中国株急落の「本質」を再確認/後場の投資戦略

市況
2021年7月30日 12時21分

日経平均 : 27409.26 (-373.16)

TOPIX  : 1911.62 (-15.81)

[後場の投資戦略]

本日の日経平均は軟調な展開となり、下げ幅を500円近くに広げる場面もあった。このところ月末の波乱に警戒する市場参加者は多いが、本日も週末・月末要因が重なった影響はありそうだ。とはいえ、やはり国内で新型コロナ感染者数がなお増加傾向にあること、また中国株の先行き不安が拭えないことも大きいだろう。前日から決算発表件数が増え、好業績銘柄の一角に買いが入っているとはいえ、東証1部銘柄の8割近くが下落。ここまでの東証1部売買代金は1兆2000億円あまりで、閑散というほどではないが取引活発でもない。新興市場ではマザーズ指数が-2.26%と大幅反落。小型材料株や直近IPO(新規株式公開)銘柄の一角を除き、積極的な買いが入っている印象は乏しい。

さて、中国当局が教育産業の引き締めを巡る市場の懸念払しょくに動いたこともあり、前日の上海総合指数は5日ぶりの反発、香港ハンセン指数は続伸となった。セルサイドからは「教育産業以外への規制の広がりは限定的」との見方が多く出ており、個人投資家にもひとまず株価下落に歯止めがかかったことに安心する向きがあったようだ。しかし、中国企業の株価がこれで落ち着きを取り戻すとみるのは早計と言わざるを得ない。今回の株価急落の「本質」がどこにあるか、改めて確認しておきたい。

情報があふれかえる昨今、誤解する向きも多いが、本来投資とは単に「夢を買う」のでも「値動きに着目して売買する」のでもない(金融関係者や投資のために勉強を重ねた読者には釈迦に説法で大変恐縮である)。「当該資産の期待収益(キャッシュフロー)から妥当な価格を見積もり、現在価格がそれより割安なら買う」のである。機関投資家らは日々こうした分析を重ね、投資を行っている。

この「期待収益から妥当な価格を見積も」るという点が極めて重要である。繰り返し述べているが、今回、中国政府の通知1本で教育産業のビジネスモデルが根本から覆されてしまった。これにより機関投資家らに強く意識されたのは「中国における政策の予見可能性は極めて低いと言わざるを得ない」ということ、また「発生しうる損失があまりに大きい」ということだろう。これで期待収益や妥当な資産価格が正確に測れるだろうか。米アーク・インベストメント・マネジメントのキャシー・ウッド氏が中国ハイテク企業の見通しについて「バリュエーションがリセットされた」「恐らく(バリュエーションは)下がったままになるだろう」などと述べたのはまさにそういうことなのだ。

ゴールドマン・サックスのストラテジストが「顧客から中国株は『投資不可能』という言葉がよくささやかれるようになった」などと述べたことが海外メディアで報じられているが、中国国外の機関投資家が中国株への投資を本格的に再開するまでには相当な時間を要するものと考えられる。

一方、本日の上海株や香港株は売りが先行するも下げ渋る展開となっているが、相場を下支えしているのは株価水準を重視する傾向にある個人投資家の押し目買いだと考えられる。ただ、信用取引で買い向かう向きが多く、既にかなり高水準のレバレッジがかかっているとの話も伝わっている。当面は不安定な展開が続くことも想定しておく必要があるだろう。

後場の日経平均もそんな上海・香港株の動向睨みとなりそうだが、国内でも新型コロナ感染者数の増加が続き、また本日は決算発表の第1のピークを迎える。これらを見極めたいとの思惑が相場の重しとなり、戻りの鈍い展開になるとみておきたい。(小林大純)

《AK》

提供:フィスコ

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