S&P500 月例レポート ― 資金の流れに逆らうな、楽観論が優勢な12月 (1) ―

市況
2022年1月21日 11時40分

S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。

●THE S&P 500 MARKET:2021年12月

個人的見解:新型コロナウイルスの感染が急拡大する中、株式市場は最高値を更新

S&P 500指数は過去3年間で90.13%上昇し、配当込みのトータルリターンは100.37%となりました。当然のことながら、一部の運用担当者はこれを上回る運用成果を実現したと考えられます。SPIVA(S&P指数 vs. アクティブ運用)スコアカードの報告から指数をアウトパフォームしたファンドがどの程度あったかを把握できますが、それほど多くはないと思われます。また、この3年間に関して言えば、アクティブ運用担当者よりもパッシブ運用担当者の方がはるかによく眠れたのではないかと推測しています。

2021年に関しては幅広い銘柄が値上がりし(434銘柄で年間騰落率がプラスとなり、96銘柄の上昇率は50%を超え、25%以上下落したのは7銘柄でした)、騰落率は26.89%のプラスとなりました(配当込みのトータルリターンは28.71%)。また、全11セクターが2桁の上昇率を達成しました(2020年は騰落率がプラスとなったのは7セクターで、このうちの5セクターが2桁の上昇となりました)。

引き続き新型コロナウイルスがニュースの中心を占めましたが、ワクチン接種(そして現在はブースター接種)のおかげで、米国では人々が外で過ごす時間が増えました。しかしながら、S&P 500指数に過去最高となる利益、売上高、営業利益率をもたらしたのは、特にインターネット通販による自宅での消費活動です。家計部門では(株価と住宅価格が高騰する一方で消費活動が抑制されたために)資産が積み上がり、行動制限によるフラストレーションが個人の購買意欲に拍車をかけました。

さらに、景気に配慮して金利をゼロ近傍に抑えた米連邦準備制度理事会(FRB)の政策も経済を下支えしました。量的緩和を終了し(2022年3月に完了させる見通し)、金利は引き上げられる見通しですが(最初の利上げは2022年6月となる可能性)、(0.25%の)利上げが3回実施されたとしても、金利は依然として低水準に抑えられることになります(つまり、景気配慮型の政策運営が継続される)。

しかしながら、インフレはおそらく別問題となるでしょう。供給不足は解消が見込まれますが、労働力不足(あるいはdisplacements=解雇。この単語が新たに使われるようになりました)の解決は一段と難しくなる見通しです。また、在宅勤務という働き方が、労働市場に変化をもたらしました。新型コロナの感染拡大前から増加傾向にありましたが、今では完全に勤務形態の主流となっており、オフィスは従業員全員が職場復帰することなく、ますます閑散としてきているようです。

依然として楽観論が優勢となっている中、株式市場への資金流入は継続しており(このため不安を感じている運用担当者も手仕舞うことができません)、株式市場は終値での最高値を更新しました(S&P 500指数の2021年の最高値更新は70回となり、1995年の77回に次ぐ過去2番目の記録となっています)。有名な相場格言である「FRBとは闘うな」は、今では「資金の流れに逆らうな」に変わりました(かつて「FT(FRBと財務省(Treasury)を指す)とは闘うな」という格言が流行ったこともありました)。

現時点では、2022年は(政府も個人も)支出活動が活発化するとみられます。「社会」は引き続き新型コロナウイルスと何とか上手くつき合っていこうとするでしょう。企業業績も好調で最高益の更新が期待されます(自社株買いと配当金支払いも過去最高を記録すると見込まれます)。このような好業績が、高水準の株価収益率(PER)を下支え(また正当化)するには必要となります。

政治面では、第1四半期は大型歳出法案であるビルド・バック・ベター法案の成立が期待されています。また、富裕層やキャピタルゲイン、配当に対する税率引き上げ(実施時期は異なる)も、現時点では(予想されている税率を踏まえると)市場関係者にとって―課税対象がこれ以上拡大されない限りにおいては―容認可能なものとして受けとられているようです。

過去の実績を見ると、12月は73.1%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は2.95%、下落した月の平均下落率は3.08%、全体の平均騰落率は1.35%の上昇となっています。2021年12月のS&P500指数は4.36%の上昇でした。

1月は62.3%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は4.20%、下落した月の平均下落率は3.77%、全体の平均騰落率は1.20%の上昇となっています。

「1月の相場がその年の相場を占う」という相場格言は、これまでS&P 500指数に関しては70.97%の実現確率を誇っていました。しかし、過去2年間に関しては当てはまらず、過去10年間でみると実現確率は50%に低下しました。

今後の米連邦公開市場委員会FOMCのスケジュールは、2022年1月25日-26日、3月15日-16日、5月3日-4日、6月14日-15日、7月26日-27日、9月20日-21日、11月1日-2日、12月13日-14日となっています。

S&P500指数は12月に4.36%上昇して4766.18で月を終え、12月としては2010年の6.53%以降で最も高くなりました(配当込みのトータルリターンはプラス4.48%)。11月は4567.00で終え、0.83%の下落(同マイナス0.69%)となり、10月は4605.38で終え、6.91%の上昇でした(同プラス7.01%)。第4四半期の3ヵ月では10.65%上昇(同プラス11.03%)、2021年年間では26.89%上昇(同プラス28.71%)、コロナ危機前の2020年2月19日の終値での高値からは40.76%上昇(同プラス45.02%)して月を終えました。

ダウ・ジョーンズ工業株価平均(ダウ平均)は5.38%上昇の3万6338.30ドルで月を終えました(配当込みのトータルリターンはプラス5.53%)。11月は3万4483.72ドルで終え、3.73%の下落(同マイナス3.50%)となり、10月は3万5819.56ドルで終え、5.84%の上昇でした(同プラス5.93%)。第4四半期の3ヵ月では7.37%上昇(同プラス7.87%)、2021年年間では18.73%上昇(同プラス20.95%)しました。

※「資金の流れに逆らうな、楽観論が優勢な12月 (2)」へ続く

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