馬渕治好氏【急騰モード突入の日経平均、上値追いどこまで】(1) <相場観特集>
―政局不安から一転して“変化”を買う相場に様変わり―
週明け6日の東京株式市場は日経平均が大幅続伸、一時570円以上の上昇で2万9700円台まで買われる場面があった。8月は上値の重い展開を強いられていたが、最終週に地合いが一変し、そこから2週間あまりで日経平均は3万円大台を視界に入れる強力な上げ潮相場に突入している。自民党総裁選や衆院総選挙に絡み思惑が錯綜するなか、ここからのマーケットの見通しについて、第一線で活躍する市場関係者2人に意見を聞いた。
●「年内3万円超えも目先は上昇一服か」
馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表)
日経平均は前週に大方の予想を大きく上回る急上昇をみせたが、きょうもその余勢を駆っている。この背景として国内政治の変化を挙げる声がある。次期総裁選で菅首相が不出馬を表明し、自民党総裁が代わることが確実となったが、新総裁の下での新たな経済対策への思惑を抱く向きがあるようだ。そして、今回の総裁選を経て“選挙の顔”が変わることで、その後の総選挙において自民・公明の連立与党が大敗を喫する可能性が低くなったと解釈する投資家もいるようだ。
ただ、前週からきょうまでの急騰劇はショートポジションを積み上げていたファンドの買い戻しが作用した影響が大きいとみられる。いわゆる踏み上げ相場の色が強い。現在は人工知能(AI)を活用したアルゴリズム売買が活発で、先物を絡め上にも下にも行き過ぎるきらいがあるが、そのバイアスによる上げが目先一巡する可能性が高いとみている。当面はその反動から押し目を形成しやすくなると思われるが、大勢トレンドは上向きであり下押す場面では買い向かって正解であろう。
自民党総裁選は誰が勝利するか予想しにくい段階にあり、本来であれば相場が政治を織り込むのは、新総裁が決まって総選挙通過後の政策を見極めてということになるのだが、やや先走った感が否めない。しかし、先行き明るい材料がもう一つある。それは日本企業の足もとの業績が好調なことだ。11月初旬にも出揃う21年7-9月期決算は極めて好内容となることが予想され、4~6月期同様に通期予想を上方修正する企業が相次ぐ公算が大きい。したがって、いったん日経平均が下振れすることになっても決算発表時期には買い直される展開が見込まれる。
向こう1ヵ月の日経平均のレンジとしては下値が2万8500円近辺まで調整する余地があると思われる。上値はすぐに3万円大台回復を果たすとはみていないが、焦らず押し目狙いで臨みたい。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(まぶち・はるよし)
1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米MIT修士課程修了。米国CFA(証券アナリスト)。マスコミ出演は多数。最新の書籍は「コロナ後を生き抜く 通説に惑わされない投資と思考法」(金融財政事情研究会)。日本経済新聞夕刊のコラム「十字路」の執筆陣のひとり。
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