強いGAFAMに「金融引き締めパンチ」は効く?
マネックス証券 岡元兵八郎さんに聞く~後編
登場する銘柄
アルファベットA<GOOGL>、アップル<AAPL>、メタ・プラットフォームズ<FB>、アマゾン・ドット・コム<AMZN>、マイクロソフト<MSFT>、ファイザー<PFE>、S&P500種指数<SPX>、インベスコQQQトラスト<QQQ> |
前回記事「2022年の米国株、業績成長と高水準の待機資金から上昇継続へ」を読む
投資家からの関心の高いGAFAMの5社についてはどんな点を評価し見通しを持つのか。また投資家はこの先どんな行動を取るべきかを語ってもらった。
(聞き手は真弓重孝/株探編集部、福島由恵/ライター)
―― 金利上昇はPER(株価収益 率)が高い成長株に逆風という見方が多いです。これまで米国株相場をけん引し、投資家の注目度が高いGAFAM、「Google」を運営するアルファベットA<GOOGL>、アップル<AAPL>、フェイスブックから社名変更したメタ・プラットフォームズ<FB>、アマゾン・ドット・コム<AMZN>、マイクロソフト<MSFT>は投資先としての旨味は薄れるのでしょうか?
岡元兵八郎さん(以下、岡元): 2021年の年末には調整が見られましたが、少し物差しを長くして、22年の年末、さらに長期的視野ではどうか、という見方をすれば、私は引き続き有望であると考えています。5社ひとくくりで語るのは適切ではありませんが、これらの企業は、例えばS&P500などの主要な市場平均を上回るリターンが期待できると見ています。
株価というのは、基本はファンダメンタルズが良く将来にわたって業績が伸びていくと期待できれば上昇していくものです。また、人々が生活を営むうえで必要とされるもの、社会的な問題に対応できるような優れた商品やサービスを提供していく企業であれば、市場からの評価も高まります。
これらGAFAMの5社に共通して言えることは、グローバルな規模で、多くの人々にとってもはや「なくてはならないもの」を提供する、いわゆるプラットフォーム的なビジネスモデルを展開しているということです。
岡元兵八郎(Heihachiro Okamoto)
マネックス証券 チーフ・外国株コンサルタント
兼マネックス・ユニバーシティ シニアフェロー
グローバルなプラットフォームビジネスは強い
確かに金利上昇は、株式市場にとっては不安材料の種ではありますが、だからといって、直ちにこれらのプラットフォーム的な企業の高い評価が剥げ落ちるとは考えにくい。
前回の記事でお話ししたように、今後、利上げの頻度や度合いに関するニュースに影響されて、株式相場はその都度高いボラティリティをもって変動することが予想されます。その動きに影響されてGAFAM株も調整を強いられる場面はあるでしょう。
しかし、それはあくまでも短期的なもので、長い目で見ればいずれも引き続き伸びていくポテンシャルはあると捉えています。
ただし、各社それぞれビジネス内容や成長のステージ、企業の環境は異なるものです。当然ながら、投資の際は各々についてファンダメンタルズや事業環境の精査はしていかなければなりません。
■GAFAMの21年の騰落率(年初来と21年10月末比)
注:21年12月23日終値時点
コロナ収束後もグーグルの必要性は増していく
―― まずグーグルのアルファベットは、21年に年初来騰落率が+70%ほどと5社の中で最大でした(議決権ありのクラスA、GOOGLで計算)。
岡元 : グーグルは今やサイト検索にとどまらずEメールや地図、スケジュール管理、文書共有など様々なデジタルツールを提供しており、世界中の人が使わない日はないといっても過言ではない存在になっています。
コロナ禍でオンライン会議というスタイルで、職場の仲間や取引先、取材先などとコミニケションを取る場面がぐっと増えましたが、最近はそのためのツールとしても役立てられ存在感を増していますね。この流れは今後も続くでしょう。
―― 21年秋(10月末)からの上昇率は横ばい水準になっていますが。
岡元 : 金利の先高観の高まりで、これまで市場を牽引してきた大型グロース株は調整局面に入りました。これは当然といえば当然の動きで、金利が上昇に向かう局面では、これまでの緩和が進行してきたときと比べれば、上値を追いにくくなります。
そうした流れにアルファベットも無縁ではいられません。その一方で同社の提供するサービスは、もはやデジタル社会のインフラのようになっており、インフレ率や金利の影響は受けくい一面を持っています。
――同社の収入源であるデジタル広告収入は、金利上昇の影響を受けにくいでしょうか。
岡元 : そう見ています。リスク要因を挙げるとすれば、金利上昇より個人情報保護の規制が世界的により強まることで、同社のこれまでのビジネスモデルが通用しにくくなることでしょう。
■『株探米国株』で確認できるアルファベットA<GOOGL>の週足チャート(19年1月~)
注:出来高・売買代金の棒グラフの色は当該株価が前期間の株価に比べプラスの時は「赤」、マイナスは「青」、
同値は「グレー」。以下同
アップルは社会に求められる新商品に期待感
―― アップル<AAPL>は21年秋からの上昇率が、GAFAMの中で最も高くなっています。
岡元 : 投資家の関心は、同社の次なるステージへの成長に向いており、それらを評価しての上昇でもあったと思います。
今後、米国の全体相場の下落に巻き込まれたり、iPhone新機種の売れ行きがどうかという類のニュースに振らされたりして、やはり短期的な調整に追い込まれる場面もあるでしょう。
しかし、同社は次なる新商品の開発に力を入れており、魅力的かつ実用的な商品展開への期待は一層高まっていくものと考えます。
例えば、22年中の発売が目されているARグラスやヘッドセットなど、iPhone並みに普及していったとしたら、かなりの収益拡大を期待できそうです。
―― ARは「拡張現実」のことで、ARグラスかけると、例えばグラス越しに見ている風景などにナビゲーションが付けられたり、動画や3D(三次元)なども楽しめたりする機能ですね。外国語の翻訳が見られるなどすれば、とても便利です。
岡元 : それだけではありません。完全自動運転をやってのける電気自動車の「アップルカー」の開発も鋭意進められているとされ、そちらの期待感も高まっています。
電気自動車は株式市場でも長期的に注目され、世界的に推し進められている脱炭素社会においては存在意義も大きい。そう考えると、アップルの成長の伸びしろも、まだまだ広がっていくものと見ています。
■アップルの週足チャート(19年1月~)
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