横山利香「令和時代の稼ぎたい人の超実践! 株式投資術」―(10)信用残や全体の地合いを確認して、株価の動きを分析しよう
◆個人は全体相場の地合いは無視できない
さらに長い期間の信用残の推移を知りたい場合には、銘柄欄の「時系列」のタブをクリックして、「時系列株価」の中の「週次信用残」で確認できます(図5)。一番右端の「信用倍率」をみると、「8/27」は「0.06」とあります。「8/20」が「0.11」ですから、信用倍率はより0に近づいていることがわかります。
図5 ビックカメラ <3048> 時系列の「週次信用残」
信用取引でも通常は株を買う取引の方が一般的ですので、信用買い残が売り残を上回ることが多く、信用倍率も1倍を超えて数倍になるケースは珍しくありません。しかし、株価のさらなる下落が見込まれる場合には、信用買い残が減少する一方で信用売り残が増えて、売り残と買い残が拮抗して信用倍率が1倍に近づくことがあります。あるいは信用売り残が買い残を上回って1倍を割り込むこともあります。こうした状態を「好取組」と呼びます。
信用売りの取引ではいずれ買い戻しを行わなければなりません。信用買い残と売り残が拮抗している、あるいは売り残が買い残を上回っている「好取組」の状態は、売り方の買い戻しによる「踏み上げ」が期待されて、短期投資家を中心に注目を集めやすくなる傾向があります。とはいえ、「好取組」だからといって株価が中長期的に値上がりするかといえば、そうではありません。信用売りが増える局面では、短期的に株価は割高だと判断している投資家も数多く存在しているわけで、踏み上げで株価が押し上げられる局面があっても、実態を評価されて買われているとは限りません。相場を動かしているのは、需給に注目した投資家による綱引きが中心であり、彼らの視線は短期的な利益の獲得に偏りがちです。
また、信用取引では、個別銘柄の信用残の推移に加えて、全体相場の信用残の動向も確認しておくことが大切です。結局、株式市場の地合いが悪化すれば売りが沸いてくるので、好取組だからといってうかつに手を出すと痛い目にあいかねません。全体相場の前では個人投資家にできることは少ないということです。
では、どのようにして全体相場の地合いを確認するのかといえば、信用取引を行っている投資家の損益状況を表す「信用評価損益率」を参考にしましょう。信用評価損益率は信用取引残高の買い残高に対する評価損益の割合のことを指し、東京証券取引所が毎週第3営業日に公表している「信用取引現在高」の数値を元に、日本経済新聞社が算出しています。
信用評価損益率は通常マイナスで推移し、その数値がマイナス5%程度まで改善すると多くの投資家が儲かっている「ウハウハの状態=地合いが良い」とされ、マイナス5%を上回って「0%」に近づくと株価は天井圏にあるとされます。
反対に「マイナス10%」を超えてくると損失が拡大し始め、「マイナス20%」に近づくといよいよ底打ちが近いといわれています。一般にこの「マイナス20%」は、これを下回ると追証(追加証拠金)を迫られる水準とされています。
信用取引はいずれ決済しなければなりませんし、レバレッジをかけて取引している場合には、株価下落による損失の大きさ次第では追証が発生する場合もあります。どんなに業績がよい銘柄であっても地合いが悪化すれば利益確定売りが出やすくなりますから、全体相場の動向は確認しておいて損はありません。
株価は上がれば、いずれは下がります。個別銘柄の業績次第では全体相場に逆行する時もあるかもしれませんが、全体地合いが悪化すれば株価が下落することがほとんどでしょう。注目している個別銘柄の信用残の推移とともに、株価の動向はチャートで確認しなければなりません。さらに、全体相場の地合いが悪化すれば一個人投資家では大きな流れに逆らってどうにかなるものでもありません。面倒かもしれませんが、株式市場の全体の地合いも信用評価損益率を参考にして確認を行いましょう。個別銘柄を巡る需給を確認した上で、トレンドに即した売買を行っていきたいものですね。
株探ニュース