バイデン米政権のレームダック化で原油高は野放しに、青天井の相場は世界経済のリスク<コモディティ特集>
リアル・クリア・ポリティクスの集計によると、バイデン米大統領の支持率は就任以来の最低水準を更新している。不支持率の上昇も止まらない。中間選挙で共和党が多数派となれば、バイデン政権のレームダック化は避けられず、次期大統領選への注目が高まる。
立候補が噂される面々のなかでもひときわ目立つのがトランプ前大統領である。大規模な集会を開催するなど既に注目を集めている。ヒラリー・クリントン元国務長官も再出馬を画策しているとの噂もあって、現職のバイデン米大統領の存在感が日々薄くなっていると言わざるを得ない。中間選挙の結果をもって出馬を決める候補も多いとみられている。
民主党が共和党に惨敗するとしても、バイデン米政権にはレームダック化した2年間が残されている。同政権のクリーンエネルギー政策が消え去るわけではない。この政策を脅かすような法案に対しては、バイデン米大統領は拒否権を発動するだろう。主要国は脱炭素社会の実現を目指しており、電気自動車が普及しつつあることから、石油産業への投資はこの2年間でさらに萎縮するに違いない。石油の供給不足は一段と強まっていくだろう。需要が先細りの供給能力を上回り続けた先には、供給不足ではなく、供給ひっ迫が待っている。エネルギーの奪い合いである。
●抑えが効かない石油市場
各国が石油備蓄を協調放出することで合意した後の値動きから明らかだが、エネルギー高に対して米政権が取りうる選択肢は対イラン政策の変更を除けばほとんどなく、米経済を延々と圧迫していくのではないか。もちろん、燃料高は米国だけの問題ではない。コロナ後の世界経済はインフレに悩まされる可能性が高い。経済的苦境のなかで、バイデン政権が法案を成立させることができなくなるなら、世界経済にとっては悪夢である。物価上昇に喘ぎ、景気悪化にただ耐えるしかない2年間となるかもしれない。現状ですでに抑えが効かなくなっている石油市場がさらに高騰するリスクに目を向けるべきである。日本の場合、減税でもしない限りガソリン小売価格が1リットル=200円以下にとどまるとは思えない。
今年秋の米中間選挙で民主党が敗北するという前提での見通しだが、投票までに原油価格がさらに上昇している可能性が高い。バイデン米政権に対する風当たりは一段と強まり、現状の水準から支持率はさらに低下するのではないか。レームダック化とエネルギー高によって景気が悪化し、石油需要が弱まるなら供給不足をある程度緩和する可能性はあるが、生活必需品である石油の需要が減少するにしても限度がある。需要ではなく供給見通しが相場の主役として長期的な流れを形成するだろう。ウェスト・テキサス・インターミディエイト(WTI)やブレント原油など指標原油がどこまで上昇するのか想像もしたくない。
(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)
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