日米で広がる「需給面の不安」/後場の投資戦略

市況
2021年8月13日 12時23分

日経平均 : 28043.01 (+27.99)

TOPIX  : 1958.36 (+4.81)

[後場の投資戦略]

本日の日経平均は前日終値を挟み、やや狭いレンジでもみ合う展開となっている。日足チャートを見ると、今週に入って上値切り下げのもち合いレンジ上限、それに25日移動平均線を上抜けてきたが、前日に長めの陰線を付けたことで戻りの鈍さが強く印象付けられてしまったようだ。引き続き好業績銘柄や中小型の海運株などに物色意欲の根強さが見られるものの、東証1部全体としては値下がり銘柄の方がやや多い。リクルートHDが日経平均の押し上げに寄与する一方、マイクロンの投資判断引き下げに絡んでDRAMの需給ピークアウトが指摘され、値がさの半導体関連株が下落していることが重しとなっている。ここまでの東証1部売買代金は1兆2000億円あまりで前日並み。

マザーズ指数は-0.85%と続落。週前半には5日移動平均線を上抜けて戻りを試す動きも見られたが、やはり戻り売り圧力が強く、買いも続きにくい。本日は決算発表のメルカリ<4385>が大幅安となっていることもマザーズ指数を押し下げている。

さて、7月の米PPIは前月比で1.0%上昇し、市場予想(0.6%程度の上昇)を上回った。最終価格への転嫁が遅れており、企業のマージン縮小を懸念する声も出ているが、米メディアによれば一時的な物価上昇を前提に持ち高調整することで対応しようとしているファンドマネージャーが多いという。市場動向を見ても景気敏感株とハイテク株の循環的な物色が続いており、根強い投資意欲とあふれる緩和マネーが米株高を支えていることがわかる。

もっとも、市場の声には(物価高騰と不況が同時進行する)スタグフレーションへの警戒など、先行きを不安視するものが少しずつ増えてきた感がある。これらのなかでも注目しておきたいのが、米株高を支える「流動性」に関する米メディアの指摘だ。流動性指標の1つとされる、マネーサプライ(M2、通貨供給量)伸び率から名目国内総生産(GDP)伸び率を差し引いた数値が2018年以来のマイナスに転じているという。金融緩和の縮小を前にして、既に景気拡大下で利用可能なマネーが急激に減っているといい、過去に弱気相場入りのシグナルとして機能したこともあって警戒を促す内容となっている。NYダウなどは連日の高値更新でさすがに上値が限られるようになってきたが、緩和マネーの押し上げ効果が低減してきたことも影響している可能性がある。

やはり戻りの鈍さが意識されつつある日本株でも、株式投資家の買い持ちが既に高水準となっているのは度々当欄で述べているとおり。来週初めには日経平均の年初来高値(30714.52円、2月16日取引時間中)の信用期日を通過し、株式需給の改善に期待する声もあるが、むしろ2月以降に信用買い残が積み上がっていったことを考慮すると、期待ほど需給が改善するか慎重に見極める必要があるだろう。

米長期金利の反発に伴う海外ファンド勢の先物買い戻しも期待していたほど広がりが見られない。前日の先物手口では外資系証券が東証株価指数(TOPIX)先物をやや買い越していたものの、一昨日ほど買いに傾いていなかった。一方でみずほ証券がTOPIX先物を売り越し。このところ日系証券の断続的な先物売りが観測されるのもやや気掛かりだ。

来週も日本の4-6月期国内総生産(GDP)など国内外の重要経済指標の発表が多いほか、7月開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録が公表される。一方、本日で国内企業の4-6月期決算発表がおおむね終わり、決算に基づき投資判断や目標株価を見直す動きが増えてきた。好業績銘柄の買い直しなどに期待しつつも、株式相場全体としては上値の重い展開が続きそうだ。(小林大純)

《AK》

提供:フィスコ

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