レーザーテック最高値で注目、EUV関連株が半導体“新時代”を疾走する <株探トップ特集>

特集
2021年9月2日 19時30分

―半導体微細化の最先端、露光装置は海外企業独占も周辺装置や部材は日本勢が優位―

レーザーテック <6920> の株価が9月1日に上場来高値を更新した。8月6日に発表した22年6月期の業績予想が営業利益270億円(前期比3.6%増)と増益ながら市場の期待に届かなかったため、株価は6日終値2万1640円から20日には安値1万9050円をつけるまで下落した。先端半導体に関連する投資活発化の恩恵を受ける銘柄との位置づけに変わりはないものの、成長の踊り場に突入したとの見方が広がったためだった。ただ、EUV(極端紫外線)関連分野での競争力の高さを背景に成長が継続するとの見方が根強く、株価は短期の調整のみで反発し、足もとの株価上昇につながっている。

同社の成長を牽引するとみられるEUV対応の欠陥検査装置だが、今期は利益率が低い初期ロットが中心で、これが増益率が市場の期待に届かなかった要因の一つとなっている。しかし、来期以降はこうした商品構成の悪化は一巡する見通し。また、ここに来て関連市場も急拡大しており、EUV関連企業のビジネスチャンスは急速に広がっている。

●なぜEUV関連市場は拡大が見込まれるのか

EUVとは、 半導体の微細化技術で用いられる露光光源の一種。半導体製造工程のなかで、EUV露光装置を用いて回路をチップ上に転写する時に用いられる。

従来の露光光源の主流は、ArF(フッ化アルゴン)という193nm(ナノメートル、ナノは10億分の1メートル)の光源を用いているが、EUV露光の波長は13.5nmと短くなり、その分より微細な加工ができるようになる。

現在の最先端半導体の回路線幅は5nmまで進んでいるが、EUV露光では、理論上は2nmまで細くできるとされている。線幅が細くなれば情報量を増やすことができ、同じ情報量なら小型化できるようになる。また、工程の簡略化などによりマルチパターニング(微細なパターンを形成するために複数回の露光を繰り返すこと)などで課題となっていた歩留まりの向上も期待できる。そのため、半導体各社はEUVに関する投資を積極化しているのだ。

●ASMLの上方修正で注目度アップ

半導体微細化のロードマップ上の次世代技術として、1990年代には既に注目されていたEUVだが、光源の出力不足、マスクやレンズの素材開発などさまざまな課題があり、その活用は遅れていた。ただ、2019年に一部の量産ラインで用いられたことから、徐々に普及が広がっており、今後更に大きな市場へと成長が見込まれている。

特に、ここ直近で株式市場においてEUVへの注目が高まっているのは、現在唯一のEUV露光装置メーカーであるオランダASMLホールディングADR <ASML> 社が7月21日に21年12月期の売上高予想を上方修正したことがきっかけといえる。ASML製品に対応するレーザーテックのEUV対応マスク検査装置「ACTIS」は今期から売上高への計上が本格化する予定だが、前述のように、今期は不具合対応などで利益率が低い初期ロットが中心で、商品構成が悪化するため粗利益を圧迫する。ただ、23年6月期以降は粗利益の悪化に歯止めが掛かり、再び高い増益率となることが期待されている。

●EUV対応で国内メーカーには競争力

現在、EUV露光装置を製造できるのは世界でもASMLだけだが、EUV導入により、光源だけでなく露光手法や使用する部材などが従来とは大きく変化するため、周辺装置や部材メーカーにもビジネスチャンス拡大が期待できる。波長が極端に短くなるため、従来の露光で用いられていた透過型のフォトマスクではなく、反射型と呼ばれるタイプが必要となるほか、露光用のレンズも反射型となる。半導体感光材料(レジスト)などの薬液もEUV対応が必要となるほか、マスクの欠陥検査装置も高性能が要求される。

こうしたなか、国内メーカーはEUV対応が進んでいるところが多く、今後競争力を発揮しよう。

●EUV対応レジストメーカーなどにビジネスチャンス

東京エレクトロン <8035> は、塗布現像装置で9割弱の世界シェアを誇るが、EUV露光装置向けではシェア100%を占める。また、ASMLとベルギーの研究機関であるアイメックが共同運営する研究所に次世代塗布現像装置を提供しており、更なる競争力アップに余念がない。

三井化学 <4183> は、ASMLとEUVペリクル(フォトマスク用防塵カバー)を開発し商業生産を開始した。波長の短いEUVはさまざまな物に吸収されるため、レンズは透過型ではなく反射型が必要で、また空気中の成分にさえ吸収されるため真空条件下での露光も必要となる。露光の過程で高額なマスクの劣化は避けられないが、コスト低減の観点からもペリクルによる寿命延長が求められており、同社への引き合いも強まろう。

東洋合成工業 <4970> [JQ]は、レジストの大手の一角。ArF用、EUV用レジストを合わせた需要量は20~26年に2.1倍に拡大するとの予測もあり、なかでもEUV用は急成長が見込まれている。同社のほかにもレジストでは、JSR <4185> 、東京応化工業 <4186> 、大阪有機化学工業 <4187> なども注目されている。

HOYA <7741> は、半導体ウェハーに回路を描く原板となるマスクブランクスの世界シェアトップで、第1四半期(4-6月)ではEUV用が前年同期比70%増と高成長している。同じくEUV用マスクブランクスを手掛けるAGC <5201> も足もとで出荷が増えていることから、EUVマスクブランクスの供給体制の大幅増強に取り組んでおり、22年から増産体制をスタートさせる予定だ。

このほか、レーザーテックの検査装置向けにEUV光源を提供するウシオ電機 <6925> や、EUV露光装置の開発からは撤退したものの、EUV関連コンポーネントが好調なニコン <7731> 、EUV露光計測装置を手掛けるキヤノン <7751> にも注目したい。

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