現物株担保の信用買いでも、コロナ暴落で「追証なし」の技
第30-2回 強い投資家はどんな人~日本株投資家3900人調査で解明!(ケーススタディ編)
登場する銘柄
湘南トレーダーさん(ハンドルネーム・60代・男性・専業投資家) | |||
日本株運用資産 | 5800万円 | ||
累積投資元本 | 1000万円 | ||
累積リターン | 5000万円 | ||
投資スタイル | ファンダメンタルズ、需給を重視 | ||
主な保有期間 | 中期(1カ月~1年) | ||
保有銘柄数 | 40~60銘柄 | ||
投資開始年 | 2013年7月 | ||
他の投資対象 | 賃貸不動産 | ||
自身の性格分析 | 自らの創意工夫・判断が好き | ||
好きな言葉 | 「臥薪嘗胆」「大胆かつ繊細」 | ||
湘南トレーダーさんとは: 2011年にシステム系の上場企業を退職し、13年7月に元手300万円から株式投資を始めた。 最初はバイオ株やIPOで失敗が重なったが、「売買日記」を活用してノウハウを積み上げてきた。 結果、勝ちパターンとなったのが、ファンダメンタルズ分析を軸にした値がさ株投資。 あらゆる視点で下値リスクを軽減するのが特徴で、1カ月以上の中期で安定的にリターンを 稼げるようになった。累計リターンは5000万円。 今後はテンバガーを狙える銘柄への長期投資にもチャレンジしたいという。 |
前回記事「高価な『値がさ株』狙いに戦略転換したら資産6倍になった技」を読む
値がさ株投資によって累計元本1000万円を5800万円に増やした湘南トレーダーさん(ハンドルネーム)の2回目は、保有する現物株を担保にした信用取引に焦点をあてる。
湘南トレーダーさんの手元の金融資産は、現物株で持つ5800万円相当だが、投資額は1億円になる。手元の資産より大きい金額の投資を可能にしているのが信用取引だ。
保有する現物株の5800万円を担保にして、取引資金を調達し、足元の信用取引での取引金額は4200万円相当になる。
湘南トレーダーさんのように、保有する現物株を担保に最低投資金額が大きくなる値がさ株を信用取引するのは、どうしても「危ない」という印象を持ってしまう。なぜなら、現物株を担保にすると、信用取引の生命線といえる「委託保証金」が減少する機会が増えるためだ。
委託保証金が減るのは、まず信用ポジションの評価損や決済損が発生した場合だ。加えて湘南トレーダーさんのように現物株を保証金にしていると、その含み損が減少要因になる。さらに決済損の処理で現金が足りないと「不足金」が発生するリスクもある。
これらを踏まえ、湘南トレーダーさんは主に3つの対策を実施して、追証や不足金が発生するリスクを抑えてきた。それらが奏効したのは、昨年春だ。
日経平均株価が直近高値から2カ月で30%超の暴落が起きたコロナショックでも、「何とか追証を回避できた」という。
なぜ、コロナショックに襲われても、信用取引で危うい状況に追い込まれなかったのか。3つの対策について具体的に見ていこう。
投資額が大きくなる値がさ株だからこそ信用を活用
湘南トレーダーさんが信用取引を活用しているのは、値がさ株を投資対象にしているからだ。最低投資金額が数百万円、時には500万円以上になる銘柄を手持ちの資金だけで投資すると、保有する銘柄の数や期間に制限を受けてしまう。そうした制約を回避するためだ。
昨年11月から12月にかけて取引した任天堂<7974>では、購入当時の最低投資金額が536万円と、ちょっとした高級車が買える金額だった。購入は去年11月12日。年末商戦にかけて株価が動意づくゲーム株のアノマリー(経験則)に期待した。
同社株は期待通りに年末にかけて急上昇し、12月28日に利確した。これによって1単元だけの売買で120万円の利益を手にした。
■任天堂の日足チャート(20年8月~21年2月)
注:出来高・売買代金の棒グラフの色は当該株価が前期間の株価に比べプラスの時は「赤」、マイナスは「青」、同値は「グレー」。以下同
この例では、保有期間は2カ月に満たなかったが、銘柄や相場の状況によっては1年近く保有することもある。そうしたケースもあるため、湘南トレーダーさんは「一般信用取引」を活用している。
信用取引には証券取引所のルールで行う制度信用取引と、証券会社が独自のルールで行う一般信用取引の2種類がある。
制度信用は弁済期限が6カ月なので、含み損を抱えていればそのまま損失が生じ、仮に含み益が生じていたにしても目標の利益に届かないまま決済を迎えてしまうこともある。
これに対して、一般信用は弁済期限を原則として設定せず無期限なので、6カ月を超えて信用ポジションを維持できるため、損切りや目標到達前の利確を行うことを避けられる。
先に触れたように湘南トレーダーさんは委託保証金のほとんどを現物株で、現金は数十万円から多くて200万円とわずかになる。
担保に入れている現物株の9割以上は前職の上場企業に勤めていた頃に持株会を通じて投資してきた銘柄だ。上場前から積み立ててきたことから、上場で資産増に貢献したお宝株になる。残りの約1割は、株主優待株や、塩漬けになった株で構成している。
現物株を担保にすると、その評価額の80%が委託保証金として組み入れられる。これは、代用有価証券の掛け目という仕組みからだ。現物株の評価額は5800万円相当なので、約4600万円になる。
この委託保証金を基に4200万円の信用ポジションを抱えている湘南トレーダーさんが、追証発生リスクを抑えるために行っているのが次の3つの徹底だ。
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