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米国株
2021年11月24日 10時10分
特集

「脱・キャッシュリッチ」銘柄なら、どれでもいい?

大川智宏の「日本株・数字で徹底診断!」 第77回

大川智宏大川智宏(Tomohiro Okawa)
智剣・Oskarグループ CEO兼主席ストラテジスト
2005年に野村総合研究所へ入社後、JPモルガン・アセットマネジメントにてトレーダー、クレディ・スイス証券にてクオンツ・アナリスト、UBS証券にて日本株ストラテジストを経て、16年に独立系リサーチ会社の智剣・Oskarグループを設立し現在に至る。専門は計量分析に基づいた株式市場の予測、投資戦略の立案、ファンドの設計など。日経CNBCのコメンテーターなどを務めている。

前回記事「米利上げよりも心配!? 中国経済悪化の回避は『6カ月ラグ』戦略で」を読む

新政権の政策期待とコロナ感染者数の減少という追い風があるにもかかわらず、欧米株に比べて日本株に勢いが感じられない状況です。

こうした閉塞感の中で、現状を打破しようとする銘柄の動きが見え始めています。大手金融メディアでも触れられた「脱キャッシュリッチ」動きです。

リンナイ、任天堂、日東電工などに、脱キャッシュリッチの動き

例えば、給湯器大手のリンナイ<5947>が、米中での好調な事業で膨らんだ手元資金を両国の工場投資に振り向けることを公表しています。同社の自己資本比率は70%に近く、市場平均よりも大幅に高い状態です。

また自己資本比率が75%前後のゲーム大手の任天堂<7974>も、ニンテンドースイッチ関連に4500億円もの大金を注ぎ込むことを発表。今まで事業投資に消極的であった同社の方針転換に市場関係者は驚きの声を上げました。

同じく75%前後の自己資本比率の日東電工<6988>は3カ年でM&A(合併・買収)や設備投資に4200億円を投じるとする中期経営計画を発表しています。

脱炭素関連の対応など含めれば、キャッシュリッチ企業が戦略投資を増加させる例は枚挙に暇がなく、外的・内的要因を問わず、現金圧縮に向けた圧力がかかり続けていることは確かでしょう。

キャッシュリッチを測る自己資本比率は、東証1部上場企業で高まる一方

キャッシュリッチの度合いを測る上で自己資本比率に注目すると、東証1部上場企業は年々比率を高め、足元は過去最高水準を更新しています(下のグラフ)。

高い自己資本比率は、財務の健全性の高さが担保されるという点ではポジティブかもしれません。一方で、それは手元資金を有効活用できていないことの裏返しになります。

■東証1部上場企業の自己資本比率の平均値、中央値の推移

【タイトル】

出所:データストリーム

コーポレートガバナンス・コードが浸透した現在、剰余金を内部留保としてため込んで戦略的な投資や株主還元を実施しない企業は、アクティビストや大株主から突き上げられることも多く、それによって経営陣もようやく重い腰を上げ始めた経緯があるのかもしれません。

脱キャッシュリッチは株価に有効かを、設備投資に絞って検証する

こうした状況もあり脱キャッシュリッチに動き始めた企業は、発表後に株価が上向くケースもあります。しかし、「株式投資」の観点で、この脱キャッシュリッチの動きは本当にポジティブな効果を生み出すのでしょうか?

この点を定量的に結論付けるのが、本記事の目的になります。今回は2つの視点から効果を検証します。

まずは、そもそも「脱キャッシュリッチ」は株価の観点から有効性を持つのかを検証します。方法として、キャッシュ圧縮によって純資産が減少すると予想される銘柄は、どのように評価されるのか、「予想純資産成長率」を用いて効果を計測していきます。

次にキャッシュの使途として設備投資に焦点を当てます。配当も重要な要素ですが、今回は設備投資に絞りました。

設備投資についての検証は

A:設備投資額の成長率、

B:事業規模に対する設備投資額の大きさ

――の2つから実施しました。

これらを総合的に判断し、最終的な銘柄アイデアにまで落とし込んでいきます。分析では、上記の各要素のファクターリターンを投資効果として定義します。

東証1部上場銘柄を母集団とした過去10年間の月次のファクターリターンの計測になります。ファクターの高低による銘柄の抽出は、母集団内の上位下位20%点(5分位点)を閾値として判断し、いずれも高群-低群によってパフォーマンスを定義します。

予想データはすべて12ヵ月先のコンセンサスを使用しています。イメージは下に示した通りです。

■効果計測のイメージ

【タイトル】

出所:智剣・Oskarグループ

純資産の減少はマイナス要因といえそうだが…

まずは、そもそも脱キャッシュリッチが株価に有効なのかを見るため、予想純資産成長率の動きについて検証します。

※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。

次ページ 純資産ファクター、そして設備投資の2ファクターの効果は

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