【植木靖男の相場展望】 ─好業績、値頃感からの銘柄物色へ
「好業績、値頃感からの銘柄物色へ」
●吹き始めた新たな逆風、コロナ不安の後退待ちか
日経平均株価は本年2月を高値に徐々に上値を切り下げてきて、早くも5カ月が経過している。下げる度に個人の信用買いが入り抵抗を続けてきたが、ここへきて新たな逆風が吹き始めたことで、下値抵抗力は衰えつつあるかにみえる。
その背景には何があるのか。まず、これまで東京市場が追随してきた米国株をみると、やや下げが目立ってきたが、依然として揺らぎはみられない。ただ、金利の低下が際立っている。裏を返せば、景気回復のペースが鈍ってきたのだ。確かにGDPをみても2020年7-9月期、10-12月期、21年1-3月期と期ごとに成長ペースの鈍化がみられる。
一方、わが国は新型コロナウイルスの感染拡大や東京都への緊急事態宣言の再発令により景気回復は難しい、との見方が増えている。
さらに、株式需給面で信用の買い残がいまや3年ぶりの高水準という。単純に言えば、年初以降、買い玉はすべて損失になっている勘定だ。これまでの押し目を買っていれば何とかなる、といった風潮に逆風が吹き始めたといえよう。
また、米中の世界2大国の景気回復ペースの鈍化がみられるなか、世界の市場は大きなリスクにさらされつつある。これまでの世界の金融市場の景色が一変するリスクを抱えているのだ。
では、当面、東京市場は今後どう展開するとみればよいのか。
材料的には、コロナ感染拡大ペースと ワクチン接種率の上昇ペースとが激しく競い合う姿が浮き彫りになっている。伊藤忠総研によれば、1回でもワクチンを接種した割合が60%になれば、景気はコロナ以前に戻る、つまりノーマスクの世に戻るという。貯蓄率はいまや11.3%と高く、貯蓄額は膨張しているだけに、コロナ不安が遠のけば消費回復は早いだろう。現状の接種ペースなら8月中にも60%に達する可能性もあろう。
●株価回復の鍵を握る海外ファンド
当面、信用買い残の重荷に耐えながら、今後調整局面が日柄的に最終段階(もっとも株価下落ペースは厳しいが)を迎える。信用の投げ次第であるが、その後は株価回復局面に入るとみる。
まずは当面、5月13日の安値2万7448円(終値ベース)を巡って買い方、売り方の激しい攻防戦が演じられよう。そして、8月下旬~9月とみられる株価回復のきっかけは、次のステージにおける世界市場で最も魅力ある東京市場を目指して上陸してくるとみられる海外ファンドの動向が鍵となろう。
ところで、株価と五輪との関係では、五輪が終わったあと開催して良かったと思う人、失敗だと思う人、この世論の動向次第で政局になる可能性もあろう。すなわち、株価を左右することになる。衆院選を控えているだけに、リスク要因になり得るか。
さて、こうした調整局面下での物色対象をどう捉えるか。常識的にはカラ売りを飲み込んだ材料株、値頃な材料株が狙われやすいのではないか。
まず、カラ売りといえば前回も書いたタムラ製作所 <6768> 。時代性、材料性、罫線(チャート)からみていまの局面では適しているとみたい。
次に値頃感からみて日立造船 <7004> 。洋上風力発電設備の基礎部分の増産に加え、水素とCO2を合成してメタンガスを造る装置を東京ガス <9531> から受注したとの報道もあり、脱炭素、ESG関連だ。
また、フジクラ <5803> も妙味ありだ。業界内での安定力ではダントツとの評価。好業績に加え値頃感もある。
2021年7月9日 記
株探ニュース