米国株式市場見通し:雇用統計に注目
10月相場入りも9月と同様、季節的に売り圧力が強まる傾向にあり、短期的な荒い相場に備える必要がありそうだ。バイデン大統領は上下両院で可決した暫定予算案に署名し、12月3日まで政府機関閉鎖をとりあえず回避した。しかし、債務上限問題は存続し、デフォルトの可能性が完全に払しょくされたわけではない。格付け会社フィッチも債務上限問題の解決が遅れれば格付けを圧迫すると警告。実際、2011年の債務上限危機の際、格付け会社のS&Pは格付けを最高のAAAからAA+に引き下げ相場急落に繋がった。予算を巡る交渉は続き、民主党が提示している3.5兆ドル規模の歳出案の行方には引き続き注視が必要だろう。増税に加えて、含み益に対する課税など金融市場にとりマイナス材料とされる項目が多く含まれており警戒が必要だ。
また、地区連銀総裁の株式取引などが明らかになり、FRBの信頼が揺るぎ、さらに再任がほぼ確実と見られていたパウエル議長の進退も不透明になっていることもリスクになる。サプライチェーンの混乱も予想以上に長期化の兆しを見せ、パウエル議長も言及しているとおり来年まで食い込みそうだ。高インフレもしばらく緩和せず、景気、雇用の回復を抑制するリスクも存続だ。
一方で、貯蓄率はピークの33%からは低下したが依然9.4%と10%近く、潜在的な消費は強いと考えられる。新型コロナの変異株感染も鎮静化しつつあるほか、治療薬の開発が回復を支える材料になりそうだ。
労働省は週末9月雇用統計の発表を予定しており、結果に注目だ。FRBのパウエル議長は9月の連邦公開市場委員会(FOMC)の会見で、もし、今後発表される雇用などの指標が妥当な結果となった場合、11月FOMCで資産購入縮小開始を発表する可能性を示唆した。ただ、FRBは資産購入縮小と利上げを政策として区別している。パンデミック救済策の一環として実施されていた失業者緊急支援を受給していた総人数は、支援措置の失効により600万人程大幅に減少。一方で、バイデン政権がワクチン接種を徹底するため連邦や地方政府職員に対してワクチン接種を義務化。さらに、民間企業にも義務化を促し、ワクチン接種を拒む公務員や民間企業の従業員が解雇されている。このため、今後数週間、失業保険申請件数が増える可能性がある。求人件数が過去最高水準に達するなか失業者数も減らず、労働市場のひずみ、スラックは存続しているようだ。利上げの条件である最大雇用の達成には程遠いと見られ、利上げはまだ先になる。また、たとえ資産購入縮小が開始されても、来年の半ばから秋ごろまで資産購入は続く。短期的な相場の混乱も、当面緩和策が維持されることが引き続き相場の下値を支えることになりそうだ。
経済指標では、8月製造業受注(4日)、8月貿易収支、9月サービス業PMI、9月ISM非製造業景況指数(5日)、9月ADP雇用統計(6日)、週次新規失業保険申請件数(7日)、9月雇用統計(8日)などが予定されている。
主要企業決算では、飲料メーカーのペプシコ(5日)、衣料品メーカーのリーバイ・ストラウス(6日)、アルコール飲料会社のコンステレーション・ブランズ(6日)、などが予定されている。新型コロナウイルスの変異株の影響で強い需要が続き、良好な結果が期待できそうだ。ソフトウェアメーカーのマイクロソフトは5日にウィンドウズ11とオフィス2021を発表する予定で、株価を支える材料となりそうだ。また、電気自動車メーカーのテスラは7日に年次株主総会を予定している。大手議決権行使助言会社は投資家に最高経営責任者(CEO)マスク氏の実弟キンバル・マスク氏、ジェームス・マードック氏の役員再任を阻止するよう勧告している。過剰な報酬を巡る懸念を勧告理由に挙げており、結果に注目だ。
(Horiko Capital Management LLC)
《FA》