フィンテック旋風再び、後払い「BNPL」など決済関連株に押し寄せる新潮流 <株探トップ特集>

特集
2021年12月28日 19時30分

―ECでのクレカ決済市場に食い込み急成長、ネットプロなど新興勢力が台頭―

フィンテック分野に新たな潮流が生まれている。日本では決済アプリ のキャンペーンによる活発な競争が話題を集めているが、コロナ禍による電子商取引(EC)の急拡大を背景に世界ではBNPL(バイ・ナウ・ペイ・レイター)と呼ばれる後払い決済サービスの人気が高まっている。BNPLは、オンライン上の買い物ではクレジットカード決済が一般的という常識を覆しつつある。新潮流が台頭する決済関連銘柄を追った。

●BNPL企業、ネットプロのIPOが話題に

12月のIPO市場で高い関心を集めた1社が、15日に東証1部へ直接上場を果たしたネットプロテクションズホールディングス <7383> だ。同社はBNPL関連株として注目された。軟調な地合いに加え、資金吸収額や時価総額の大きさが警戒され初値は公開価格を割り込んだものの、その成長性が見直され足もとでは1450円の公開価格を奪回し上昇基調を強めている。日本ではスマートフォンの決済アプリのキャンペーンによる派手な競争が繰り広げられているが、その陰に隠れながらも急成長しているのが後払い決済のBNPLだ。

後払い決済では、ユーザーがインターネットで買い物をし、商品が配送された時と同時あるいは後に送られてきた請求書を用いてコンビニエンスストアや銀行、郵便局、スマホ決済などで支払いを行う。請求書だけでなくスマホに表示されたバーコードなどでも決済が可能だ。ネット上でクレジットカード番号を入れることに伴う情報流出に対する不安がないほか、クレジットカードを持っていない層のネット取引需要にも応えている。短中期の分割払いでは、手数料や金利負担も発生しない場合も多い。こういった特長から若年層や主婦などに支持され、「クレカの代替」としての利用が拡大しオンラインショッピングでの決済サービスの新潮流となっている。

ネットプロの主力の「NP後払い」の年間取扱高は19年連続の増加で21年3月期は3422億円(前の期比16.3%増)と急成長を続けており、年間ユニークユーザー数は1580万人を超えている。

●海外ではアファームHDなど躍進、アップルなども導入

BNPLが一足早く拡大している米国においては、今年1月にナスダックに上場した米BNPL大手のアファーム・ホールディングス<AFRM>が公開価格の49ドルに対して、11月には176ドルまで上昇した。足もとの時価総額は220億ドル(約2兆5000億円)に達している。また米ブロック<SQ>(旧スクエア)も8月、オーストラリアのBNPL企業であるアフターペイを290億ドル(約3兆3000億円)で買収することを発表している。米アップル<AAPL>も自社決済サービス「アップルペイ」にアップルペイ・レイターとして後払い決済の導入を決めたことが伝わっている。こうした動きは日本にも広がっており、10月にはBNPLスタートアップのペイディ(東京都港区)を米オンライン決済大手のペイパル・ホールディングス<PYPL>が買収した。ペイディの買収金額は約3000億円に達した。

●AIなど駆使し与信管理、21年の取扱高は1兆円規模に

BNPLでは与信管理に人工知能(AI)やビッグデータなどを駆使し、過去の購入・支払い履歴やECサイト内での行動履歴などを分析しサービスが提供されている。国内では2021年のBNPL取扱高は1兆円規模となったとの試算もあるが、まだまだ開拓余地が広く、将来的には既存のクレジットカード産業に代替する可能性が期待されている。BNPLへの新規参入は後を絶たない状況にある。ジャックス <8584> は子会社が後払いサービス「アトディーネ」を手掛けており、ASJ <2351> [東証M]などと同事業で提携しているほか、セブン銀行 <8410> も後払いサービスを、加盟店の契約を締結した事業者に提供している。

ただ、BNPLによる使い過ぎも問題視されており、米国では消費者が過剰債務を抱えることが懸念され消費者金融保護局(CFPB)が一斉調査に乗り出す動きも出ている。

●メルカリやロボペイ、ラクーンHDなどにも注目

また、ネット決済関連ではフリマアプリ国内最大手のメルカリ <4385> [東証M]が改めて注目されている。同社は運営するスマホ決済サービス「メルペイ」で、メルカリの利用実績などをもとに与信が決められ、支払いはその月に発生した利用金額を翌月以降に支払うというスタイルの後払いサービス「メルペイスマート払い」を提供している。21年6月期業績は営業黒字化を達成し、株価は11月下旬に上場来高値を更新した。

ROBOT PAYMENT <4374> [東証M]は今年9月に東証マザーズに新規上場した直近IPO銘柄。インターネット決済代行サービスなどを提供する。11月に、21年12月期の単独業績予想について、売上高を13億3300万円から13億6900万円(前期比27.0%増)へ、純利益を1億200万円から1億2800万円(同17.2%増)へ上方修正した。ペイメント事業において加盟店の事業拡大により決済取扱高が増加したほか、上場関連費用も想定を下回ったことが寄与した。来年度以降はアプリ外課金に向けた機能開発及び顧客提案も進め更なる成長を目指すとしている。

ラクーンホールディングス <3031> は衣料品などが主力の卸・仕入れECサイト「スーパーデリバリー」を展開するが、掛け売り取引の手間とリスクを解消する「Paid(ペイド)」というB2B後払い決済サービスなども提供。足もとではペイドにおいて、緊急事態宣言の影響を受けて減少した一部の加盟企業の取扱金額が回復し加盟企業数も増加しており、株価も上昇基調にある。また、売掛債権の保証サービス会社であるイー・ギャランティ <8771> は11月から法人向けの後払い決済サービスを始め、地銀との提携を拡大している。

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