明日の株式相場に向けて=安全保障の観点から半導体株に追い風

市況
2021年11月11日 17時00分

きょう(11日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比171円高の2万9277円と5日ぶり反発。前日の米国株市場では、注目されたCPIが事前予測を上回り前年比6%を上回る上昇をみせたことで、またぞろインフレ懸念が取り沙汰され主要株3指数が揃って続落した。分かりやすく米長期金利が急上昇し株価の重荷となったが、上にも下にも米国市場の逆を行く東京市場は満を持しての反発となった。あすのオプションSQを前に2万9000円ラインを割り込ませたくない思惑が働いたのか、寄り後はあっという間にプラス圏に切り返した。大引け時点で値下がり銘柄数が値上がりを370銘柄あまりも上回ったが、この状態での171円高は先物絡みの仕掛けが機能したことを物語っている。

個別株の動きに目を向けると、半導体製造装置関連が強さを発揮している。前日の米国株市場ではハイテク系グロース株売りの動きが顕著で、これが半導体セクターにも波及しフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)は2.8%安と結構派手な下げ足をみせていた。画像処理半導体大手のエヌビディア<NVDA>が4%近い下落となったほか、半導体製造装置世界トップのアプライド・マテリアルズ<AMAT>も3.8%安に売り込まれた。

この流れを受け、東京市場でも東京エレクトロン<8035>やレーザーテック<6920>など同関連の主力どころが売り優勢のなかスタートしたのだが、その後切り返しに転じている。レーザーテックは寄り付き早々600円安に売られたものの、その後は大きく切返し870円高まで買われる場面があった。売買代金も前場段階では、ソフトバンクグループ<9984>を凌いで全市場を通じてトップの水準をこなすなど同社株に対するマーケットの注目度の高さを示唆している。

今後、米国と中国の覇権争いが先鋭化するなか、両国ともに半導体の確保はサプライチェーン問題という経済の安全保障面から外せない重要課題である。自国内に強力な半導体設備を確立しておきたいという思惑は米中いずれにもあり、日本が得意とする半導体製造装置分野で特需が発生する可能性がある。長い目でみれば過剰投資につながり反動も懸念されないわけではないが、少なくとも向こう数年は上り坂であろう。

一方、日本国内にも変化が出ている。今週9日、台湾の半導体受託生産世界最大手TSMC<TSM>は、熊本県に日本初となる半導体工場建設を発表した。これにはソニーグループ<6758>の参画が早くから取り沙汰されていたが、もう一つ大きなポイントは日本政府が数千億円規模の補助金を使って工場整備費などを工面する方向で誘致を促した背景がある。これには交換条件があり、半導体の需給逼迫に際し日本への優先供給が前提となる。今回の自動車減産で明らかとなった半導体不足がもたらすリスク。安全保障の観点から政治的思惑が醸成され、東京市場でも同関連株への評価見直しに発展していく公算は大きい。

時価総額上位の主力株はもとより、半導体製造装置に絡む中小型株は非常に裾野が広い。目立ったところでは、ウエハー搬送装置を製造するローツェ<6323>の上げ足が鮮烈なほか、超純水装置メーカーとして高い競争力を誇り、調整局面を交えながらも中長期で強力な下値切り上げ波動を構築している野村マイクロ・サイエンス<6254>。これらは出世株の典型といえる。今後もこうした変身銘柄が続々と輩出される公算は小さくない。

目先、半導体周辺株でマークされるものとして、足もとの業績絶好調となっている石井表記<6336>の株価3ケタ台は魅力的に映る。また、売上高・利益ともにV字回復トレンドに入った和井田製作所<6158>や半導体装置向け高周波プラズマ電源装置を手掛けるアドテック プラズマ テクノロジー<6668>などは押し目買い対象として面白い。

あすのスケジュールでは、株価指数先物オプション11月物のSQ算出日にあたるほか、3カ月物国庫短期証券の入札が行われる。国内主要企業の決算発表では日本郵政<6178>、東芝<6502>、東京エレクトロン<8035>、三井住友フィナンシャルグループ<8316>、みずほフィナンシャルグループ<8411>、第一生命ホールディングス<8750>、ヤマトホールディングス<9064>などがある。海外では、9月のユーロ圏鉱工業生産、11月の米消費者態度指数(ミシガン大学調査・速報値)など。海外主要企業の決算発表では欧州でアストラゼネカが予定されている。(銀)

出所:MINKABU PRESS

最終更新日:2021年11月11日 17時01分

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