米国株式市場見通し:CPIに注目
新たに検出されたオミクロン変異株の動向を睨んだ荒い展開が続きそうだ。また、FRBが金融緩和策の解除ペース加速の軌道上にある中、消費者物価指数(CPI)に注目が集まる。今年のブラックフライデーやサイバーマンデーは供給不足、在庫不足が影響、前倒しでの消費が進んだこともあり、結果は冴えず。サイバーマンデーは初めて前年比で減少を記録する低調な結果となった。さらに、小売り企業決算でも内容は好調も持続が困難なペース。さらに、コストの上昇で利益率も圧迫され、見通しが軒並み引き下げられたため小売りへの失望感も否めない。ただ、累積需要は依然強いと見られ、サプライチェーン、ボトルネック問題が解決した際、再び小売りの業績を押し上げると期待したい。
今後数週間は、オミクロン変異株に対するワクチンの有効性を巡るデータ待ちとなる。バイオのモデルナ社はワクチンの有効性に懐疑的見解を示した一方、製薬会社ファイザーは同社製ワクチンのオミクロン変異株への効果が低下することはないと楽観的だ。国内での行動規制がパンデミック発生直後のように強化されるとは考えにくい。感染力は強いと見られるが、致死性は低く、オミクロン変異株が新型コロナパンデミックの終息が近いシグナルとの見通しもあり、今後のデータで確認された場合、買戻しが強まるだろう。さらにFRBも資産購入策の縮小ペースを加速させる可能性は高まったものの、金融政策は依然かなり緩和的だ。利上げも来年の中間選挙前に積極的に進めるとも考えにくく、年内の相場上昇基調は保たれそうだ。
経済指標では、7-9月期非農業部門労働生産性確定値、10月貿易収支(7日)、10月JOLT求人(8日)、新規失業保険申請件数、10月卸売売上高(9日)、11月CPI、12月ミシガン大消費者信頼感指数速報(10日)などが予定されている。
経済が強く、インフレ圧力が強まっており、FRBが12月FOMCで資産購入縮小ペース加速を協議する方針を、パウエル議長がすでに表明済み。FRBがインフレ指標として注目している変動の激しい燃料や食料を除いたコアCPI指数は前年比で4.9%増と1991年6月以降30年ぶりに最大の伸びを記録する見通し。サプライチェーンの混乱や輸送ボトルネック問題が続くと同時に、強い需要や高賃金が最近の物価上昇に繋がっている。予想通りの結果となると、FRBの目標である2%の2倍以上となるため、金融緩和解除ペース加速を正当化することになり、相場の上値を抑制するだろう。
主要企業決算では、自動車部品販売会社のオートゾーン、住宅建築のトール・ブラザーズ、オンラインスタイリングサービスを提供するスティッチフィックス(7日)、ゲーム販売のゲームストップ、高級家具販売のRH、食品会社のキャンベルスープ(8日)、半導体メーカーのブロードコム、ペット用品オンライン小売チューイー、会員制卸売会社のコストコホールセール、ヨガアパレルのルルレモン(9日)、ソフトウェアメーカーのオラクル(10日)などが予定されている。
住宅建築は建築材料や人件費などコストの上昇にもかかわらず強い需要が業績を支える兆候が見られる。見通しに注目したい。缶詰などの食品を扱うキャンベルスープは経済活動の再開に伴い前年に比べ需要が落ち込んだ可能性があり警戒だ。半導体やペット関連、アパレルは引き続き強い需要が業績を押し上げた可能性があり期待したい。
(Horiko Capital Management LLC)
《FA》