頼みの綱の新型コロナワクチン、接種支援で存在感高まる「ソリューション関連」 <株探トップ特集>

特集
2021年8月2日 19時30分

―新規感染者数は1日1万人を突破、待ったなしの状況で活躍本番―

東京オリンピックの熱戦が続くなか、新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。先月29日には、ついに全国の感染者数が1日当たり1万人を突破し、その後も増加を続けている。感染力の強い変異ウイルスの「デルタ株」が猛威を振るうなか、もはや緊急事態宣言の発令だけでは対応できないとの見方が大勢だ。頼みの綱は ワクチンだが、ここ加速度的に接種率が上がっているとはいえ、主要先進国に比較して後れを取っていることは否めない。こうしたなか、ワクチン接種をソリューションで支援する企業が相次いでいる。関連銘柄の動向を追った。

●2回接種、月内4割完了へ

デルタ株の猛威で感染者数が急激に増加しており、医療機関の新型コロナとの闘いが再び危険水域に入ることが懸念されている。こうしたなか、政府は新たに埼玉、千葉、神奈川の首都圏3県と大阪府に対して緊急事態宣言を発令した。東京都と沖縄県への宣言も31日まで延長されるが、人流抑制の効果については懐疑的な見方が支配的だ。ここにきては、ワクチン普及による景気回復期待も後退しており、企業の決算発表が本格化するなか日経平均株価も波乱含みの状況が続いている。

ただ、ワクチン接種率は供給量や副反応など多くの問題を抱えるものの着実に進んでいる。2日公表時点で1回以上の接種率は39.6%、2回接種完了者は29.1%になった。また、菅義偉首相は先月30日に行われた記者会見で、「8月下旬には、2回の接種を終えた方の割合が全ての国民の4割を超えるよう取り組む」と話しており、接種完了率を加速させる。直近では、ファイザーやモデルナに加え、いままで国内において使用されていなかったアストラゼネカのワクチンを公的な予防接種に加える方針だ。2回のワクチン接種により重症化率の抑制が期待されるが、ここにきては急激なデルタ株の感染拡大が不安を増幅させている。

●取りざたされる「ブースター接種」

世界に先駆けワクチン接種を進め感染者数が激減したイスラエルだが、デルタ株により急激に感染が再拡大している。このためイスラエル政府は、今月から2回のワクチン接種者のうち60歳以上の対象者に、3回目の接種を行うことがメディアを通じて伝わっている。3回目の接種、いわゆる「ブースター接種」により大幅に効果が引き上げられるという。また、ファイザーなどのワクチンの効果については半年程度という見方もあり、今後日本においても追加接種の議論が高まりそうだ。とはいえ、まずは足もと欧米に後れを取った接種率の拡大が最重要課題となる。

●NCS&A、第1四半期は大幅増益

1700を超える地方自治体や職域でのワクチン接種が加速するなか、さまざまな企業が予約システムをはじめソリューションで接種を支援している。サイボウズ <4776> は3月に北海道石狩市の新型コロナワクチン接種に関する総合情報管理システムの構築で、同社の業務アプリ開発プラットフォーム「kintone(キントーン)」が採用されたと発表。同システムは大塚商会 <4768> が構築しており、kintoneを活用し、接種予約の受け付けから接種情報の管理、関連システムへの情報連携までを一気通貫で行うもので注目が集まった。また、ソフト開発老舗のNCS&A <9709> [東証2]も接種が始まった当初から予約受付管理システム(コロナウイルスワクチン接種)を展開しており関心を集めた。当然のことながら、ワクチン接種支援業務は業績への寄与という点においては、さほど大きくはないが、国家的危機に見舞われた状況で、いち早く対応できる機動的な企業であることは評価するうえで重要なポイントだ。なお、NCS&Aは7月29日に第1四半期(4-6月)連結決算を発表。営業利益が前年同期比2倍の3億2000万円と大幅増益となった。

●来年以降をにらむ

ここ最近でも、多くのソリューション企業がワクチン接種に絡む業務に参入している。あるシステム企業では「導入した自治体は多いが、既に接種が始まって時間も経過しており、これから(受注が)伸びるかは不明」という。ただ、職域接種会場にシステムを提供する企業では「来年以降をにらんだ取り組みを進めている」と話しており、大規模なワクチン接種が今後数年間は続くとの見方をしているようだ。追加接種も取りざたされるなか、既に関連企業は次の展開を見据えて動き出している。

