明日の株式相場に向けて=「東京五輪」秒読みで本当に売りか
週明け5日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比185円安の2万8598円と反落した。前週末の米国株市場でNYダウが満を持して約2カ月ぶりに過去最高値を更新、主要株3指数が“青空圏突入”揃い踏みとなったにもかかわらず、こちらは朝方から売り優勢で下値をひたすら探る展開に。結局、この日の安値圏で着地しただけでなく、売買代金は2兆円を大きく割り込み1兆7000億円台で今年最低を更新するというオマケつき。彼我の差をまざまざと見せつけられる格好となった。
もちろん、185円安といっても、ソフトバンクグループ<9984>とファーストリテイリング<9983>の2銘柄だけで日経平均を147円あまり押し下げており、TOPIXの下げは7.3ポイントに過ぎないと言えばその通りで、額面通り受け取る必要はないと言いたいところだが、「個人投資家好みの中小型株も総じて冴えない。見た目以上に個人資金の回転が効いていない状態にある」(ネット証券マーケットアナリスト)という。
あと3週間弱で東京五輪が開催されるわけだが、悲しいことに中止もしくは延期しなかったことを売りの手掛かり材料とされてしまうところに、今の東京市場の誤算がある。マーケット関係者の視線が向いているのは東京都議選の結果。五輪開催に反対姿勢を示す立憲民主党などが議席を伸ばす結果となった。某エコノミストは「インドのデルタ株で騒いでいるが、コロナ変異株が一堂に会するような状況になったらどうするのかという負のシナリオを警戒せざるを得ない。これは外国人が非常に嫌うとされる政局混乱にも直結する」という。ただ一方では、「(今の相場の軟調は)ETFの分配金捻出に伴う売りを警戒した需給的かつ日柄的な要素であり、これを通過して五輪が開催される前後ではムードも変わっている可能性が高い」(中堅証券ストラテジスト)という声もある。東京五輪開催で相場は売りと決めつけるのは早計かもしれない。
個別では、個人投資家資金の勢いが失われている以上、材料株も深追いすると反動安がきついため用心が必要となる。基本的にリバウンド狙いで足腰の強い銘柄の押し目買いか、強い株につくにしても慎重に、巡航速度で株価を切り上げている銘柄に“静かに乗っていく”くらいの感じが好ましい。性急に結果を出そうと焦るほど深みにはまりやすい。
物色テーマとしてはサイバーセキュリティー関連の一角をマークしてみたい。米中冷戦下、中国側が仕掛けるサイバー攻撃などバーチャルウォーズ激化の様相が強まっている。東京五輪を控え日本も対岸の火事ではない。関連株の中では7月に入ってから急な調整を入れ、目先は75日移動平均線を足場にリバウンドが期待されるセラク<6199>。同社は豊富なIT人材を武器に強気の中期計画を進行中で、21年8月期は営業利益段階で前期比21%増の13億7000万円を見込むが上振れが濃厚だ。更に自然体で好チャートを形成しているのが「安心のみえる化」をキャッチフレーズに顧客のセキュリティー需要を取り込むセキュアヴェイル<3042>。そして、ボックスゾーン下限のもみ合いを上放れる気配をみせているのが、中小企業向けにセキュリティー製品の高い販売実績を持つNo.1<3562>で、これらの銘柄はやや中期視点でチェックしておく価値がありそうだ。
このほか、6月中旬に次世代パワー半導体関連としてマドを開けての急騰パフォーマンスを演じ、23日に1127円の高値をつけた後調整局面に移行したタムラ製作所<6768>が800円台半ばをターニングポイントに切り返す動き。いったんは大商いで需給相場の色を強めた同社株だけに引き続き目が離せない。信用取組で空売りを呼び込む形で売り残と買い残が拮抗するような展開となれば妙味が膨らむ。また、前週取り上げた芦森工業<3526>の動きも、商いはまだ薄いものの材料株受難の地合いにあって異彩を放つ強さだ。トヨタグループとの連携で、これまでにはなかった景色が見えてくる可能性を示唆しているのかどうか。同社の場合、2700円台の1株純資産はある意味圧巻であり、解散価値を約6割も下回る0.4倍台のPBRが今後の株価修正にどう反映されていくかを見極めていきたい。
あすのスケジュールでは、5月の家計調査、5月の毎月勤労統計速報値、6月の輸入車販売など。また、東証マザーズ市場にBCC<7376>が新規上場する。海外では、豪中銀の金融政策発表、5月のユーロ圏小売売上高、7月のZEW独景気予測指数、6月の米ISM非製造業景況感指数など。(銀)