明日の株式相場に向けて=パウエル続投と米金利上昇が意味するもの

市況
2021年11月24日 17時00分

きょう(24日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比471円安の2万9302円と3日ぶりに大幅反落。朝から見送りムードとはいえ悲観の色はなく、売り物も始めはチョロチョロと石清水が湧き出る風情だったが、途中から激流に変わった。225先物主導の急落で、TOPIXはたいした下げではなかったが、ソフトバンクグループ<9984>やファーストリテイリング<9983>など“常連”のほか、きょうは東京エレクトロン<8035>など半導体主力株の下げが顕著で悪役に回った。

週明けの当欄で、来年2月に任期満了を迎えるパウエルFRB議長の再任の可能性は低くブレイナード理事昇格の公算が大きいという市場関係者の見方を紹介した。しかしその予想は外れ、バイデン米大統領は22日にパウエルFRB議長の再任を公式に発表した。市場では、このタイミングでパウエル続投を明示したことに驚きの声も上がっていたが、「それだけ支持率の低下に際し、早期に何とか回復を図りたいというバイデン大統領の思いが反映された」(ネット証券アナリスト)という指摘もある。来年の中間選挙にはまだ時間的な猶予があるとはいえ、ここでの信用失墜は民主党にとってもバイデン大統領にとってもリカバリーが難しく、今が正念場とみているようだ。

新型コロナウイルスという難敵をうまくクリアするメドが立ち、視界が開けるかと思った矢先、後門には“インフレ”という狼が待っていた。バイデン大統領の支持率急低下は新型コロナ対策への不満ではなく、止まらない物価上昇の方だ。エコノミストの間では、基本的に景気回復を象徴した需要の伴う物価高であるとし、足もとの行き過ぎた物価上昇についてはサプライチェーン問題などによる一過性のものとの見方が大勢を占めている。しかし、「国民目線では、机上の理論よりも現在目の前で起こっているインフレを何とかしろ、という要望が強い」(前出のアナリスト)という。

次期FRB議長として有力視されていたブレイナード氏は民主党員ということもあり、共和党にとっては超ハト派であってもあまり面白くない。また、彼女が金融機関の規制に前向きなことも嫌気されているという。ブレイナード氏を指名した場合、上院での承認が速やかに進むことは考えにくく、結果として新型コロナやインフレ対策にも影響を及ぼすことが必至とみられた。そうしたなか、共和党と妥協を急いだというのが、今回のバイデン大統領によるパウエル氏の続投発表だったということになる。

遡って、今回のパウエル氏再任が難しいとの見方の根拠となっていたのは、今から1年ちょっと前の昨年10月、氏が保有する株式投資信託の500万ドル相当(円換算で5億7500万円)を売却していたことが明らかとなったことがある。これは経済対策が難航を極めていた時期で、NYダウやナスダック総合指数が急落する直前であったが、売却前に当時の財務長官であるムニューシンと4回にわたる会談を行っていた。「個別株ではなく、インサイダーなどの法には触れないとはいえ、倫理的には大問題。もし、日本であったら大炎上間違いなしという案件だった」(中堅証券ストラテジスト)という。ところが、それがアキレス腱にならないところが、良く言えば米国の懐の深さなのか。「おそらくこうした事例は他の重鎮政治家やFRB関係者に数えきれないほどあり、本音を言えば、これで突き上げたら皆に火の粉が降りかかる、ということなのかもしれない」(同)とする。

いずれにしてもパウエルFRB議長の再任が公式に発表されたことで、米長期金利は急上昇した。超ハト派であるブレイナード理事が議長の座につかなかったということで、債券買いポジションを積み上げていた向きの巻き戻しが加速した。市場では「長期金利が1.7%台に入ってくるとナスダック総合指数の上昇トレンド維持は難しくなる」(前出のネット証券アナリスト)という見方が示されていた。東京市場でも高PERの銘柄に対して向かい風が強まる可能性がある。目先はリバウンド狙いに徹し様子をみたいところだ。

あすのスケジュールでは、9月の景気動向指数改定値、10月の外食売上高、10月の全国スーパー売上高、10月の白物家電出荷額、10月の全国百貨店売上高など。このほか、40年物国債の入札が行われる。また、東証マザーズ市場にスローガン<9253>が新規上場する。海外では、韓国中銀の金融政策発表、アジア欧州会議(ASEM)首脳会議。なお、米国市場は感謝祭の祝日で休場。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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