【植木靖男の相場展望】 ─新年に向けてインフレ相場か?!
「新年に向けてインフレ相場か?!」
●想定外の円安がはらむリスク
11月相場入り後、日経平均株価3万円を巡って、買い方と売り方が攻防戦を繰り広げた結果、週末26日には大きく崩れ、短期的には売り方優勢の展開となった。24日の大幅安がいまにしてみれば、週末の大暴落を示唆していた格好となった。
ところで、いま世界の市場で顕在化している大きなテーマは、新型コロナウイルスの新たな変異株の出現、インフレの高進、米国の金融政策の転換、それにドル高といったところか。こうしたテーマは徐々に市場の警戒材料となりつつある。
南アフリカで確認されたコロナ変異株が欧米で流行すれば、世界経済の先行き不透明感は一段と強まる。原油価格の上昇やサプライチェーンの混乱、人手不足などで、インフレは今後もじわじわと加速する可能性があろう。インフレ加速となれば、米国ではFRB(米連邦準備制度理事会)が金融引き締めのシナリオをより早めることも考えられ、株価にはマイナスだ。
もっとも、日本の立場は違う。欧米はインフレ体質、日本はデフレ体質だ。日銀はむしろインフレを待ち望んでいるようにみえ、異次元金融緩和政策を維持する方針という。だが、行き過ぎは禁物だ。
日米金利差の拡大、さらに原油価格上昇による悪い円安で、消費者物価は手のつけられない上昇に転じる可能性もあるからだ。平成バブルの時は3年で100円以上の円高になったお陰で悪い円安を免れたが、今度は違う。想定外の円安となれば、賢い投資家は資金を海外に持ち出す。つまり、キャピタルフライトも起きるし、獰猛な海外投機資金は円安に的を絞って行動しよう。
●来年のテーマで狙うなら金、原油、穀物関連か
さて、目先的にはどのようにこの株価変動をみるべきか。週末の暴落でみえるのは、経験的には来週も上値を押さえられる展開が続くだろうということだ。その後は早ければ来週でいったん底打ちするか、延びても12月14~15日までか。すなわち、この間の米国雇用統計、FOMC(米連邦公開市場委員会)などの懸念材料を株価が織り込めば自律反発となろう。そうなれば、久しぶりの年末高相場を迎えることも可能だろう。
さて、事ここに至って物色の候補となる銘柄を挙げるのは難しいが、12月相場は新年の1年を象徴するといわれる。筆者は新年の最大のテーマは「インフレ」とみている。
今年は米国では結局、テスラ<TSLA>やアップル<AAPL>、マイクロソフト<MSFT>など技術革新を牽引する銘柄が大活躍した。一方、新年の日本では想定外の円安(日銀の異次元の金融緩和政策のとがめ)、とめどもない財政のバラマキなどで消費者物価は急上昇するのではないか。
では、こういう時代に合った銘柄は何か。今年を代表する銘柄を引きずってハイテク株と見る向きも多い。しかし、二番天井、三番天井を狙うならともかく、新たな活躍銘柄とは言えそうもない。だとすれば、一般論からいえば、インフレ=換物思想により、その代表は金(ゴールド)である。そして 原油、銅、鉄鉱石、穀物とその周辺ということになる。
まずは金。銘柄でいえばSPDRゴールド・シェア <1326> [東証E]、アサヒホールディングス <5857> 、住友金属鉱山 <5713> などだ。また、非鉄銘柄でいえば、大紀アルミニウム工業所 <5702> 、三井金属鉱業 <5706> など。
また、ずばり原油でいえばINPEX <1605> のほか、三菱商事 <8058> など大手商社もおもしろい。原油は政府の備蓄放出でもはや興味なしと見る向きもあるが、原油という大きな商品の価格を人為的に抑えることは果たして可能か。バンク・オブ・アメリカ<BAC>は新年は1バレル=100ドル以上もと予想しているそうだ。
2021年11月26日 記
株探ニュース