【和島英樹のマーケット・フォーキャスト】 ─高値圏でのもみ合い、物色は総選挙後を睨む動きが中心に
「高値圏でのもみ合い、物色は総選挙後を睨む動きが中心に」
◆日経平均の想定レンジは2万9000円~3万1000円
10月中盤までの東京株式市場は、基本的に高値圏でのもみ合いの展開を想定する。9月中旬までの上昇ピッチの速さに対する警戒感の一方で、総選挙を睨み先高期待も衰えてはいない。10月中旬までの日経平均株価は2万9000円~3万1000円程度での値動きとなりそうだ。物色は総選挙を睨み、環境や半導体、経済再開関連などが有望とみられる。
9月29日の自民党総裁選で次期衆院選の顔が決まり、10月21日の衆議院議員の任期満了を迎える。支持率が低迷していた菅内閣で、9月3日に菅義偉首相が総裁選に出馬しないと表明して以降、株式市場は上昇ピッチを速めた経緯がある。総裁選については、誰が選出されても相当程度、株式市場に織り込まれている可能性が強い。ただ、次に衆院選がスタートすれば、外国人投資家の買いが入ることも想定される。
なお、主体別売買動向で外国人投資家は9月第2週まで現物・先物合計で3週連続の買い越しで、この間に2兆0515億円の大幅買い越しとなっている。一方、同期間で個人投資家は1兆5064億円の売り越し。需給面では、個人の利食い資金がどこに向かうのかも注目される。
懸念材料となっている中国の不動産開発大手である中国恒大集団の経営不安は、今のところ個別の問題であり、リーマン・ショックのような世界的な金融不安に結びつくことはないとみられる。ただ、中国政府は不動産価格を意図的に下げようとしており、不良債権問題や景気の先行きに対する懸念はくすぶり続けることになりそうだ。1990年以降の日本の不動産融資の総量規制を想起させる面もある。
◆半導体、洋上風力・バイオマス、経済再開関連が柱に
物色面では、衆院選挙後を睨んだ動きが中心となりそうだ。誰が首相になろうが「行政などのデジタル化」や「カーボンニュートラル(二酸化炭素の実質的な排出量を合計でゼロにする)」、「コロナ禍での経済再開」を掲げることが確実視される。9月1日にデジタル庁が発足し、マイナンバーカードの健康保険証利用が進むほか、授業のオンライン化やオンライン診療などが拡充されそうで、一連の流れは通信量の増大に拍車を掛ける。半導体の高性能化が重要だが、それには半導体線幅の微細化が欠かせない。主力はEUV露光の検査装置でシェア100%のレーザーテック <6920>や前工程に強い東京エレクトロン <8035>だが、ウエハ洗浄装置で世界首位のSCREENホールディングス <7735>、フォトレジスト(感光性樹脂)で世界首位級の東京応化工業 <4186>、超純水装置大手の野村マイクロ・サイエンス <6254>などにも注目したい。
カーボンニュートラルでは 洋上風力発電やバイオマス関連が引き続き有望。洋上風力発電では国内4カ所の候補について、事業者の公募が今年5月に締め切られている。実施事業者の発表が早ければ10月末にも行われる見通しとなっている。秋田県沖で計画を進めるレノバ <9519>のほか、海上工事のための作業船(SEP船)の五洋建設 <1893>、風力発電施設の開発などを手掛ける日立造船 <7004>など。バイオマスではイーレックス <9517>が軸となりそうだ。
コロナ禍での経済再開では、ワクチンを2回接種した人に対する行動規制緩和に関する議論が進んでいる。また、9月末で緊急事態宣言が解除、ないしはまん延防止等重点措置へ移行する地域が増加する可能性も出てきている。米国ではワクチン接種を条件に11月にも渡航制限を解除すると発表している。居酒屋や回転寿司、焼き肉チェーンなどを展開するコロワイド <7616>、格安旅行券やテーマパーク、ホテル運営のエイチ・アイ・エス <9603>のほか、日本航空 <9201>、ANAホールディングス <9202>、東海旅客鉄道 <9022>なども見直される可能性がある。
10月下旬以降は3月期本決算企業の第2四半期決算発表が本格化する。中旬以降は、個別決算への関心が徐々に高まることも予想される。
(2021年9月24日 記/次回は10月31日配信予定)
■和島英樹(Hideki Wajima)
株式ジャーナリスト
日本勧業角丸証券(現みずほ証券)入社。株式新聞社(現モーニングスター)記者を経て、2000年にラジオNIKKEIに入社。東証・記者クラブキャップ、解説委員などを歴任。現在、レギュラー出演している番組に、ラジオNIKKEI「マーケットプレス」、日経CNBC「デイリーフォーカス」毎週水曜日がある。日本テクニカルアナリスト協会評議委員。国際認定テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe)。
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