明日の株式相場に向けて=ハイボラ相場に惑わされない
週明け2日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比497円高の2万7781円と急反発した。心機一転という言葉はあるが、週明けに合わせ名実ともに8月相場入りとなったこのタイミングで、自律反発というには少々イメージの異なるいきなり視界が開けたかのような戻り足をみせた。何のことはない日経平均は、新型コロナウイルスの国内感染急拡大や中国リスクでもたらされた前週末の下げ分(498円安)をほぼそのまま取り返す上昇。前週末の欧米株安を受けて週明けの投げを期待した売り方に「またこのパターンか」と言わしめる切り返しとなった。
市場関係者も「理由なき上昇」という声が強い。結局は先物によって支配されるレンジ相場であり、ボラティリティは高いものの潮の流れとは異なる波の上下動が続く。突っ込んだら買いを入れて、噴き上げたら売るというスタンスで臨む。これを繰り返すのが有力な投資手法ということになる。ただ、分かってはいても言うほど簡単ではないのも事実。足もとが悪い時は、更なる下値を想起させるそれなりの悪材料が喧伝されているからだ。『メディア論』で知られる文学者マクルーハンは「人は前を見ているつもりで、実はバックミラーを見ている」という言葉を残しているが、過去の軌跡を見ながら前方を見ている気になるのは、未来を覗くことができない人間に共通した“錯覚”であって、相場では特にそれが顕著だ。
「投資の方向性を間違えないためのひとつのヒントとしては日経平均を信用しないことだ」(ネット証券ストラテジスト)という声もある。確かに最近の日経平均は指数寄与度の高いソフトバンクグループ<9984>とファーストリテイリング<9983>の2銘柄に振り回されている感が強い。いずれも中国由来の悪材料が重荷となっており、押し目買いもままならない状況が続いている。しかし、全体相場の体感温度という点ではTOPIXが近い。決して強いとはいえないものの、5日・25日・75日移動平均線が収れんする1930前後の水準でもみ合っており、トレンドに崩れを感じさせない。外部環境のムードは確かによくないのだが、株価の実態はそれほど悪くはないということだ。やはり、企業の足もとの決算が好調であるということにも起因している。
ただし今の時期は、短期資金の視線は個別企業の決算発表に集中してしまうきらいがある。好決算だから買われるとは限らない。決算にリンクさせたギャップアップあるいはギャップダウン相場をいかにうまく乗りこなすか、という“ロデオ相場”で、よほど機動的に立ち回ることができなければ振り落とされて怪我をする。もちろん決算跨ぎの銘柄で勝負する必要性は全くない。決算発表期間中は、あえてワンテンポずらして好決算銘柄を選別していく方が賢明だ。いったん出尽くしで売られた銘柄の切り返し、もしくは不動の上昇トレンドを継続している強い銘柄をよく観察して、頃合いをみて乗り込む。
前週紹介したマクニカ・富士エレホールディングス<3132>や東京製鐵<5423>などはこれに該当する。これ以外では第1四半期が黒字転換した日鍛バルブ<6493>の押し目なども注目される。同社株は決算発表を受けいったん出尽くし売りに反落したが、ここは狙い目であろう。PER5倍、PBR0.3倍台、3.6%台の配当利回りを冷静に眺めた場合、現在の300円近辺で放置され続ける可能性は低いと思われる。また、決算発表後に強さを発揮し続けている株も注目に値する。代表的なものではメカニカルシールを手掛けるイーグル工業<6486>がある。こちらは株価1300円台だが、株価指標面はやはり割安で、きょうは3月下旬につけた年初来高値を更新し新波動入りを明示している。
このほか、きょうは海運株の上昇が異彩を放った。業種別上昇率で9%を超えるのは稀有な事例だが、それにもまして東証1部の売買代金1位と2位を海運大手2社、商船三井<9104>と日本郵船<9101>で占めるというのは滅多にないことだ。この2社のPERをみても分かる通り、足もとの収益変化が凄まじい。この流れに乗って筆頭株主にアクティビストを抱える乾汽船<9308>を改めてマークしてみたい。
あすのスケジュールでは7月のマネタリーベース、7月の都区部消費者物価指数など。海外では豪中銀の金融政策決定会合、6月の米製造業受注など。主要企業の決算発表では日本製鉄<5401>、住友化学<4005>、花王<4452>、Zホールディングス<4689>、カシオ計算機<6952>、三井物産<8031>、三菱商事<8058>、日本航空<9201>など。海外ではアリババ集団<BABA>の決算が注目される。(銀)