行動制限緩和も追い風、躍動感取り戻す「フィットネスクラブ」関連株を狙え <株探トップ特集>
―根強い健康志向にコロナ禍による新たなニーズ取り込みで拡大局面入りの可能性も―
新型コロナウイルスの感染者数が急減していることを受けて、9月30日をもって全国的に緊急事態宣言及びまん延防止等重点措置が解除された。これにより、日常生活に関わる行動制限が段階的に緩和されるなど、ウィズコロナに向けての動きも活発化しており、感染者数の多かった首都圏でも、飲食店への酒類の提供を含めた時短要請が解除された。
株式市場でも、外食や旅行などコロナ禍により苦境に陥った業種に、行動制限緩和による事業環境の好転を期待した買いが入ったが、大幅高した銘柄がある一方、上昇がいまひとつのものも少なくない。 フィットネスクラブに関連した銘柄もその一つだが、日常がウィズコロナに向けて動き出すなか、これらの業種も収益回復に向けた歩みを鮮明にしそうだ。
●売上高・利用者数が減少したフィットネスクラブ業界
近年、健康意識の高まりを受けた利用者の安定的な増加を背景に、フィットネスクラブ業界は成長を続けてきた。経済産業省の「特定サービス産業動態統計調査」によると、コロナ禍前の2019年のフィットネスクラブの売上高の合計は3347億8000万円で、10年前に比べて14.8%伸長。利用者数の合計は2億5450万7343人と27.3%増加した。
しかし、国内で新型コロナウイルスの感染が拡大した20年は、緊急事態宣言の発出や流行初期に感染拡大スポットとしてフィットネスクラブが取り上げられたことが響き、売上高合計は2235億1700万円(前年比33.2%減)に縮小。利用者数の合計も1億7158万2052人に減少した。
月別で見ると、19年12月の利用者数は2027万1577人だったが、感染拡大が市中に広がった20年3月は1176万6621人、4月は376万649人、5月は100万1038人と1回目の緊急事態宣言発出もあり急減した。6月に1284万4148人に回復しその後も回復基調にあるが、直近の21年8月でも1645万7186人と、コロナ禍前の水準には戻っていない。
●倒産件数は過去10年間で最多に
さまざまなサービス業の活況度を示す第3次産業活動指数でフィットネスクラブは14年以降、上昇傾向にあったが、20年3月以降低下し、2月108.5から3月は57.8、4月は18.7、5月は4.9(季節調整済指数)に急落した。その後、夏以降急速に回復したものの、21年8月時点でもコロナ禍前の19年12月に比べると8割弱程度にとどまっている。
こうした状況を受けて、フィットネス事業者の倒産や廃業も相次いでおり、帝国データバンクの調査によると、20年4月~21年3月に発生したフィットネス事業者の倒産や廃業が累計で26件と過去10年で最多となった。過去20年間でもリーマン・ショック直後で需要が大きく後退した08年度の29件に迫る数になったとしている。
●コロナ禍で運動不足解消など新たなニーズも
このように苦境に陥っているフィットネスクラブ業界だが、前述の「特定サービス産業動態統計調査」に見られるように、コロナ禍前には及ばないものの、利用者数は回復基調にある。業界や個々の企業の感染防止対策の努力によって、懸念がほぼ払拭されたことに加えて、健康志向など従来のニーズが復調に寄与している。また、「コロナ禍での運動不足を解消したいというニーズが増えている」(業界関係者)との声も聞かれ、これらのニーズを背景にフィットネスクラブ関連銘柄の業績は回復ののちに拡大局面入りの可能性も見えてきた。
更に、株式市場では20年以降、関連企業のIPOが活発化していることも注目点の一つとなっている。今後発表が本格化する上期決算(4-9月)は、新型コロナウイルス感染拡大第5波のピークがあったことから、回復ペースの鈍化も警戒されるが、第1四半期(4-6月)の状況などを見つつ、その後の回復期待を加味して注目したい。
●業績回復期待高まる総合型フィットネスクラブ
コナミホールディングス <9766> の4~6月期決算で、スポーツ事業は売上高が93億円(前年同期比97.1%増)、営業損益は3億円の赤字(前年同期64億円の赤字)となった。同社では不採算店舗の撤退などの構造改革の一環として、2月に直営施設9店舗を閉店したのに続き、5月には更に16店舗を閉店。一方で4~6月期で大阪、千葉、東京、神奈川、茨城の各都府県で合計22施設の運営受託を開始し、運営受託店舗数が直営店舗数を大きく上回るようになり、同事業の業績を牽引する。
セントラルスポーツ <4801> の4~6月期決算は、売上高が92億8200万円(前年同期比74.8%増)、営業利益が8600万円(前年同期1億6600万円の赤字)と黒字転換した。直営店舗は6月末時点で180店舗となり、大量閉店が続くコナミスポーツと替わって業界トップの店舗数となった。同社はコロナ禍において人気トップインストラクターのレッスン配信や、オンラインパーソナルトレーニングやオンラインイベントの実施などを推進。また、休会者や一時退会者の早期復帰促進策などの取り組みを強めている。
ルネサンス <2378> の4~6月期決算は、売上高が82億1100万円(前年同期比2.2倍)、営業損益が4億200万円の赤字(前年同期19億7000万円の赤字)となった。同社では損益分岐点の引き下げや付加価値の向上に取り組んでおり、本社オフィスの縮小など管理部門のコスト削減や設備費の改善を図る。
東祥 <8920> の4~6月期決算でスポーツクラブ事業は、売上高は29億5000万円(前年同期比71.8%増)、営業利益8900万円(前年同期5900万円の赤字)となった。今期は既存店の収益力回復に経営資源を集中する方針だ。
●24時間ジムなどにも注目
また、これら総合型フィットネスクラブとは異なるものの、24時間ジムのFast Fitness Japan <7092> [東証M]は、コロナ禍による影響が総合型に比べて小さかった。4~6月期は売上高31億1100万円(前年同期比67.2%増)、営業利益7億6700万円(同5.2倍)と大幅な増収増益となり、会員数もコロナ禍前の最多会員数58万2000人(20年3月末)を超えて過去最多の59万5000人となった。新型コロナウイルスの影響で飲食店などの閉店・退去が相次ぎ、駅周辺で24時間ジムに適した物件の空きが出ていることは同社にとってビジネスチャンスにもつながろう。
このほか、女性専用の健康体操教室「カーブス」を展開するカーブスホールディングス <7085> やパーソナルトレーニングジムのトゥエンティーフォーセブン <7074> [東証M]なども注目したい。
株探ニュース