横山利香「令和時代の稼ぎたい人の超実践! 株式投資術」― (9) 株価に業績は織り込まれているのか、チャートで判定しよう【2】
◆株価の異変は日頃のトレンド分析が教えてくれる
まず注目している銘柄の決算発表日を確認し、前回の決算発表の内容とそれ以降の株価の動きをチャートでみていきます。
今回は、個人投資家の注目度が高かった銘柄の一つであるヒューマンクリエイションホールディングス <7361> [東証M]が8月10日に発表した21年9月期第3四半期決算を例に、具体的にみていきましょう。前回の決算発表がいつであったかをまずは確認しましょう。個別銘柄のページにある真ん中のタブの「ニュース」をクリックしたら、その下にある「決算速報」のタブをクリックします。すると、前回の決算発表は5月10日だったことがわかります(図1)。
図1 HCH <7361> [東証M] ニュース:「決算速報」
では、どのような決算内容だったのかを確認するために、決算速報の「21/05/10 15:00HCH、上期経常は2.6億円で着地」をクリックしてみましょう。発表された決算は、21年9月期第2四半期決算のものでした(図2)。この決算内容を株価はすでに織り込んでいたのか、そして、投資家に好感されたのか、それとも嫌気されたのかを客観的に判断するために、タブの左側にある「チャート」をクリックして、株価の動きを確認してみましょう。デフォルトでは日足チャートが表示されますので、5月の決算発表日以降の株価の動きをみてみましょう。
図2 HCH <7361> [東証M] 決算速報 21年9月期第2四半期
図3 HCH <7361> [東証M] 日足チャート
第2四半期決算の発表翌日である5月11日に株価は2724円まで上昇した後、いったん上げ渋りますが、2400円台前半での底堅さを確認すると5月21日から騰勢を強め始めます。そして、8月前半に発表が見込まれる第3四半期決算に向けた期待感を背景に買いを集めて高値を更新し、7月20日に4555円の上場来高値をつけます。このように株価が高値を更新する強い動きを見せると、「次の業績はそんなによいのか?」「ここで買っておかないと置いていかれる」などと期待や焦りが高まっても不思議ではありません。
しかし、株価はその後急落します。高値圏にある株価がいったん下落に転じると売りが売りを呼んでしまう、その典型例でもあるとも言えます。この株価下落を「業績が順調そうなのに決算前に安くなった」と好機と判断するのか、それとも「業績への懸念から決算をまたがない投資家が多いのかも」と判断するのかは人それぞれです。
しかし、前回「株価に業績は織り込まれているのか、チャートで判定しよう【1】」で解説した通り、ヒューマンクリエイションホールディングスも日足をつぶさに見ると、7月30日に5日移動平均線と25日移動平均線がデッドクロスを示現しています。あれこれ理由を考えるよりも、機械的に「前回の決算発表後に続いた上昇トレンドが短期的には終了した」と判断してよかった局面でしょう。
株価はその後、ずるずると下落を続け、決算発表を間近に控えた8月6日には75日移動平均線を下回る水準まで値下がりしました。このように株価下落が続くと、「ある程度安くなった(割安になった)から、このまま決算発表を待ってから買えばいい」と買いのタイミングをうかがっていた個人投資家が増えていた可能性もあります。では、その見方は正しかったのでしょうか。結果論ではありますが、8月10日の決算内容は期待外れと失望した投資家が多かったようです。翌8月11日に株価は窓を空けて下落しています。
今回の例ではあくまでも短期的な決算内容と株価の動きをみてきましたが、再び同社の業績が好調であると判断されれば株価は上昇に転じるでしょうから、業績と株価の推移の確認を続けていくことが大切です。
一般論ではありますが、個人投資家の注目が集まりそうな中小型株では、株価への期待値が高まって高値圏で推移するような場合、そこそこの決算が出ても失望売りが出やすくなる傾向にあります。決算発表でしか業績を確認する術がないわけですから、今回のように株価が決算発表とは関係なく7月以降下落してきた理由を考えるのは時間のムダでしかなく、私たち個人投資家としてはトレンド分析を心掛け、株価に何か異変が生じてないかを確認し続けることが重要でしょう。
反対に、業績への懸念で株価が売られ続けていたのに、蓋を開けてみたら好決算だったという場合には買いが殺到することになります。「あーあ、買っておけばよかった」と後悔するかもしれませんが、悲壮感が漂うなかで買い向かうには、深い分析を踏まえて確信を抱いていなければ無理でしょうし、なかなか勇気もいります。そういう場合は割り切って、決算内容を確認してから買えばよいのです。株価は上がれば下がりますから、必ずチャンスは訪れるのです。
自分がよいと思っても、他の投資家がよいと思ってくれなければその企業の株を買ってはくれません。他の投資家がどのような売買を行っているのかを株価のトレンドで確認し、トレンドに即した売買を心掛けていきたいものですね。
株探ニュース