親の税金が11万円増! 子どものバイト収入に要注意
清水香の「それって常識? 人生100年マネーの作り方-第40回
FP&社会福祉士事務所OfficeShimizu代表
1968年東京生まれ。中央大学在学中より生損保代理店業務に携わるかたわらファイナンシャルプランナー(FP)業務を開始。2001年に独立後、翌年に生活設計塾クルー取締役に就任。2019年よりOfficeShimizu代表。家計の危機管理の観点から、社会保障や福祉、民間資源を踏まえた生活設計アドバイスに取り組む。一般生活者向けの相談業務のほか執筆、企業・自治体・生活協同組合等での講演活動なども幅広く展開、テレビ出演も多数。 財務省の地震保険制度に関する委員を歴任、現在「地震保険制度等研究会」委員。日本災害復興学会会員。
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年末調整の時期。すでに会社などに関係書類を提出した人も多いと思いますが、ここで改めて「103万円の壁」「130万円の壁」について取り上げたいと思います。
というのは、この壁はよく配偶者の収入と扶養に「入る」「入らない」などの例で話題になりますが、実は子どもの収入でも同様の問題が発生することも知っておいて損はないからです。
学費や生活の足しにと、アルバイトに勤しむ大学生が頑張って稼ぎすぎると、年末調整で親に思わぬ"出費"が襲いかかることも起こり得ます。
日本学生支援機構(JASSO)の令和2年度「学生生活調査」によれば、大学生のアルバイト収入は平均で年間36万6500円。あくまで平均なので、アルバイト収入が大きな金額になっている学生もいます。
そこで今回は、扶養する子どもの収入額に応じて立ちはだかる壁と、税金や社会保険料の負担、および親の税負担への影響を見ていきます。
親の税金が増える「103万円の壁」
まず、大学生の子どもがアルバイトなどで年収103万円を超えると、親の税金が激増します。親の税金の扶養から子どもが外れ、控除がなくなってしまうからです。
そもそも私たちが実際に負担する所得税や住民税は、課税所得に税率を掛けて計算されます。
給与所得者の課税所得は、年収に応じた給与所得控除をマイナスしたうえで、本人や家族にからむ控除(基礎控除、扶養控除など)、その他さまざまな控除(社会保険料控除、生命保険料控除など)をマイナスして算出します。
控除額が多いほど課税所得は少なくなり、その分負担する税金も安くなります。「特定扶養控除」はそのうちのひとつで、19歳から23歳未満の子どもがいる親に適用されるものです。
控除額は、所得税では63万円、住民税では45万円と大きく、その分の課税所得が下がるため、税金が抑えられます。
たとえば、親の年収が600万円の場合、所得税率は10%(復興税は考慮せず。以下同)、住民税率は10%になります。上の特定扶養控除を受けた場合、所得税と住民税を合わせた納税額はおよそ40万円です。
ところが、子どもの年収が103万円を超えて、特定扶養控除が受けられなくなると、先の納税額より負担が11万円増えて、51万円になってしまいます。
■扶養の有無による親の税負担比較
税の種類 | 特定扶養控除 あり | 特定扶養控除 なし | 扶養が外れた場合の 親の税負担の増額 |
所得税 | 14万円 | 20万円 | 11万円 |
住民税 | 26万円 | 31万円 | |
所得税 | 33万円 | 46万円 | 18万円 |
住民税 | 40万円 | 45万円 |
親の年収が高くなり、税率が高くなれば、さらに負担が増します。
例えば年収800万円の場合は、所得税率が20%、住民税率が10%になります。この場合、特定扶養控除が適用されないと、負担は18万円も増してしまいます。
子供のアルバイト収入が103万円から1万円オーバーしただけでも控除がなくなるため、親としては「バイト代は103万円以内」を、どうにか死守してほしいと思うでしょう。
「103万円の収入は48万円の所得」なので、ギリギリセーフ
103万円の根拠は以下のとおりです。