増産合意でつまずくOPECプラス、生産拡大なければ需給ひっ迫は不可避か <コモディティ特集>

特集
2021年7月14日 13時30分

石油輸出国機構(OPEC)プラスの会合は延期を繰り返した後に中止となった。関係筋によると、中止の原因となったサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)の主張の溝はまだ埋まっておらず、少なくとも今週会合が再開される可能性は低いという。

一部の代表筋は7月時点の日量570万バレルの減産目標が8月以降も続くとの認識を示したが、果たして本当なのか確認するすべがない。OPECプラスの協力宣言(DoC)が有効であるという前提に立てば、おそらくは協調減産が続けられるのだろう。ただ、会合が中止となった後にOPECが公表したプレスリリースに知りたいことは何も記されておらず、連想を働かせる手がかりもない。暗中模索である。

●コロナ自粛のうっぷんを晴らすかのようなガソリン需要

このまま8月相場入りすれば需要超過が続いている可能性が高く、米国の需要拡大を踏まえれば供給不足が強まるだろう。米エネルギー情報局(EIA)が発表した週報によると、米国のガソリン需要は日量1000万バレルの大台を超え統計開始以来の過去最高水準となった。コロナで自制を強いられたうっぷんを晴らすように、人々はエネルギーを消費している。

中止となった今回の産油国会合では8~12月にかけて月次で日量40万バレル増産する案が示されたが、合計で日量200万バレルほどの減産目標の縮小で需要を埋め合わせることができるのか疑問である。新型コロナウイルスが変異したデルタ株が流行していることは需要の下振れリスクであるが、ワクチンによって感染拡大を防げていないとしても、重症化については明らかに抑制されており、コロナは死を意識させる疫病ではなくなった。今後さらに厄介な変異を繰り返さなければ、ワクチン接種者にとってコロナはただの風邪となるだろう。

●減産維持なら相場の一段高は不可避

感染者数の抑制を目指して、ワクチン先進国の政府がまた経済活動を犠牲にする可能性は低い。大規模な封鎖がなければ、需要回復を妨げる要因はほとんど見当たらない。UAEが主張したように減産枠を設定するためのベースラインを変更すると、他の産油国も増産する方向でベースラインの修正を要求し、全体として収集がつかなくなる恐れはあるが、需要は力強く回復しており、サウジは慎重すぎたのかもしれない。サウジがUAEに譲歩する余地はなかったのだろうか。

今後のOPECプラスの展開は読めないものの、日量570万バレルの減産目標が維持されるなら、 相場の一段高は不可避だろう。原油高によってOPECプラスに対する批判が強まる可能性が高く、そうなれば否が応でも妥協点を見出す動きが強まるのではないか。サウジとUAEの主張の食い違いは米国やロシアの介入によっても解消しておらず、かなり根が深そうだが、原油高が進めば世界中から圧力が強まると思われる。上がり続けるガソリン価格を目にするだけで苦痛である。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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