プラチナは売り一巡後に戻り歩調、景気の先行き懸念が圧迫要因に <コモディティ特集>

特集
2021年7月21日 13時30分

プラチナ(白金)の現物相場は、6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)のタカ派転換をきっかけに急落し、1月11日以来の安値1022ドルをつけたのち、株高や米国債の利回り低下による金堅調を受けて下げ一服となった。7月に入ると、景気回復期待などを背景に6月16日以来の高値1146ドルをつけたが、新型コロナウイルスのデルタ株の感染拡大でリスク回避の動きが出ると、上げ一服となった。

6月のFOMCで量的緩和の縮小(テーパリング)の議論が開始され、金融当局者のタカ派発言が目立つが、市場では年内のテーパリング開始が見込まれている。しかし、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が今月14日の議会証言で開始はまだ先との見方を示すと、米国債の利回りが低下した。6月の米消費者物価指数(CPI)が前年同月比5.4%上昇と2008年8月以来の大幅な伸びとなり、インフレに対する懸念が残るが、パウエル議長は価格上昇は一過性との見方を示した。また、同議長は27~28日の米FOMCでテーパリングの協議を進めるとしている。

一方、ニュージーランド(NZ)準備銀行とカナダ銀行がテーパリングを決定し、各国中銀の金融政策は転換点を迎えている。ただ、新型コロナウイルスのデルタ株の感染拡大で景気の先行き懸念が出ており、米FRBのテーパリング開始には労働市場の改善などを待つことになろう。プラチナは中長期の景気回復見通しが支援要因だが、新型コロナウイルスの感染状況を確認しながら値固めが続くとみられる。

●米インフラ投資法案とデルタ株の感染拡大

国際通貨基金(IMF)は、2021年の米国の成長率予測を7.0%に上方修正した。コロナ禍からの力強い回復が背景にある。また、バイデン米大統領のインフラ投資計画の成立も想定に織り込んだ。米下院は1日、7150億ドル規模のインフラ投資法案を221対201の賛成多数で可決した。米上院民主党トップのシューマー院内総務はインフラ投資法案について、上院で審議入りに向けた動議の採決を21日に実施するとしたが、財源問題がまとまらず、否決される可能性が出ている。ただ、超党派案がまとまった段階で、改めて投票を検討すればよいとの見方もある。法案の協議が進み、成立期待が高まると、リスク選好の動きが出るとみられる。

英国のイングランドで新型コロナウイルス対策の規制が19日にほぼ全面的に解除された。ワクチン接種が進んだことを受け、死者・重症者が減少した。ただ、デルタ株の感染拡大を受けて1日当たりの新規感染者数は半年ぶりに5万人を超えた。英政府は新型コロナウイルスとの共生路線を進めるとしており、今後の行方を確認したい。一方、米保健当局者は、ワクチン未接種者の死者が拡大していると警鐘を鳴らした。米ロサンゼルス郡は15日、マスク着用の義務化措置を再導入すると発表した。

デルタ株が広がったインドでは新規感染者が減少しているが、さらに変異したデルタプラス株が発見され、警戒感が強まっている。アジアではインドネシアの新規感染者数が6月以降、デルタ株の感染拡大を受けて急増し、7月に入り、5万人を超え、死者も急増した。制限措置を25日まで延長するとしている。ただ、検査や接触者追跡の体制が整っておらず、実際の犠牲者ははるかに多いとみられている。ワクチンの接種状況は富裕国と途上国で乖離しており、デルタ株の感染拡大に対する懸念が残る。

●プラチナETF残高は戻り場面で減少

プラチナETF(上場投信)残高は7月19日の米国で39.62トン(6月末39.93トン)、16日の英国で19.48トン(同19.58トン)、19日の南アフリカで15.71トン(同15.87トン)となった。戻り場面で投資資金が流出した。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、7月13日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは1万5361枚となり、6月22日の1万2940枚を底として拡大した。新規買い・買い戻しが入った。

プラチナの独自材料では、欧州委員会のハイブリッド車禁止案が伝えられた。欧州委員会は、温暖化ガス排出量の大幅削減に向けた包括案「フィット・フォー・55」を公表した。ガソリンやディーゼルなどの内燃機関エンジン車の新車販売を2035年に事実上禁止し、域外から輸入する炭素含有量の多い鉄鋼やアルミニウムなどに対する炭素税を導入する計画である。内燃機関廃止への過渡期でハイブリッド車が増加するとみられていたが、この案ではハイブリッド車も禁止される。この案が成立すると、自動車各社は戦略を見直す必要が出てくる。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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