為替週間見通し:ドルは下げ渋りか、米金融緩和策早期縮小の思惑強まる
【今週の概況】
■ドル強含み、7月米雇用統計は予想以上の改善を示す
今週のドル・円は強含み。米雇用統計の改善を受けて一時110円35銭まで上昇した。新型コロナウイルスデルタ株の感染拡大は米国景気の持続的な回復を妨げるとの懸念が高まり、週前半はリスク回避のドル売り・円買いが優勢となった。8月4日発表の7月ADP雇用統計(民間雇用者数)は市場予想を下回る雇用増にとどまったことから、ドル・円は5月26日以来となる108円72銭まで下落した。しかし、5日発表の新規失業保険申請件数は38.5万件にとどまったことや、米連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事が「7月雇用統計は非常に高い伸びを示すと予想する」との見方を伝えたことから、リスク回避的なドル売りは縮小し、ドル・円は109円台後半まで戻した。
6日のニューヨーク外為市場でドル・円は、一時110円35銭まで上昇した。この日発表された7月米雇用統計で、非農業部門雇用者数は前月比+94.3万人と市場予想を上回る増加を記録。失業率は6月の5.9%から5.4%まで低下したことから、米国景気の持続的な回復への期待が高まり、量的緩和策の早期縮小観測も広がったことからリスク選好的なドル買い・円売りが活発となった。ドル・円は110円23銭でこの週の取引を終えた。ドル・円の取引レンジ:108円72銭-110円35銭。
【来週の見通し】
■ドルは下げ渋りか、米金融緩和策早期縮小の思惑強まる
来週のドル・円は、下げ渋りか。7月27-28日に開催した連邦公開市場委員会(FOMC)で、雇用情勢の改善とインフレ高進で金融緩和を弱めるタイミングが近づいているとの見解が表明されたが、7月雇用統計の改善を受けて金融緩和策の縮小時期は多少早まる可能性がある。8月11日発表の7月消費者物価指数(CPI)とコア指数の上昇率は引き続き高水準と予想されており、市場予想と一致、または上回った場合、金融緩和縮小への根強い期待でリスク回避的なドル売りはさらに縮小する可能性がある。
また、欧州中央銀行(ECB)はパンデミック緊急購入プログラム(PEPP)を維持していること、英中央銀行による金融緩和策は長期化するとの見方が増えていることも意識されそうだ。NZ、カナダを除く主要中央銀行は現行の金融緩和策を長期間維持する方針を堅持しており、金利要因でドル安が進行する可能性は低いとみられる。
【米・7月消費者物価指数(CPI)】(11日発表予定)
11日発表の米7月消費者物価指数(CPI)は、前年比+5.3%、同コア指数は前年比+4.3%と予想されている。コア指数の上昇率は6月実績との比較で鈍化するものの、引き続き高水準となる見通し。予想に沿った内容ならドル売りは後退しそうだ。
【米・8月ミシガン大学消費者信頼感指数】(13日発表予定)
13日発表の米8月ミシガン大学消費者信頼感指数は81.1と、7月の81.2から若干低下する見込み。新型コロナウイルス変異株の感染拡大が警戒されているが、市場予想を上回った場合、長期金利高・ドル高の要因となろう。
予想レンジ:108円50銭-111円00銭
《FA》