この記事はプレミアム会員限定です

金利先高観が強まる今、狙うのはやっぱり割安、それとも…

特集
2022年1月12日 10時00分

大川智宏の「日本株・数字で徹底診断!」 第80回

大川智宏大川智宏(Tomohiro Okawa)
智剣・Oskarグループ CEO兼主席ストラテジスト
2005年に野村総合研究所へ入社後、JPモルガン・アセットマネジメントにてトレーダー、クレディ・スイス証券にてクオンツ・アナリスト、UBS証券にて日本株ストラテジストを経て、16年に独立系リサーチ会社の智剣・Oskarグループを設立し現在に至る。専門は計量分析に基づいた株式市場の予測、投資戦略の立案、ファンドの設計など。日経CNBCのコメンテーターなどを務めている。

前回記事「今年(2021年)最安値を更新したマザーズ、辛抱はあと少し?」を読む

昨年12月から年始にかけて、強烈な割安株主導の相場が発生しています。特に過去1週間程度は低PER(株価収益率)、低PBR(株価純資産倍率)の銘柄が幅広く買われており、日本株だけでなく世界中で同様の状況となっているようです。

下のグラフの数字は、日本はTOPIX(東証株価指数)、米国はS&P500種株価指数を母集団としたファクター値5分位(上位下位20%点を閾値とした銘柄群のロングショート)による過去1週間の効果の測定です。

米国のPERやPBRに見られる6%程度の投資効果は、近年稀に見るほどの強度で割安株が買われている――という印象です。

■日米の過去1週間の割安性、成長性、ROEの投資効果(5分位)

【タイトル】

出所:データストリーム。注:ROEは自己資本利益率

この背景にあるのは急速な米国の金利の上昇および先高観です。

年末のFOMC(米連邦公開市場委員会)で今年3回の利上げがコンセンサスとなったことや、年末商戦の好調さが見込まれることなどで今後も底堅い経済成長の継続が織り込まれているものと思われます。

金利が上昇すると、理論株価を算出するのに用いられる割引率などの関係から成長株が売られやすく、割安株に資金が向きやすい環境が生まれます。事実として、過去のPERの投資効果と米国10年債の利回りとを時系列で比較すると、多くの局面で連動するかのような動きが見られます。

■PERの投資効果と米10年債利回り

【タイトル】

出所:データストリーム

もちろん、すべての場合で連動性を持つわけではなく、2017年などは金利との逆行性も見られます。これは、割安株の投資効果が市場のリスクのオン・オフによっても大きく左右されることや、実際の金利の推移に加えて先高観や先安観が織り込まれやすいことに起因します。

直近の一方的なPER効果も、その先高観が織り込まれた典型的な事例といえます。金利の見通しは非常に難しいですが、散発的ではあるにせよ、今後もこういった強い割安株相場が発生しやすいことは意識しておいた方がいいでしょう。

割安なら何でもOKというわけではない

では、足元からの米国の引き締め入りという状況を踏まえれば、単純に低PER、低PBRといった割安株に投資しておけばいいのでしょうか。これに対する回答は、明確に「NO」です。

筆者は、低PER、低PBRなどの割安株をあえて「バリュー」とは呼びません。予想されている利益や純資産に比べて割安であることは事実ですが、割安であるには理由があり、投資リスクが高いために株価が売られていることが非常に多いからです。

ただ単にPERやPBRが低いことに真のバリュー、つまり投資に有用性の高い価値を見出すのはナンセンスであり、非常に危険なことです。

無論、織り込まれているリスク要因が解消されれば一気に株価が跳ねることはあるでしょう。しかし、それはPERが低いという理由で買われたわけではなく、利益の見通しが改善したことがポジティブ・ファクターとなって買われたことに他なりません。

上のグラフのPERの時系列の効果を見ても分かるように、割安株の効果は瞬間的には強く出ることがありますが、中長期的に見ると大きなマイナスの結果をもたらします。これらから割安のみでリターンを得ることは難しく、巷に出回っている「バフェット流」などという手法に騙されてはいけません。

割安で狙うなら気をつけることは

とはいえ、現在のマクロ環境で割安株を無視するのも惜しいような気もしてきます。短期的であっても金利の上昇が継続する可能性があるならば、むしろ積極的に狙っていきたいと考えるのが自然でしょう。

では、割安株にどのように向き合べきかについて、PERを例に見ていきます。

※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。

次ページ 割安銘柄で注目する要素とは

<    >

こちらは株探プレミアム限定記事です。プレミアムプランをご契約して読むことができます。
株探プレミアムに申し込む (初回無料体験付き) プレミアム会員の方はこちらからログイン
プレミアム会員になると...
株価情報をリアルタイムで提供
企業業績の表示期数を拡大
限定コラムが読み放題

人気ニュースアクセスランキング 直近8時間

プレミアム会員限定コラム

お勧めコラム・特集

株探からのお知らせ

過去のお知らせを見る
株探プレミアムとは

日本株

米国株

PC版を表示
【当サイトで提供する情報について】
当サイト「株探(かぶたん)」で提供する情報は投資勧誘または投資に関する助言をすることを目的としておりません。
投資の決定は、ご自身の判断でなされますようお願いいたします。
当サイトにおけるデータは、東京証券取引所、大阪取引所、名古屋証券取引所、JPX総研、ジャパンネクスト証券、China Investment Information Services、CME Group Inc. 等からの情報の提供を受けております。
日経平均株価の著作権は日本経済新聞社に帰属します。
株探に掲載される株価チャートは、その銘柄の過去の株価推移を確認する用途で掲載しているものであり、その銘柄の将来の価値の動向を示唆あるいは保証するものではなく、また、売買を推奨するものではありません。
決算を扱う記事における「サプライズ決算」とは、決算情報として注目に値するかという観点から、発表された決算のサプライズ度(当該会社の本決算か各四半期であるか、業績予想の修正か配当予想の修正であるか、及びそこで発表された決算結果ならびに当該会社が過去に公表した業績予想・配当予想との比較及び過去の決算との比較を数値化し判定)が高い銘柄であり、また「サプライズ順」はサプライズ度に基づいた順番で決算情報を掲載しているものであり、記事に掲載されている各銘柄の将来の価値の動向を示唆あるいは保証するものではなく、また、売買を推奨するものではありません。
(C) MINKABU THE INFONOID, Inc.