米雇用引き締まりを確認してパウエル氏証言へ/後場の投資戦略
日経平均 : 28231.31 (-247.25)
TOPIX : 1981.22 (-14.46)
[後場の投資戦略]
注目された米12月雇用統計を受けて米株が下落し、連休明けの東京市場も売り優勢の展開となっている。もっとも、米市場では景気敏感株やハイテク株が循環的に買われる場面があり、日経平均はNYダウやナスダック総合指数と比べ一段と弱い印象を受ける。売買代金上位を見ると値がさグロース株の下げがきつく、日経平均を下押ししている感があるものの、東証株価指数(TOPIX)も-0.72%と日経平均(-0.87%)並みに軟調。時価総額上位のトヨタ自は比較的底堅く、金融株などは堅調だが、TOPIXを下支えしきれていない。ここまでの東証1部売買代金は1兆5000億円あまりで、ここ数日並みの水準となっている。
新興市場ではマザーズ指数が-0.63%と反落。こちらは前場中ごろにプラス圏へ浮上する場面もあった。前週の下げがきつかっただけに押し目買いが入ったとみられるが、買いが続かないところに中小型グロース株への警戒感の根強さが窺える。売買代金トップのサイエンスアーツ<4412>は昨年12月後半のきつい調整から切り返し、大幅に3日続伸。11月に上場したばかりだが、時価総額300億円あまりの小型株で、市場流通株も非常に少ないとみられる。マザーズ市場全体の売買代金は7日、株価不調に伴い1611億円まで減少。短期の値幅取りを狙った物色は少額の買いで株価を押し上げやすい小型株に向かわざるを得ないだろう。
さて、米12月雇用統計は非農業部門就業者数が前月比+19.9万人(11月は+24.9万人、修正後)となり、市場予想(+42万人程度)を下回った。一方、失業率は3.9%(同4.2%)に改善し、平均時給は前年同月比+4.7%と予想(+4.2%)を上回った。高賃金でも人々が労働市場に復帰せず、需給のタイト化が続いている構図だ。これにより米債券市場ではFRBの3月利上げを織り込む動きが一段と強まり、短期の年限を中心に金利が上昇。米金融大手ゴールドマン・サックスなどは今年4回の利上げを予想しているという。ただ、金融引き締めによる景気悪化を懸念する向きもあるようで、10年物国債利回りは1.8%近辺で伸び悩み。期待インフレ率の指標とされる10年物ブレークイーブン・インフレ率(BEI)も2.5%を下回ったところでいったん下げ止まっている格好だ。
こうしたなか、今晩の米国ではパウエルFRB議長の再任を巡り、上院銀行委員会で公聴会が行われる。度々当欄で指摘しているとおり、11月の中間選挙を前に消費者のインフレへの不満が意識されざるを得ない。公聴会ではパウエル氏にインフレ対応への質問が相次ぐだろう。いきおい、発言もタカ派色が強くなりやすいと考えられる。実際、証言草稿では「高インフレが定着するのを防ぐために我々の政策手段を用いる」との認識が示されているようだ。
そもそも市場に身を置いていると誤解しがちだが、中央銀行関係者にとってイレギュラーな金融政策を長期間続けることは不名誉なことである。次の景気悪化局面での政策対応余地も限られてしまう。パウエルFRBが金融政策の正常化を急ぐのは、なにも政治の圧力が強まっているからというわけでもないだろう。
米国ではほかにも12月の消費者物価指数(CPI、12日)、卸売物価指数(PPI、13日)、小売売上高や鉱工業生産(14日)といった重要経済指標の発表が相次ぐ。また、国内でも安川電<6506>や小売大手など11月締めの決算発表が多くある。これらの内容を睨み、相場全体として上下に振らされる場面が続きそうだ。(小林大純)
《AK》