「チャイナショック」の夏再来を意識?/後場の投資戦略
日経平均 : 27687.28 (+105.62)
TOPIX : 1922.43 (+2.78)
[後場の投資戦略]
前日は香港ハンセン指数や米ナスダック総合指数が反発し、日本でも半導体関連などで好決算が確認されたことで、本日の東京市場はひとまず買いが先行する展開となった。ただ、日経平均は27800円手前まで上昇したが、前場中ごろを過ぎると失速するなど、引き続き不安定な印象が拭えない。日足チャートを見ると、27800円手前に位置する200日移動平均線が上値を抑える格好だ。個別では決算発表銘柄の売買が活発な印象を受けるだろうが、ここまでの東証1部売買代金は1兆円あまりにとどまっている。新興市場ではマザーズ指数が+1.31%と3日ぶり反発。ただ、前日の下げ幅の大きさと比べると戻りは限定的だろう。本日新規上場したデリバリコンサル<9240>は公開価格を5割強上回る初値を付けたが、前日までのIPO(新規株式公開)ほどの強さは感じない。
東京都の新型コロナ新規感染者数は28日、3177人と過去最多を連日更新した。筆者の身の回りを見ると、仕事関係で在宅勤務の方が増えた一方、公共施設等の休業・利用制限はやや緩い印象を受けた。東京五輪開催と平仄を合わせてか、はたまた夏休み期間に入ったことを考慮してか(筆者も幼稚園児の息子を持つが)は定かでないが、緊急事態宣言の人流抑制効果は限られてしまうかもしれない。22~25日の4連休の感染状況が判明してくるのはこれからだろう。また、埼玉・千葉・神奈川の3県にも緊急事態宣言を発出することが検討されている。当面は感染状況に神経質にならざるを得ないだろう。
米国でも新型コロナ感染拡大への懸念が再び強まっているが、やはり中国の動向についても金融市場の関心は同じかそれ以上に高いようだ。中国の証券監督当局が28日夜、大手投資銀行の幹部と会合を開いたが、教育産業への締め付け強化を巡る懸念緩和が狙いとみられている。しかし、市場では中国株ADR(米国預託証券)の保有が大きいファンドリストなどが出回っており、中国の政治リスクや金融市場への影響がなお強く意識されていることがわかる。
一昨日の当欄で述べたとおり、中国共産党は7月に創立100周年を迎え、習近平指導部による体制強化が一段と強まる可能性がある。今回、中国企業の株価急落を招いたきっかけは教育産業に関する国務院の「通知」だ。近年、中国の教育産業は成長期待が高まっていたが、「政府の通知1本でビジネスモデルが根本から覆されるなら、中国企業の株価バリュエーションは大きく見直さなければならない」との悲鳴が上がる。
嫌でも思い起こされるのが2015年夏の「チャイナショック」だろう。当時と同様に、今回も人民元相場の動向が焦点になってくるとの見方が聞かれる。中国当局が人民元切り下げに動けば「それだけ同国経済が悪い」との見立てや、資金逃避の動きに拍車がかかる可能性があるためだ。実際、本日の人民元基準値は1ドル=6.4942元と、4月下旬以来およそ3カ月ぶりの元安水準になった。また、国際的な中国金融市場の存在感は15年の比ではない。株式のみならず、ハイイールド(低格付け)債市場などにも危機の火種はくすぶる。
先に米投資会社アルケゴス・キャピタル・マネジメントを巡り巨額の損失を計上した金融機関が多いだけに、今度こそ先んじて債権を回収しようとする向きが「クレジットイベント(清算事由)」のトリガーを引く可能性はアルケゴス以前より確実に高まっていると筆者は考えている。また、各国株式市場で個人投資家がレバレッジを高めて押し目買いを入れているのも気掛かりだ。東京市場でも信用買い残(東京・名古屋2市場、制度・一般信用合計)が21日申し込み時点で3兆5614億円、日経レバETF<1570>の純資産総額が28日時点で4071億円という高水準になっており、「対岸の火事」を決め込むわけにはいかないだろう。
さて、上海総合指数は5日ぶりに反発、香港ハンセン指数は続伸しているが、ともに朝高後は伸び悩んでいる印象。本日の東京都の新型コロナ新規感染者数なども気になるところであり、後場の日経平均は引き続き上値の重い展開になるとみておきたい。(小林大純)
《AK》