明日の株式相場に向けて=中長期投資ならいったん資金回収を

市況
2022年1月18日 17時00分

きょう(18日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比76円安の2万8257円と反落。前日の米国株市場が休場で手掛かり材料難のなか、きょう結果が公表される日銀の金融政策決定会合に久しぶりにマーケットの耳目が集まった。前場取引終了後に「現状維持」が発表されたが、今回についてはいつもの現状維持とは重みが違う。世界的な金融引き締めモードのなかで日銀が政策修正の動きを見せなかったことは、マーケットに安心感を与えるポジティブ材料となった。後場寄りにドカンと大口の買い注文が入り、日経平均は一段高となったのだが、ところが一筋縄ではいかなかった。そこからの釣瓶(つるべ)落とし的な下げが今の全体相場の弱さを代弁している。

日本時間18日の取引で米長期金利が1.8%台まで上昇し、これが国内債券市場を巻き込み不安心理に火をつけた。日経平均は350円超の上昇で2万8700円近くまで上昇したのも束の間、あれよという間に値を消し、同じく軟調展開となっている米株価指数先物を横目に、午後1時20分過ぎにはマイナス圏に突入した。FRBの金融緩和政策が終了しても業績相場に移行するから大丈夫というのが、年初に市場関係者の多くが主張していたシナリオであったが、それを信じてここで買い向かっていいのかは正直微妙なところだ。

渋沢栄一は信用というものは信念から生まれると説いた。人からの信用は暖簾や外観を取り繕って収得できる代物ではない。なるほど、傍から見れば信念を持ち合わせていない人に信を置くことはできないというのは至極当然。しかし、相場という生き物と対峙した場合はそうではない。相場は信念を餌にする。上がらぬなら上がるまで待とう、の精神は、長期投資の観点で時に美徳となることもあるが、下落途上の時間軸では明らかに間違った投資哲学に身を委ねていることになる。言い換えれば、当該銘柄に資金を寝かさずにキャッシュとして手元に置いておくことは、その間に利を積んでいるとの同じ理屈で賢明となる。

潮流が変化したと感じたら、アンテナを常に高くして、自分の信念ではなく相場の流れに柔軟に戦略を合わせていくということが大切となる。これは優柔不断とは異なる。「信念は嘘よりも危険な真理の敵である」とは独哲学の権威ニーチェの至言であり、今のような白とも黒ともつかない相場環境では、基本的に中長期投資は危険と判断しておくのが正しい。

例えば脱炭素関連では国策という錦の御旗が投資資金を呼び込んだが、ツートップ銘柄としてテーマ物色の流れを牽引してきたレノバ<9519>とウエストホールディングス<1407>は、見ての通り売りが売りを呼ぶ苛烈な下げに見舞われた。両銘柄とも足もと切り返しに転じているが、現状はあや戻しに過ぎない。この2銘柄は氷山の一角としても、今の相場には潜在的な売りニーズが強く、次の売りターゲットを狙っているようなフシがある。

当欄でもバリュー株シフトの新たなオアシスとして取り上げた鉄鋼株だが、直近の日本製鉄<5401>の崩れ足は唖然とするよりない。一部外資系証券が、今後の中国住宅市場の低迷観測を理由に投資判断引き下げなどを行ったもようだが、このタイミングでの売り指令はヘッジファンドとの空売り連携も考慮されるところで、極めて戦略的だ。市場関係者によれば「今の相場が下値に対して脆弱であることを見切ったうえでの売り仕掛け」という。

強い株につけというのは軟調相場におけるセオリーだが、今の地合いは強い株を“狩る”ことで買い方を委縮させるようなムードが意図的に作り上げられているようなフシがある。企業の決算発表本格化を目前に控え、仮に投資家の不安心理をついた期間限定の“仕掛け”であったとしても、戻りの天井が徐々に切り下がっている現状は警戒が必要だ。FRBなど世界の中央銀行が金融緩和政策の終局に向けた動きを示すなか、業績相場へのバトンがうまく渡るのかどうか、しばらくは見届けておく必要がある。主力大型株では最高値圏で強調展開を続けるトヨタ自動車<7203>が国内市場における最後の砦といってもよい。同社株がここから大きく値を崩した場合は、相場全体が悲観に染まることになり、マザーズ市場などの追い証回避の売りも誘発する可能性が高くなる。逆説的な言い方をすれば、トヨタの株価が大崩れして初めて、最初の買い場が近づいているというメルクマールとなる。

あすのスケジュールでは、1年物国庫短期証券の入札、21年12月の訪日外客数など。海外では12月の英消費者物価指数(CPI)、12月の米住宅着工件数など。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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