明日の株式相場に向けて=AI・5Gなどにテーマ物色の芽
きょう(15日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比158円安の3万511円と反落。下げ幅だけをみると大したことはなく、前日に日経平均が31年ぶりの高値を更新した後だけに、目先達成感からの上昇一服という捉え方も可能だ。しかし、値下がり銘柄数は全体の8割を占め、前引け段階では9割に達していた。業種別でみても33業種中で高かったのは海運1業種のみであった。ボラティリティが高まるなか、AI取引の影響があるのかもしれないが、全体指数と地合いがミスマッチしている印象を受ける。この点は米国株市場も同様だ。短期トレードの観点からは、保有銘柄はなるべく全体指数の影響を受けにくいものに絞り込んで、ここはいったんキャッシュポジションを高めておくのが正解といえそうだ。仮に相場が崩れなくても、来週のFOMC通過後に地合いを確認しながら再度インするのがリスクを鑑みて正しい選択肢といえる。
注目された8月の米消費者物価指数(CPI)の伸び率はほぼ市場予想に沿った内容だったが、コアも含めるとコンセンサスを下回ったといってよい。これをどう判断するかといえば、緩和縮小ペースが早まるとの懸念が後退するわけであるから、今の米国株市場にはプラスに働く。事実、朝方はNYダウ、ナスダック総合指数ともに高く始まった。しかし、その後はあっという間に値を消してしまった。「朝方はニュースヘッドラインに反応したAIアルゴリズムの買いでダウは上昇したが、そののちに景気鈍化への警戒感やテーパリングは予定通り年内開始の公算が大きいという思惑が強まり軟化した」(ネット証券アナリスト)という。今回CPIが跳ね上がるような結果であれば、インフレ懸念が高まり金融引き締めに向けた思惑から米株市場は大きく下げた可能性が高い。しかし、そうでなかったにもかかわらず、主要指数は揃って下値模索を続けたのだから、これはやはり変調といえる。
きょうは、前場取引時間中に発表された中国の経済指標が軒並み悪かった。8月の小売売上高は市場予想の6.3%増に対し2.5%増と驚くほど弱く、中国景気のピークアウトが現実のものとして浮き彫りになった。その割に上海総合指数はしっかりしているが、「これは中国当局のPKO(株価下支え)による部分が大きく、実態は香港ハンセン指数の動向に如実に反映されている」(前出のアナリスト)と指摘される。確かに7月下旬以降の両指数の波動は全く異なっている。
とりわけ、今中国では不動産大手の恒大集団の過大債務を巡る混乱が大きく顕在化している。2008年のリーマン・ショックの元凶となったサブプライム問題にこれを重ね合わせる市場関係者もいる。「恒大の負債だけでも日本円にして30兆円といわれるように巨額だが、背景を考えると中国には他にも負債に喘ぐ不動産会社がいくつもありそうだ」(中堅証券ストラテジスト)という声もあり、これをどう見るかは人によって異なるとは思うが、中国政府が何とかするだろうと高を括るのは甘いかもしれない。少なくとも恒大絡みのニュースからは目を離さないようにしておく必要がある。
この中国版サブプライムショックが杞憂であったとしても、米中の経済実勢がピークアウトしている状況にあって、商品市況の高騰など川上インフレは看過できない。FRBをはじめ世界の中央銀行が金融緩和の蛇口を締める必要性に迫られた場合、株式市場は当然その影響を被ることになる。したがって、今はまだ悲観に傾く段階ではないとしても、スタグフレーションもしくはそれに該当するようなワードがメディアに踊り始めたら、そこは機動的にポジションを畳む勇気も必要となる。
きょうは個別銘柄ではヘッドウォータース<4011>がストップ高となったが、AI関連に散発的にではあるが人気化するケースが相次いでいる。ユビキタス AIコーポレーション<3858>やヴィンクス<3784>などをマークしたい。また、5G関連も大真空<6962>が大きく水準を切り上げ、アンリツ<6754>が目立たないなかで15連騰を記録するなど、静かに資金が流れ込んでいる。類似企業としてリバーエレテック<6666>やアルチザネットワークス<6778>に目を配っておきたい。
あすのスケジュールでは、8月の貿易統計が朝方取引開始前に開示される。午後取引時間中には8月の首都圏新規マンション販売が発表される。海外では、7月のユーロ圏貿易収支、9月の米フィラデルフィア連銀製造業景況指数、8月の米小売売上高、7月の米企業在庫、7月の対米証券投資など。なお、マレーシア市場は休場となる。(銀)