●トランスコスは接種証明で活躍期待

ワクチン接種を円滑に進めるための業務はさまざまだ。接種予約から会場運営まで、そのすそ野は広い。

アウトソーシングビジネス大手のトランス・コスモス <9715> も、新型コロナワクチン接種の予約システムなどを提供している。7月26日から、海外渡航のための新型コロナワクチン接種を公的に証明する接種証明書の交付が始まっているが、同社はこれに先駆け同月20日に、新型コロナワクチン接種証明書の交付申請書を事前にオンラインで作成できるチャットボットサービス「DEC Bot for Government」の提供開始を発表。接種証明書申請は、自治体窓口または郵送での申請となり、紙の申請書に手書きで記入するため記載ミスや窓口での確認、問い合わせが多数発生することが懸念されている。「DEC Bot for Government」を導入することで、チェック機能により手書きで発生しがちな記載不備や、記入漏れも防止できるという。接種証明書の交付が増加することが予想されるだけに、今後関心が高まる可能性もありそうだ。同社は、7月30日取引終了後、2022年3月期第1四半期(4-6月)の決算を発表し、純利益は38億8600万円だった。会計基準の変更により単純比較はできないが、前年同期の17億2200万円と比べ大幅に増加している。これを受け、きょうの株価は大幅高で年初来高値を更新した。なお、今期見通しについては引き続き非開示としている。

●シャノン、日本ラッドに妙味

シャノン <3976> [東証M]は、6月中旬に新型コロナワクチンの「職域接種」予約・現場管理システムを提供開始。同システムは、職域接種で必要な事前予約管理から、当日の受け付け・予約確認業務・事後データ確認までクラウド型のサービスで提供する。導入期間は最短1週間でできるという。同社が6月11日に発表した21年10月期第2四半期累計(20年11月~21年4月)の連結営業利益は前年同期比2.1倍の1億3400万円に急拡大し、通期計画の5800万円(前期比44.7%増)を既に上回った。

また、日本ラッド <4736> [JQ]は7月6日、東京都府中市がワクチン接種時の予約システムとして、同社が独自に開発したクリニック向けAI無人電話予約システム「トルテル」を一括採用し、大幅な予約業務負担削減を実現したと発表。同社は、きょう取引終了後に22年3月期第1四半期(4-6月)の決算を発表。売上高は6億9100万円(前年同期5億8600万円)、最終損益は3900万円の赤字(同1億3800万円の赤字)だった。今期から会計基準を変更したため単純比較はできないが、増収・最終赤字縮小で着地した。なお、通期見通しについては売上高32億円(前期比6.4%増)、純利益3500万円(前期1億7800万円の赤字)とする従来予想を据え置いた。

●「みえる通訳」で活躍期待のテリロジー

テリロジー <3356> [JQ]にも注目。同社の子会社テリロジーサービスウェアが開発及び販売を行う多言語映像通訳サービス「みえる通訳」が、6月21日時点で全国72自治体の新型コロナワクチン接種会場に採用され、導入数「300ID」を突破したと発表している。「みえる通訳」は13言語の通訳に加え、手話通訳も標準提供されている。在住外国人だけでなく、聴覚障害者とのコミュニケーションの際にも活用可能なことから多くの自治体に採用された。より多くの人が接種しやすい環境の構築が求められるなか、みえる通訳が活躍する機会は今後も増えそうだ。株価は安値圏での底ばい状況が続くが、導入自治体数の増加も予想されるだけに、活躍期待が高まる可能性もある。

そのほかでは、子会社ビーキャップが自治体(福岡県宮若市)ワクチン接種会場の運営に、自社の IoT/ビーコン技術が採用されたチェンジ <3962> 、新型コロナワクチン保管用冷凍庫内の温度を監視できる「IoT 温度監視システム」を手掛けるザインエレクトロニクス <6769> [JQ]などにも目を配っておきたい。また、6月16日にマザーズに上場した全研本社 <7371> [東証M]も、子会社サイシードが新型コロナウイルスワクチン接種専用予約管理システムを開発しており、既に多くの自治体で採用されているという。

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