植草一秀の「金融変動水先案内」 -波乱含みの五輪と日本-

市況
2021年7月17日 8時30分

第62回 波乱含みの五輪と日本

●切り札でなく札付き

菅首相は「ワクチンが切り札」と言いますが、そうではないように思えます。たしかに為政者にとってワクチンは便利な存在でしょう。重篤化を抑制する効果があるならコロナリスクを減じることになる可能性が高いからです。しかし、ワクチン接種を受ける側からすると大きな不安が存在します。

政府は「ワクチンデマ」キャンペーンを展開しています。ワクチンに関するネガティブな情報はすべてデマであるかのような主張が流布されています。たしかに根拠が不明確な怪しい情報も流布されていますが、ワクチン接種を警戒するべきとする重要で正しい情報も存在します。その重要情報を覆い隠すように「ワクチンデマ」キャンペーンが展開されていることが、逆にワクチンリスクの信憑性を際立たせています。

7月2日時点でワクチン接種後の急死者が556人にも達したことが公表されています。これは厚労省審議会で報告されたものでデマではありません。厚労省はこの重大事実を丁寧に国民に知らせるべきですが、むしろこの事実が流布されることを妨害しているように見えます。

3300万人に接種した時点で556人がワクチン接種後に急死しています。政府は因果関係を否定しますが、普通の感覚なら強く警戒してあたりまえです。

●ワクチンより治療薬

同じ厚労省のワクチン副反応疑い報告で、2018-2019年シーズンの季節性インフルエンザワクチンの接種後の急死者が3名であったことが公表されています。接種回数5250万回で3人です。3300万人で556人の急死者が出ている新型コロナワクチンが強く警戒されて当然であると思われます。

副反応は2回目接種後に、より顕著であるとされていますので、今後、接種後の急死者数はさらに増えることが予想されます。若年の健常者がコロナ死する、重篤化する確率は極めて小さいので、高齢でない健常者がワクチンを接種するメリットはほとんどないと言ってよいでしょう。

接種後の急死リスクを負うのは市民。ワクチン接種が進み、コロナ騒動が抑制されるメリットを受けるのは為政者。市民にリスクを負わせて為政者が負担を減らすのがワクチンの基本構造であると思われます。

日本のコロナ死者は年間で約1万人。季節性インフルエンザと同水準です。この点を踏まえると日本のコロナ騒動は不自然に巨大すぎるように思われます。恐らくワクチン利権が強く影響しているのだと思われます。費用対効果で考えればワクチンより治療薬が重視されるべきです。今後はワクチンメーカーよりも治療薬メーカーを注目する必要がありそうです。

●新たな変異株の脅威

菅首相は「国民の命と健康が最優先」と述べていましたが、緊急事態宣言を発出するなかで五輪開催を強行する姿勢を示しています。前回の緊急事態宣言を解除した6月21日時点ですでに人流は再拡大に転じていました。それでも解除を強行したのは五輪の有観客開催を決定するためだったと思われます。

実際に有観客開催を決定しましたが、瞬く間に緊急事態宣言の再発出に追い込まれて、大半の会場で無観客開催にすることが決定されました。宮城県などが有観客開催を強行しようとしていますが、感染収束を重視する市民や自治体から猛烈な抗議を受けています。

感染急拡大の主因はL452R変異株が感染の中核に置き換わったことにあると見られています。3月にインドで確認された変異株で、日本は直ちに水際対策の厳格化が求められましたが、菅内閣が対応を始めたのは5月入り後でした。そのため、あっという間にL452Rが流入してしまったと思われます。

東京五輪で最も警戒されているのが南米由来のF490S変異株です。五輪の入国検疫体制はザルそのもので、間違いなく世界から変異株が日本国内に流入すると考えられます。感染力や毒性の上昇、さらにワクチン有効率の低下の方向に変異が進むことが警戒されています。日本の株価が本年2月16日以降、上値切り下げの下降相場に移行している最大の理由は、菅内閣のコロナ失政にあると考えられます。

●コロナの正体

ワクチン接種が進捗した国、地域で行動抑制緩和の動きが進捗し始めています。死者数の減少は確認されるものの、感染はむしろ再拡大している地域もあります。それにもかかわらず行動抑制が緩和されるのは、コロナを大騒ぎする必要性が低下したためとも考えられます。コロナを大騒ぎしたのはワクチンの販売促進のためだったように思われるのです。

ワクチン販売が終息すればコロナを大騒ぎする必要が低下します。このことで行動抑制が緩和され始めているのではないかと思われます。

この意味で、早晩、コロナ大騒動は峠を超えることになるでしょう。生活様式の正規化も進展するかも知れません。コロナに伴う経済停滞は徐々に縮小することになるでしょう。

しかし、このことはコロナをフォローの風として株価急上昇の恩恵を受けた企業にとって、風向きがアゲインストに転換することを意味します。2020年3月のコロナ暴落から激しいコロナ大暴騰相場が示現しました。この大暴騰相場にとってコロナ収束は逆風になる面があることを見落とせません。

日本では目の前に五輪がありますが、台風接近のリスクを含めて波乱要因がまだ山積しています。短期、中期、長期を区分して展望することが重要な局面と思われます。

(2021年7月16日記/次回は7月31日配信予定)

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