人気素地の高い銘柄に上値が見込まれる。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(くぼた・ともいちろう)
松井証券へ入社後、マーケティング部を経て現職。ネット証券草創期から株式を中心に相場をウォッチし続け、個人投資家の売買動向にも詳しい。
株探ニュース