新興市場見通し:改善要因重なりマザーズ躍進期待、IPO年末にかけ3社
今週の新興市場では、マザーズ指数が5週ぶりに大きく反発し、1000pt台を回復して取引を終えた。この週はIPOラッシュの様相を呈し、全体の件数もさることながら、公開規模の比較的大きい案件が多かった。全般に厳しい出足を強いられた印象が強いが、ひとまず公開株の購入に充てられていた資金が市場に還流したことなどが新興株の持ち直しにつながったとみられる。また、海外勢のクリスマス休暇で東証1部の売買が減り、個人投資家の物色の矛先が新興株に向いたほか、11月後半以降の調整がきつかった銘柄に売り一服感が出てきたのも大きいだろう。なお、週間の騰落率は、日経平均が+0.8%であったのに対して、マザーズ指数は+4.1%、日経ジャスダック平均は-0.2%だった。
個別では、メルカリ<4385>が週間で1.8%高となるなどマザーズ時価総額上位は全般堅調で、フリー<4478>は同7.1%高、そーせいグループ<4565>は同8.5%高。売買代金上位ではFRONTEO<2158>やENECHANGE<4169>が大幅に上昇した。また、株式分割実施を発表したサイジニア<6031>が週間のマザーズ上昇率トップとなった。一方、12月10日上場のフレクト<4414>などは売りに押され、11月上場のサイエンスアーツ<4412>が下落率トップとなった。ジャスダック主力は東映アニメーション<4816>が同15.5%安となるなど全般軟調。売買代金上位ではアミタHD<2195>などが売られ、ANAP<3189>は週間のジャスダック下落率トップとなった。一方、日本マクドナルドHD<2702>は同1.5%高。フェローテックHD<6890>も買い優勢で、ラクオリア創薬<4579>は大幅高となった。IPOでは24社が一挙上場したが、うち10社の初値が公開価格を下回った。ただ、ラバブルマーケティンググループ<9254>は公開価格の約3.8倍まで初値を伸ばし、JDSC<4418>など初値後に賑わう銘柄も散見された。エフ・コード<9211>は初値持ち越しとなっている。
来週・再来週の新興市場では、新年相場におけるマザーズの躍進に期待したい。11月後半から人気銘柄の相次ぐ急落による損失覚悟の売り、IPOラッシュに向けた資金確保の売りなどがマザーズ指数を大きく押し下げた。ただ、前者の売りには一服感が出てきて、IPOラッシュ通過により投資資金も還流。さらに、12月28日の権利付最終売買日を通過すれば年末特有の損出し売りも一巡する。年末年始は個人投資家が取引主体となって新興株に関心が向きやすいだろうし、ここ1カ月ほどの株価下落で値ごろ感の出てきたマザーズ銘柄も多い。
目先はJDSCのように値動き良好な直近IPO銘柄に物色の矛先が向きやすいだろうが、実質新年相場に入り既存マザーズ銘柄の見直しの動きにも期待したい。ウェルスナビ<7342>などは再評価余地が大きそう。2021年上場組ではビジョナル<4194>が躍進したが、22年はAppier Group<4180>が上場前株主の売却一巡後に活躍を期待できそうだ。
IPO関連では、12月27日にアジアクエスト<4261>とセキュア<4264>、29日にInstitution for a Global Society<4265>がいずれもマザーズへ新規上場する。件数が減ったことで初値買い分散の影響は薄れ、3社とも人気の事業内容とあって「掉尾の一振」に期待したいところ。なお、今週は既に2022年のIPOとしてセイファート<9213>(2月4日、ジャスダック)の新規上場が発表されている。
《FA》